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旅行編──第十章『浮いて飛んで羽ばたいて』──
その84。満腹感は睡魔を誘う
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※ ※ ※ ※ ※
個室で会席料理を堪能して、脩一と美鈴は一度部屋に戻る。
「ふぁ~、お腹いっぱいだよぉ」
「くくくっ、すぐに転がる程か?……アザラシになっちまうぞ?」
「ふふふ、アザラシになったら可愛い?」
「あぁ、美鈴ならどんな装いでも可愛いな」
「やだ、冗談だったのに。でも、脩一さんがアザラシになっても可愛いかも」
「ふはっ。なら、二人してアザラシになるか」
既に和室にセッティングされた布団へ横たわり、美鈴は笑みを浮かべる脩一を見上げた。
いつもの柔らかな微笑みは、この旅行で更に甘い雰囲気を漂わせている。
隣で同じ様に横たわった脩一の腕へ抱き留められ、多幸感にみたされた美鈴は彼の胸に額を擦り付けた。
「かぁわぃ、食べちゃいたい」
「もうお腹いっぱいだからダメだもん」
「いやいや、ベツバラでしょ。……ねぇ、美鈴。食べて良い?………………あれ?美鈴?…………寝た?……マジで?」
ぽやぽやと幸せな気持ちに、美鈴は自然と目蓋が落ちてきてしまう。
脩一が話している事へ返答をしなくてはと思いながらも、睡魔に誘われて意識が沈んでいってしまった。
※ ※ ※ ※ ※
「っ!」
「………………起きた?」
「ご、ごめんなさいっ。えっ、物凄く寝ちゃった?」
「いや、一時間も経ってないよ」
腹部が満たされての睡眠だったからか、美鈴は自分が寝ていた事に驚いたようで、慌てて脩一に謝罪する。
さすがに飛行機や舟に乗ったりして、旅の疲れが出たようだ。
脩一は美鈴が起きるまでずっと寝顔を観察していたのだが、彼女が目覚めただけで嬉しいという表情を浮かべる。
──このまま朝まで寝てたらどうしようかと思ってたし。
「ぅん?……どうしたの、脩一さん」
「ん~?………………摘まみ食い」
抱き締めている美鈴へ、脩一は幾度もキスを落とす。
頬に、鼻先に。額、頭部から耳へ。続けていくと、次第に美鈴の身体が震えてきた。
漏れ出す呼気から、快感からくる震えなのだと察する事が出来る。
「ん……ふっ。……脩一、さ、待って……ぁん……」
「どうしたの、美鈴」
耳の付け根にキスを落とせば、ふるりと大きく身体が跳ねた。
この一月程、幾度も繰り返してきた行為である。既にこの先に快楽が続くと、美鈴にも分かっているのだ。
「っあ……ん、お、風呂……まだ、だか……っん……」
「ん~、風呂?俺は後でも良いけど?」
「んふ……、私が、いゃ……って……」
「そうだよねぇ。美鈴、綺麗好きだもんね」
「そ、なんじゃ……っあん、ちょ……ふっ……」
首筋や鎖骨の辺りに唇が触れるだけで、美鈴の身体はびくびくと震える。
けれども休止、ここまでだ。拒絶の意思を見せている美鈴を無視して、この先へは進められない。
「ん、じゃあお風呂ね」
「はぁ……はぁ……」
「どうしたの?美鈴」
急に行為をやめた脩一が不満なのか、美鈴の瞳が物言いたげに見上げていた。
脩一は分かっているのだが、美鈴から『どうしたい』のか言わせたい。続ける事もやめる事も、二人での行為なのだ。
「……脩一さんの意地悪」
「え、何でさ。俺、ちゃんと美鈴の意見を聞いているよ?……ねぇ、どうしたい?」
小首を傾げていた脩一に、拗ねたような表情を向けていた美鈴だった。
「も……、お風呂入りに行く」
「部屋のじゃなくて?」
「うん、大浴場に行きたいもん」
「あ~……分かった、そうだね。せっかくだから色々なお風呂に入りたいよな、うん。それなら行こうか」
「うんっ」
けれども入浴したい気持ちが強かったのか──しかも、距離がある大浴場の方へ行くと言い出したのである。
互いに気分が昂った後ではあるものの、既に美鈴の意識は大浴場へ向けられていた。この辺りは切り替えが早い美鈴らしい。
脩一は再びの『おあずけ』に溜め息を呑み込むと、ゆっくりと美鈴の上体を抱き起こすのだった。
「浴衣?」
「ん、良いんじゃね?こういうところって、パジャマよりも雰囲気出るでしょ」
「そう……よね」
押し入れから浴衣を見つけた美鈴が、少しの戸惑いを見せる。
脩一はそれを見た途端、脳内で美鈴の浴衣姿を妄想した。
「うん。何より、美鈴の浴衣が見たい」
「……私も脩一さんの浴衣姿が見たい、かも」
「くくくっ、かもなんだ」
「だ、だって……何だかえっちな感じがして……」
「ふはっ、何それ。エロい美鈴も可愛い、好き」
うっすらと頬を染めた美鈴を見て、脩一はすぐに抱き締めて頭頂部にキスを落とす。
浴衣を胸に抱き締めていた美鈴は、脩一の腕の中から見上げると、彼の顎にキスを返してきた。
──っ!……待て俺今はまだタイミング違うから。
美鈴からキスをしてくれる事は稀なので、余計に脩一の脩一が臨戦態勢になったのである。
先程までの空気もあり、脩一は己を鎮める為に更に神経を費やす事となった。──けれどもそれすら愛おしい美鈴の為ならば苦にならないのだ。
個室で会席料理を堪能して、脩一と美鈴は一度部屋に戻る。
「ふぁ~、お腹いっぱいだよぉ」
「くくくっ、すぐに転がる程か?……アザラシになっちまうぞ?」
「ふふふ、アザラシになったら可愛い?」
「あぁ、美鈴ならどんな装いでも可愛いな」
「やだ、冗談だったのに。でも、脩一さんがアザラシになっても可愛いかも」
「ふはっ。なら、二人してアザラシになるか」
既に和室にセッティングされた布団へ横たわり、美鈴は笑みを浮かべる脩一を見上げた。
いつもの柔らかな微笑みは、この旅行で更に甘い雰囲気を漂わせている。
隣で同じ様に横たわった脩一の腕へ抱き留められ、多幸感にみたされた美鈴は彼の胸に額を擦り付けた。
「かぁわぃ、食べちゃいたい」
「もうお腹いっぱいだからダメだもん」
「いやいや、ベツバラでしょ。……ねぇ、美鈴。食べて良い?………………あれ?美鈴?…………寝た?……マジで?」
ぽやぽやと幸せな気持ちに、美鈴は自然と目蓋が落ちてきてしまう。
脩一が話している事へ返答をしなくてはと思いながらも、睡魔に誘われて意識が沈んでいってしまった。
※ ※ ※ ※ ※
「っ!」
「………………起きた?」
「ご、ごめんなさいっ。えっ、物凄く寝ちゃった?」
「いや、一時間も経ってないよ」
腹部が満たされての睡眠だったからか、美鈴は自分が寝ていた事に驚いたようで、慌てて脩一に謝罪する。
さすがに飛行機や舟に乗ったりして、旅の疲れが出たようだ。
脩一は美鈴が起きるまでずっと寝顔を観察していたのだが、彼女が目覚めただけで嬉しいという表情を浮かべる。
──このまま朝まで寝てたらどうしようかと思ってたし。
「ぅん?……どうしたの、脩一さん」
「ん~?………………摘まみ食い」
抱き締めている美鈴へ、脩一は幾度もキスを落とす。
頬に、鼻先に。額、頭部から耳へ。続けていくと、次第に美鈴の身体が震えてきた。
漏れ出す呼気から、快感からくる震えなのだと察する事が出来る。
「ん……ふっ。……脩一、さ、待って……ぁん……」
「どうしたの、美鈴」
耳の付け根にキスを落とせば、ふるりと大きく身体が跳ねた。
この一月程、幾度も繰り返してきた行為である。既にこの先に快楽が続くと、美鈴にも分かっているのだ。
「っあ……ん、お、風呂……まだ、だか……っん……」
「ん~、風呂?俺は後でも良いけど?」
「んふ……、私が、いゃ……って……」
「そうだよねぇ。美鈴、綺麗好きだもんね」
「そ、なんじゃ……っあん、ちょ……ふっ……」
首筋や鎖骨の辺りに唇が触れるだけで、美鈴の身体はびくびくと震える。
けれども休止、ここまでだ。拒絶の意思を見せている美鈴を無視して、この先へは進められない。
「ん、じゃあお風呂ね」
「はぁ……はぁ……」
「どうしたの?美鈴」
急に行為をやめた脩一が不満なのか、美鈴の瞳が物言いたげに見上げていた。
脩一は分かっているのだが、美鈴から『どうしたい』のか言わせたい。続ける事もやめる事も、二人での行為なのだ。
「……脩一さんの意地悪」
「え、何でさ。俺、ちゃんと美鈴の意見を聞いているよ?……ねぇ、どうしたい?」
小首を傾げていた脩一に、拗ねたような表情を向けていた美鈴だった。
「も……、お風呂入りに行く」
「部屋のじゃなくて?」
「うん、大浴場に行きたいもん」
「あ~……分かった、そうだね。せっかくだから色々なお風呂に入りたいよな、うん。それなら行こうか」
「うんっ」
けれども入浴したい気持ちが強かったのか──しかも、距離がある大浴場の方へ行くと言い出したのである。
互いに気分が昂った後ではあるものの、既に美鈴の意識は大浴場へ向けられていた。この辺りは切り替えが早い美鈴らしい。
脩一は再びの『おあずけ』に溜め息を呑み込むと、ゆっくりと美鈴の上体を抱き起こすのだった。
「浴衣?」
「ん、良いんじゃね?こういうところって、パジャマよりも雰囲気出るでしょ」
「そう……よね」
押し入れから浴衣を見つけた美鈴が、少しの戸惑いを見せる。
脩一はそれを見た途端、脳内で美鈴の浴衣姿を妄想した。
「うん。何より、美鈴の浴衣が見たい」
「……私も脩一さんの浴衣姿が見たい、かも」
「くくくっ、かもなんだ」
「だ、だって……何だかえっちな感じがして……」
「ふはっ、何それ。エロい美鈴も可愛い、好き」
うっすらと頬を染めた美鈴を見て、脩一はすぐに抱き締めて頭頂部にキスを落とす。
浴衣を胸に抱き締めていた美鈴は、脩一の腕の中から見上げると、彼の顎にキスを返してきた。
──っ!……待て俺今はまだタイミング違うから。
美鈴からキスをしてくれる事は稀なので、余計に脩一の脩一が臨戦態勢になったのである。
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