階段で異性とぶつかって恋に落ちるなんて少女漫画だけの話と思ってました

まひる

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交際編──第八章『認められたい』──

その66。姫抱きの理想体型(※微)

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注意。微エロ入ります。

─────────────────────

 夏用の薄手の装いは、厚みのあるバスローブと比べて防御力が皆無である。
 それがつまり、何がどうのだというならば──当たる・・・のだ。下腹部に。

「あ……、あの……脩一しゅういち、さん?」
「……ん~?」

 感極まった様子の脩一には申し訳ないのだが、腹部から下がれ合っている美鈴みすずはどうしても挙動不審になってしまう。
 しかしながら声を掛けたところで、当の脩一は腰に回した手を緩めてくれそうにない。それどころか、何故かくんくんと頭頂部の匂いを嗅がれている感じがした。

「脩一さ……っ」
「んぅ……っ」

 美鈴が慌てて身体を離そうと動けば、ゴリッと一層固い感覚が下腹部に当たる。そして次の瞬間、頭上からなまめかしい脩一の声が聞こえたのだ。
 ビクッビクッと脈打つような振動が伝わると同時に、やけに下腹部が熱くなってくる。

「っ、悪いっ」
「え?」

 どのくらい時間が経ったのか──脩一が我に返ったかのようで、美鈴は勢い良く身体を離された。
 唖然としている美鈴は、自分の肩を掴んだまま下半身を退いている脩一の頭頂部を見る事になる。チラチラと見える脩一の耳が赤いが、今問い掛けても良いものか美鈴は迷った。

「あ、頭冷やしてくるからっ」
「えっ?!脩一さん、大丈夫なの?」
「ちょ、待って。ごめん、開けないでっ」

 そうこうしている間に、再起動を果たした脩一が身をひるがえして浴室へ駆け込んでしまう。
 呆然と見送ってしまった美鈴だったが、明らかに様子がおかしかった脩一を追って浴室の扉に手を掛けた。だがガチャリと金属音がしただけで、反対側から押さえているらしい脩一からの拒絶の声が返ってくる。

「え、あの……」
「ごめん、美鈴……マジ情けない何してんの俺。美鈴の顔見て勝手に盛ってヤバいと思って冷たいシャワー浴びて落ち着いたと思ったのに抱き締めて体温感じて匂い嗅いでたら暴発するってマジ猿じゃん恥ずかしっ」
「え?は?んん?」

 扉越しに、あまりにもつらつらと一呼吸で吐き出された脩一の内情だった。
 聞こえた情報から一つ一つの言葉の意味を理解していくと共に、美鈴の顔が徐々に真っ赤に染まっていく。
 経験がないだけで、それなりの知識はあるのだ。

 ──つつつつつまりはほほう、ほうしゅ、放出、して、しまったという事で……っ。 

 先程まざまざと感じた、下腹部の脈動と熱。
 美鈴は自分の体温が上昇する事を感じつつも、何故だかくたりと足の力が──腰から下の力が抜けてしまってその場に座り込んでしまう。

「……美鈴?………………みす、えっ?どうしたっ?」

 その後の反応がなかったからか、逆に脩一が扉の向こうから問い掛けてきた。けれども何も返答がない事で不安げに浴室の扉を開けてきて、しゃがみ込んでいる美鈴に慌てて駆け寄る。
 美鈴は自分自身理解出来ない身体の反応に、情けない顔のまま脩一を見上げた。不安と困惑、そしてわずかな恐怖心。

「分か……ないの。何だか、お腹が……痛い?ような……。ん、でも痛いとは、違う……ような?」
「………………美鈴。こういうの、初めて?」

 若干涙目になっている美鈴だったが、心配そうな脩一をこれ以上不安がらせたくない。そう思ってとにかく自分で分かる範囲で告げたのだが、脩一はそれを聞いて表情を強張らせる。
 様子が変わった脩一に、美鈴は己の状態にもしかしたら重篤な問題でも起きているのかと不安になった。

「うん……どうしたんだろう、私……」
「…………あの、さ。治し、たい?」
「え……?治せる、の?」
「ん……。美鈴が少し、我慢、してくれれば?」
「がまん……?」

 可能ならば脩一の提案はありがたいが、美鈴は彼の真意が分からずにおうむ返しする。

「うん。俺が美鈴にれる事に」
「え?だから、私は脩一さんが」
「いや、その。もっと深くれる事に、ね」

 答える脩一の困ったような表情だ。
 美鈴は脩一が『れる事』への拒絶感はないのだと何度も告げているのに、何処か噛み合っていない会話に困惑が強くなる。

「うん?分からない、けど……分かった。大丈夫、私は脩一さんの事が好きだから。酷い事しないって分かってるし」
「………………酷い事・・・、ね。それは美鈴の判断になるから、俺は痛い事・・・をしないって誓うよ。痛い事は嫌でしょ?」
「うん、痛い事は嫌。そうじゃないなら良いよ」

 誘導された言質のような気もするが、何にしろ現状では身体が言う事を聞かないのだ。
 美鈴は脩一に任せる事にして、素直に彼の提案を受け入れる。

「分かった。それなら、ベッドに移動するね」
「……うん」

 脩一は先程のバスローブのままだったが、返答を聞くやすぐに床に座り込んだ美鈴を軽々と胸に抱き上げた。
 美鈴は自分が小さい分類でないと分かっているので、こうした対応は大人になってから脩一が初めてである。そして記憶にあるのは、誘拐事件から救出された時以来だ。
 脩一の体格が自分より立派なのは見て分かるが、それ以上に明らかに筋肉が必要である。

 ──でも、抱き上げられる体重を維持出来たら良いな……。

 そんな事を思いながら、脩一は見た目以上に細マッチョなのかもしれないと美鈴は結論付けた。
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