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第2章 「君を愛することはできない」と真実の愛を貫いたら全てを失いました……愛ってなんだろう?

第9話

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 カラーン――
  カラーン――


 王都に祝福のカンパネラが響き渡る。

 純白のウェディングドレス姿のカミアは本当に綺麗だ。本心から嬉しそうに微笑むカミアは花が咲いたようにとても可憐だった。

 モリカに引っ掻き回されたが、これで良かったのだと今は思う。

 ただ、ヴァージンロードを歩く私達を血走った目で見るのは止めてくれ。死刑台に送られる罪人の心境だったぞ。

 誓いのキスの時には令嬢達が総出で前のめりになって、血走った目を大きく見開いてガン見してくる光景は軽くホラーだった。

 まあ、フラワーシャワーでは温かな祝福に包まれて、カミアが幸せそうだったから良しとしよう。

 だが、ぐっと親指を立てサムズアップするいい笑顔のモリカ……鼻血は拭いてくれ。恐い。

「いやぁ、またまた良いものを見せていただきました」
「まったく薄い本の創作の為だけによくやる」
「心外ですわ。これでもシナーフ様の幸せを真に願っているのですよ」

 本当にシナーフ様を愛しておりましたから、と寂しく笑うモリカにハッとさせられた。

「すまないモリカ……私の軽率な行為が君を傷つけてしまった」
「いいえ、シナーフ様がお幸せならそれで良いのです」
「モリカは……その……今は……」
「私は大丈夫ですわ。婚約者も決まりましたし」
「そうか……」
「そんな顔をしないでくださいませ。私もそれなりに幸せなんですから」

 そう言って微笑むモリカの美しさを私は今頃になって知った。

 彼女を妻とし国を治める未来があったのかもしれない。
 才色兼備な彼女なら、きっと良い国母となっただろう。

 だが、その道は私の手で断たれ、絶対に訪れない未来となった。

「それでは末永くお幸せに~」
「「「ご機嫌よ~」」」

 突然やって来て私達を引っ掻き回し、モリカ達は嵐のように去って行った。

「ぷっ、くっくっく……あははは……」

 その影が見えなくなるまで見送っていたカミアが突然笑い出した。

「どうしたんだ急に?」
「ふふふ、だってモリカ様って無茶苦茶なんですもの。とても落ち着かれた完璧な令嬢だと思っていたのに」
「ああ、そうだな……」

 笑いすぎて出た涙を拭うカミアをグイッと抱き寄せその頭にキスをする。

「本当に私は何も見えていなかったんだな……」

 今回の件で私はモリカの事をまったく見ていなかったのだと思い知らされた。それは同時にカミアの真の姿も見ていなかったのと同じ。

 だから、私は全てを失った。

 だけど……

「私は今度こそ道を誤らない。共に幸せになろう」
「はい……シナーフ様と一緒ならきっと……」

 カミアの幸せそうな笑顔に私の心が満たされる。

 全てがなくなり一輪の花が残されたことで、私は真実をそこに見つけた。

 私は本当に大切な宝を手にしたのだと……
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感想 5

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みんなの感想(5件)

歌川ピロシキ

おおおおおお
何だかんだと感動的にまとまりましたよ!
なんかちょっぴり血がほとばしってたのは気のせいですよ!たぶん!!
今度こそ末永くお幸せに!!!!

古芭白あきら
2024.02.02 古芭白あきら

歌川ピロシキ様
お読みいただきありがとうございます(∩´∀`)∩

コメディなのになんか感動的なラストでした(*´ω`*)
でも、このままで終わるわけがないのがこの二人。

早く続き書かなきゃ(;・∀・)

解除
歌川ピロシキ

く、腐ってやがる……っ!!

古芭白あきら
2024.02.01 古芭白あきら

色々と早すぎたのかもしれません(;・∀・)

解除
歌川ピロシキ

モリカ様、落ち着いて!
貴腐人たるもの、壁になりきって推しカプを見守らなければ!!
さぁ、みなさまで人の壁を!!(違う)

古芭白あきら
2024.01.31 古芭白あきら

歌川ピロシキ様
お読みいただきありがとうございます(∩´∀`)∩

そう、貴腐人は推しカプに干渉してはいけないはずなのです!
なのにモリカ様ったら( ´艸`)

解除

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