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第2章 「君を愛することはできない」と真実の愛を貫いたら全てを失いました……愛ってなんだろう?
第6話
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「ごめんなさいシナーフ様」
ある日、突然カミアが頭を下げて謝ってきた。
謝罪の言葉が耳に届き私が顔を上げて初めてカミアの表情がとてもつらそうであるのを知った。
「私のせいでシナーフ様は継承権も国も失ってしまいました……」
「カミア……」
今にも泣き出しそうにくしゃりと歪んだ表情のカミアを見たら、私の胸がぎゅっと締め付けられるように感じた。
「学園のみなさんは私の性別を知っておりましたから、てっきりシナーフ様もご存じの上で好きになってくれたのかと……」
その言葉に私は頭を金槌で叩かれたような衝撃を受けた。
そうだ、みんなカミアの性別を知っていた。私は舞い上がってカミアをまるで見ていなかっただけじゃないか。
「もう王族ではない私ではシナーフ様の為に何もしてあげられません」
ついにカミアの涙腺が決壊した。
ぼろぼろと涙を流しながら「ごめんなさい、ごめんなさい」と謝るカミアの姿に、彼女へ責任転嫁していた自分自身の愚かさをやっと理解できた。
いつも笑顔のカミアを泣かせる私こそ諸悪の根源ではないか。
「違う。謝るのは私の方だ」
「シナーフ様?」
私は何を被害者ぶっていたのだ。
「悪いのは全部この私だ」
全ては私の勘違いから始まった。
その結果で犠牲を強いられたのは誰だ?
それは私ではない……傷ついたのは婚約破棄されたモリカであり、私の愛を信じて王族の地位を捨てたカミアだ!
私が加害者でありモリカが被害者だったのだ。
そして、私はカミアまでも傷付けてしまった。
「いいえ、私が……私が悪いのです」
首を激しく振るカミアを強引に抱き寄せ、私はその頭を胸に掻き抱いた。
胸の中でヒックヒックと嗚咽を漏らすカミア。
私はカミアをこんなにも傷つけていたなんて。
「いや、私の軽率が招いた事態だ。私はモリカの名誉に傷をつけ、カミアを平民へと落としてしまった」
「シナーフ様」
「許してくれとは言わない。だが、もう一度この愚かな私にチャンスをくれないだろうか?」
「チャンス?」
私の胸から顔を起こしたカミアが不思議そうに見上げる。
その仕草がなんとも可愛いらしい。
ああ、やはり私はカミアを……
「君の涙を見て思った……私はカミアのこんな泣き顔を見たくはないと、カミアには笑顔で……花の咲くような愛らしく明るい笑顔であって欲しいと」
カミアの小さな肩をガシッと掴み、しっかりと目を合わせる。
「私はカミアが好きだ。大好きだ。誰よりも愛している」
「でも、私は男……」
「関係ない……男とか女とかじゃなく、私はカミアを愛しているんだ」
「ああ、シナーフ様……私もシナーフ様をお慕いしております」
縋りつくカミアを両腕で包み込み、その頭に一つキスを落とす。
「私はもう王子ではない」
「はい、私も王女ではありません」
「地位も名誉も財産も……国さえ失くした」
本当に何も無い……ここにはシナーフという飾るものを持たぬ裸の男がいるだけ。
「なんとも甲斐性なしで情け無い男だな」
「いいえ、シナーフ様はとても素敵です」
「君に何も贈れない、何もしてあげられない」
「何もいりません……シナーフ様さえ傍にいてくれたら」
「こんな男でも結婚してくれるか?」
「はい……私をシナーフ様のお嫁さんにしてください」
私とカミアの視線が絡み合い、それは強い引力を生み出して想いと共に互いの唇を結びつける。
「ありがとう……カミア」
「私……とても嬉しいです」
私は泣き笑うカミアを見て、彼女を二度と悲しませないと誓った。
ある日、突然カミアが頭を下げて謝ってきた。
謝罪の言葉が耳に届き私が顔を上げて初めてカミアの表情がとてもつらそうであるのを知った。
「私のせいでシナーフ様は継承権も国も失ってしまいました……」
「カミア……」
今にも泣き出しそうにくしゃりと歪んだ表情のカミアを見たら、私の胸がぎゅっと締め付けられるように感じた。
「学園のみなさんは私の性別を知っておりましたから、てっきりシナーフ様もご存じの上で好きになってくれたのかと……」
その言葉に私は頭を金槌で叩かれたような衝撃を受けた。
そうだ、みんなカミアの性別を知っていた。私は舞い上がってカミアをまるで見ていなかっただけじゃないか。
「もう王族ではない私ではシナーフ様の為に何もしてあげられません」
ついにカミアの涙腺が決壊した。
ぼろぼろと涙を流しながら「ごめんなさい、ごめんなさい」と謝るカミアの姿に、彼女へ責任転嫁していた自分自身の愚かさをやっと理解できた。
いつも笑顔のカミアを泣かせる私こそ諸悪の根源ではないか。
「違う。謝るのは私の方だ」
「シナーフ様?」
私は何を被害者ぶっていたのだ。
「悪いのは全部この私だ」
全ては私の勘違いから始まった。
その結果で犠牲を強いられたのは誰だ?
それは私ではない……傷ついたのは婚約破棄されたモリカであり、私の愛を信じて王族の地位を捨てたカミアだ!
私が加害者でありモリカが被害者だったのだ。
そして、私はカミアまでも傷付けてしまった。
「いいえ、私が……私が悪いのです」
首を激しく振るカミアを強引に抱き寄せ、私はその頭を胸に掻き抱いた。
胸の中でヒックヒックと嗚咽を漏らすカミア。
私はカミアをこんなにも傷つけていたなんて。
「いや、私の軽率が招いた事態だ。私はモリカの名誉に傷をつけ、カミアを平民へと落としてしまった」
「シナーフ様」
「許してくれとは言わない。だが、もう一度この愚かな私にチャンスをくれないだろうか?」
「チャンス?」
私の胸から顔を起こしたカミアが不思議そうに見上げる。
その仕草がなんとも可愛いらしい。
ああ、やはり私はカミアを……
「君の涙を見て思った……私はカミアのこんな泣き顔を見たくはないと、カミアには笑顔で……花の咲くような愛らしく明るい笑顔であって欲しいと」
カミアの小さな肩をガシッと掴み、しっかりと目を合わせる。
「私はカミアが好きだ。大好きだ。誰よりも愛している」
「でも、私は男……」
「関係ない……男とか女とかじゃなく、私はカミアを愛しているんだ」
「ああ、シナーフ様……私もシナーフ様をお慕いしております」
縋りつくカミアを両腕で包み込み、その頭に一つキスを落とす。
「私はもう王子ではない」
「はい、私も王女ではありません」
「地位も名誉も財産も……国さえ失くした」
本当に何も無い……ここにはシナーフという飾るものを持たぬ裸の男がいるだけ。
「なんとも甲斐性なしで情け無い男だな」
「いいえ、シナーフ様はとても素敵です」
「君に何も贈れない、何もしてあげられない」
「何もいりません……シナーフ様さえ傍にいてくれたら」
「こんな男でも結婚してくれるか?」
「はい……私をシナーフ様のお嫁さんにしてください」
私とカミアの視線が絡み合い、それは強い引力を生み出して想いと共に互いの唇を結びつける。
「ありがとう……カミア」
「私……とても嬉しいです」
私は泣き笑うカミアを見て、彼女を二度と悲しませないと誓った。
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