剣の聖女はモブに乗っ取られました~婚約破棄されましたが・・・悪役令嬢ルートなんてありましたっけ?~

古芭白あきら

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第2話 イベントは始まらない

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 これは、いわゆる婚約破棄イベントのお約束的な会話なのです。

 そう……ここは乙女ゲームの世界。
 少し設定からずれてしまっていますが。


「クリスはなんて健気けなげなんだ」
「いつも他者への優しさにあふれた素敵な女性だ」
「それに引き換えお前はどこまでも性根が腐った女だな」


 グラディウス殿下の取り巻き共が何やら騒いでおりますが、あなた達に性根云々を言われたくありません。


「そういうのは仕事ちゃんとしてから言ってください」


 こいつらがパーティーの準備をサボっているから、困り果てた教師陣や生徒達が私に泣きついて、仕方がなく私が全てやってあげてるんですから。


「まったく生徒会の方々が卒業パーティーをほっぽり出すなんて……」
「そんな些事さじなどどうでもいい!」


 私の指摘に殿下の感情を露わにした怒号が被せられました。

 国中の貴族子弟が集う伝統と格式のあるバゼラード学園の卒業パーティーをそんなものって……

 ほら、教師陣からも生徒たちからもヘイトを集めてしまっているではないですか。


「そんなくだらん催しより重大な事がある!」
「その発言はいささか問題がありませんか?」


 自分たちの卒業パーティーをくだらないと言われて先輩がたが殺気だってしまわれているではないですか。

 一生に一度の卒業パーティーをけなされては怒りもします。


「問題なのは貴様だ!」
「私ですか?」


 何でしょう?
 私なにかしちゃいました?


「生徒会メンバーでもないのにいつも好き勝手なことばかりしよって」
「それは殿下たちがまったく仕事をしないからではありませんか」


 私はその尻拭いをしているだけです。
 やりたくてやってるんじゃないです。


「黙れ! 私の婚約者である地位を傘に着ての狼藉三昧、もはや我慢ならん!」
「他人の迷惑を省みない横柄な女め」
「貴様は醜く歪んでいるから剣の聖女になったクリスに嫉妬したんだろう」

「それって盛大なブーメランでしょう」
「なにっ!?」

「権力使って生徒会役員になったのに他人の迷惑を省みず横柄な態度で引っ掻き回し、仕事の肩代わりをしている優秀な私に嫉妬して、いつもいつも嫌がらせの毎日……学園どころか国中に知れ渡っている周知の事実ですよ?」
「プッ!」「くすくす」

 私の的確な指摘に周囲の生徒達から失笑が漏れ、教職員がうんうんと頷いています。

 ですよねー。
 みなさんそう思いますよねー。


「ぐぬぬぬぬ!」

 殿下の側近達もさすがに周囲の目が自分たちに好意的ではないと気がついて歯軋りしております。


 まあ、このアホ殿下と側近共ではゲームの様に私を断罪するなんて、どだい無理な話なんですよ……
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