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第6話 ゲームの行方は・・・
しおりを挟む――夜も明けて
けっきょく添い寝させられてしまいました……
隣で幸せそうに眠っていた姫様を叩き起こすと恨みがましい目で睨まれました。
私はそれに構わずフリージア様の身拵えを済ましたのですが――
「セラは今日一日お休みよ」
「はあ?」
昨日は残業で今日は休暇ですか?
この我が儘な姫様は何をほざいているんでしょうか。
「明日まで城には戻らないでね。それから絶対に誰にも見つからずに街へ行くのよ」
「いったい何だと言うのです?」
「いいから!」
フリージア様に背を押された私は――
「いい事、絶対にあいつ――アキレス・シビリカには見つかっちゃダメだからね!」
――そう言い残され部屋から追い出されてしまいました。
「ホント何なんでしょう?」
鼻先で閉められた扉の前で一つため息が漏れる。
こうなっては仕方がありませんね。
私は我が敬愛する姫様の言い付け通り、なるべく人目のないルートで城を出たのですが……
「セラ・テラン嬢!」
「……シビリカ卿」
いきなり見つかってしまいました。
「奇遇ですね」
「えっ、ええ、そうですね」
あなた待ち伏せされていませんでしたか?
「街へお出掛けですか?」
「はい、王女殿下が本日は侍女業は休業だと申されて」
私が肩をすくめてみせるとシビリカ卿がくすりと笑った。
「ふっ、予想通りだ」
「はい?」
「いえ、何でもありません」
「は、はぁ?」
フリージア様もシビリカ卿も何なのでしょう?
「俺もちょうど街へ行くところだったのです……ご一緒しても?」
「ええ、構いませんよ」
お断りする理由もありません。
私たちはそのまま並んで歩き始めました。
「テラン嬢はどちらへ行くご予定でしょう?」
「急な休暇ですので特に目的は……」
「でしたら新しくオープンしたカフェへ行きませんか?」
「シビリカ卿と一緒にですか?」
「出来れば」
う~ん、どうしましょうか?
フリージア様はシビリカ卿に近づいて欲しくなさそうでしたが。
「友人に教えてもらったのですが、小洒落た店らしく男一人で入るのは気後れしてしまって」
「勇者に立ち向かった英雄様でも敵前逃亡されるのですね」
「勇者の方がまだマシでしたよ」
「まあ!」
和やかな雰囲気になって、自然と私たちは並んで街へと向かいました。
雲一つない良い天気です。
そんな日に男女が並んで街を歩く――ってまるで逢引ではないですか!?
はっ! 私は何を考えているのでしょう。
シビリカ卿は救国の英雄にして男爵。
平民のただの侍女とでは身分も立場も釣り合わないと言うのに……
「危ない!」
「きゃっ!」
つい注意力が散漫になり向かってきた馬車の存在に気づかず轢かれそうになった私の手をシビリカ卿がグイッと引っ張り助けてくださいました。
「大丈夫ですか?」
「は、はい、ありがとうございま……すっ!?」
彼の逞しい胸に抱き止められた体勢なのに気づき、意識すると顔がカッと熱くなりました。
「手は繋いでおいた方が良さそうですね」
「シビリカ卿!」
彼の大きな手が私の小さな手を包み込む。
男女が手を繋いで歩くなんて恋人同士だと誤解されてしまいます。
「いけません……私のような平民と誤解されればシビリカ卿の名誉に傷が付きます」
「構いません」
「で、ですがシビリカ卿……」
「いつまで他人行儀なんですか?」
シビリカ卿は悪戯っぽく笑い、私の手を眼前に持ち上げました。
「約束ですので俺の事は名前で……アキレスと呼んでください」
「えっ!?」
驚く私の指にキラリと光るものが――
それは、昨夜テラスで渡した彼との約束の指輪でした……
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