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閑話 新緑の少女と傷心の幼女

閑話弐.

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「何もしてないのに大姐おねえちゃんはみんなに嫌われてるの?」

 朱明はもう大混乱だ。

「そうね。蘭華さんは色々とみんなを助けているけど誰もそれに感謝をしない」
「だけど媽媽おかあさんは助けて貰ったら感謝しなさいって……」

 大人の言う事が矛盾していて朱明には何が何だか理解ができない。

「それなのに媽媽おかあさんが大姐にもう会っちゃダメって言うの」
「それは朱明が月門で孤立するんじゃないかって心配なのよ」

 翠蓮としては腹立たしいが、朱明の母が我が子を心配するのも無理ないとも理解できる。翠蓮は月門の有力者である丹頼の孫娘だからこそ周囲の目を気にせず蘭華の味方でいられるのだ。

「どうして大姐は悪いことしてないのに嫌われるの?」

 難しい問題だ。

 神賜術かみのたまものや二十等爵による差別意識を子供にどう説明したものか。その答えに蘭華も詰まった。

 ところが、翠蓮は立ち上がって腰に手を当て自信満々に胸を張った。

「そんなもの決まってるわ!」

 翠蓮の微塵も迷いの無い態度に何か答えてくれると朱明は期待の眼差しを向ける。

「それは大人の事情よ!」
「おお!おとな」

 朱明は目をまんまると大きく見開いた。

 実際のところ朱明にはなんだか良く分からなかった。だが、子供には立ち入れない大人の世界とはなんとなくカッコいいものを感じる。

 そういうのに子供は憧れるのだ。

「いいこと朱明、蘭華さんは正しく間違っているのはまちの連中よ」

 翠蓮の説得力があるのか無いのか分からない暴言にこくこく朱明が頷く。はきはきした翠蓮の物言いはなんとなく信じられるような気がする。

「だけど正しいからと言って受け入れられるわけじゃないし、間違っているからって嫌われるわけじゃないの」
「???」

 意味が分からないと朱明は首を傾げた。

「今は分からなくて良いし納得する必要もないわ。朱明が大人になっていく過程で自然と理解できるようになるから」

 子供で分からないなら全て未来に丸投げだ。
 きっと時間が全てを解決してくれるだろう。

「だけど、これだけは間違いのない絶対の真実」

 翠蓮は再び朱明の前に屈むとコツンと額をくっつけた。

「朱明が蘭華さんを好きであり続けるなら、蘭華さんはいつだって朱明の味方だから」
「うん……」
「だから朱明が蘭華さんを好きだって気持ちを伝えるましょ」
「でも、どうしたら……」
「来なさい」

 翠蓮は立ち上がると朱明に手を差し伸べた。

「私が朱明の気持ちを、蘭華さんに会いたいって気持ちの伝え方を教えてあげる」
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