48 / 84
第八章 常夜の魔女と差別の壁
八の参.
しおりを挟む
「大姐!」
それは嬉しそうに弾んだ幼い少女の呼び声。
蘭華が振り向けば栗色の頭が視界に入った。
その大きなクリクリの目をキラキラ輝かせて、トタトタと走ってくる可愛い姑娘――
「朱朱ちゃん!」
その少女が蘭華の胸に矢のように飛び込んで来た。その勢いが思いのほか凄く、蘭華は全身で受け止めた。お陰でほっぽり出された翠蓮は不満顔である。
「どうしたの?」
「あのね、あのね」
抱き止めた朱明を地に降ろし屈んで目を合わせると、朱明は後ろ手にモジモジとはにかむ。
「これ、ちゃんと飲めたの!」
蘭華の眼前に朱明が両手を突き出した。ちっちゃな手に握られていたのは蘭華が渡した薬包紙。折り方が独特だから間違いない。
「そう、偉いわ朱朱ちゃん」
「えへへへ」
栗色の頭を撫でれば朱明は嬉しそうに破顔した。それがとても可愛くて蘭華は思わず微笑んだ。
「くっ、またしても強力な恋敵が!」
とても微笑ましい光景なのだが、蘭華の心を愛らしい幼女に奪われて翠蓮の嫉妬の炎が燃え上がる。
「ただでさえ刀夜様っていう反則級の大丈夫が現れたってのに、何よこの超反則級は!」
しかも、相手は恋敵と知りながら翠蓮も頭撫で撫でしたくなる超絶可愛い小さな女の子。蘭華も即堕ちしてデレデレなのが丸分かりである。
「それでね、それでね、もう痛くないの!」
「ふふふ、お薬には痛み止めも含んでいるのよ。でもね、痣はまだ残ってるから薬はきちんと飲んでね」
「はーい」
朱明と接して蘭華が朗らかに笑うと翠蓮は諦めとも安堵ともつかない溜め息を漏らした。
「だけど……まあいっか」
彼女としては蘭華が笑顔になってくれるのは喜ばしい。それが自分の力でないのが何とも複雑な気分だったが。
愛らしい朱明に蘭華と翠蓮の目尻も下がり、ほのぼのとした主人の様子を三体の霊獣が見守る。
「朱朱から離れろ!」
そんな和やかな空気を少年の声が打ち破った。見れば朱明より少し歳上っぽい少年が口を引き結び顔を怒らせ睨んでいた。
「この悪い魔女め!」
それは嬉しそうに弾んだ幼い少女の呼び声。
蘭華が振り向けば栗色の頭が視界に入った。
その大きなクリクリの目をキラキラ輝かせて、トタトタと走ってくる可愛い姑娘――
「朱朱ちゃん!」
その少女が蘭華の胸に矢のように飛び込んで来た。その勢いが思いのほか凄く、蘭華は全身で受け止めた。お陰でほっぽり出された翠蓮は不満顔である。
「どうしたの?」
「あのね、あのね」
抱き止めた朱明を地に降ろし屈んで目を合わせると、朱明は後ろ手にモジモジとはにかむ。
「これ、ちゃんと飲めたの!」
蘭華の眼前に朱明が両手を突き出した。ちっちゃな手に握られていたのは蘭華が渡した薬包紙。折り方が独特だから間違いない。
「そう、偉いわ朱朱ちゃん」
「えへへへ」
栗色の頭を撫でれば朱明は嬉しそうに破顔した。それがとても可愛くて蘭華は思わず微笑んだ。
「くっ、またしても強力な恋敵が!」
とても微笑ましい光景なのだが、蘭華の心を愛らしい幼女に奪われて翠蓮の嫉妬の炎が燃え上がる。
「ただでさえ刀夜様っていう反則級の大丈夫が現れたってのに、何よこの超反則級は!」
しかも、相手は恋敵と知りながら翠蓮も頭撫で撫でしたくなる超絶可愛い小さな女の子。蘭華も即堕ちしてデレデレなのが丸分かりである。
「それでね、それでね、もう痛くないの!」
「ふふふ、お薬には痛み止めも含んでいるのよ。でもね、痣はまだ残ってるから薬はきちんと飲んでね」
「はーい」
朱明と接して蘭華が朗らかに笑うと翠蓮は諦めとも安堵ともつかない溜め息を漏らした。
「だけど……まあいっか」
彼女としては蘭華が笑顔になってくれるのは喜ばしい。それが自分の力でないのが何とも複雑な気分だったが。
愛らしい朱明に蘭華と翠蓮の目尻も下がり、ほのぼのとした主人の様子を三体の霊獣が見守る。
「朱朱から離れろ!」
そんな和やかな空気を少年の声が打ち破った。見れば朱明より少し歳上っぽい少年が口を引き結び顔を怒らせ睨んでいた。
「この悪い魔女め!」
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
後宮の棘
香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。
☆完結しました☆
スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。
第13回ファンタジー大賞特別賞受賞!
ありがとうございました!!
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる