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第七章 新緑の少女と猿の妖魔
七の壱.
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刀夜から逃げるように別れた蘭華は、翠蓮と連れ立って反物屋へ向かっていた。
翠蓮は嬉しそうに両腕を蘭華の右腕に絡める。
「えへへへ」
「もう、翠蓮ったら変な顔で笑って」
呆れられても翠蓮は堪えず甘えるように擦り寄った。そんな翠蓮に蘭華は小首を傾げる。
「本当にどうしたの? 今日はずいぶん甘えるのね」
「だぁってぇ」
翠蓮は口を尖らせ蘭華の右腕に絡めた両腕に力を篭めた。
「蘭華さん邑に全然来てくれないんだもん」
寂しかったんだからと可愛く拗ねられると蘭華はどうにも突っ張れない。だが、翠蓮は普段もっとしっかりしていた筈だ。
「こんな甘えん坊さんだったかしら?」
「蘭華さんが悪いんだから」
翠蓮はちょっと面白くなかった。
久しぶりに大好きな蘭華が月門にやって来て翠蓮は喜んだ。それなのに彼女を独り占めできずに翠蓮は鬱憤が溜まっていた。もう爆発寸前だ。
買い付けの件はいい。翠蓮としても蘭華の役に立てるなら嬉しいのだから。
斉周に連行され医療に専念するのも許せる。はっきり言って患者を治療する蘭華は格好良いから。
だが、いつも凛々しい蘭華がどうにも浮ついているのは我慢ならない。
その原因は分かっている。
(やっぱり刀夜様は危険よ!)
そう刀夜だ。
彼の出現から明らかに蘭華の様子がおかしい。
確かに刀夜は眉目秀麗だ。それでいて常夜の森に入るほど腕が立つ頼もしさ。更に話した感じ蘭華に偏見もなさそうで、清風を思わせる爽やかな好青年。
しかも、着ている胡服は天絹なのだから身分も高く裕福なのは間違いない。
(顔良し、性格良し、地位も名誉も財産もあるなんて、どれだけ高性能高品質なのよ!)
粗を探したくても探せない完全無欠の良物件だ。
これでは蘭華といえど惹かれるのも無理はない。
しかも翠蓮の見るところ刀夜の方もまんざらじゃなさそうである。
(刀夜様が蘭華さんに恋するのは仕方ないのよ。だって蘭華さんは美人で優しくてとぉっても強い最高の女性なんだから。だけど……)
このままだと蘭華が奪られる。
そう翠蓮の本能が告げている。
だから、危機感を抱いた翠蓮は甘えるように蘭華に縋った。
「蘭華さんは私と一緒は嫌ですか?」
「うっ!」
翠蓮の上目遣いの直撃を受け蘭華は空いた手で胸を押さえた。
翠蓮は自分の容姿がとても愛らしく、蘭華が可愛いもの好きであると正しく理解している。それを最大限に利用して蘭華を堕としにかかったのだ。
「翠蓮が私を慕ってくれるのはとっても嬉しいわ」
「えへへ」
事実、こうやって好意を寄せてくれる翠蓮といると蘭華の心が温まる。
「だけど……」
だが、蘭華の顔は曇るのだった。
翠蓮は嬉しそうに両腕を蘭華の右腕に絡める。
「えへへへ」
「もう、翠蓮ったら変な顔で笑って」
呆れられても翠蓮は堪えず甘えるように擦り寄った。そんな翠蓮に蘭華は小首を傾げる。
「本当にどうしたの? 今日はずいぶん甘えるのね」
「だぁってぇ」
翠蓮は口を尖らせ蘭華の右腕に絡めた両腕に力を篭めた。
「蘭華さん邑に全然来てくれないんだもん」
寂しかったんだからと可愛く拗ねられると蘭華はどうにも突っ張れない。だが、翠蓮は普段もっとしっかりしていた筈だ。
「こんな甘えん坊さんだったかしら?」
「蘭華さんが悪いんだから」
翠蓮はちょっと面白くなかった。
久しぶりに大好きな蘭華が月門にやって来て翠蓮は喜んだ。それなのに彼女を独り占めできずに翠蓮は鬱憤が溜まっていた。もう爆発寸前だ。
買い付けの件はいい。翠蓮としても蘭華の役に立てるなら嬉しいのだから。
斉周に連行され医療に専念するのも許せる。はっきり言って患者を治療する蘭華は格好良いから。
だが、いつも凛々しい蘭華がどうにも浮ついているのは我慢ならない。
その原因は分かっている。
(やっぱり刀夜様は危険よ!)
そう刀夜だ。
彼の出現から明らかに蘭華の様子がおかしい。
確かに刀夜は眉目秀麗だ。それでいて常夜の森に入るほど腕が立つ頼もしさ。更に話した感じ蘭華に偏見もなさそうで、清風を思わせる爽やかな好青年。
しかも、着ている胡服は天絹なのだから身分も高く裕福なのは間違いない。
(顔良し、性格良し、地位も名誉も財産もあるなんて、どれだけ高性能高品質なのよ!)
粗を探したくても探せない完全無欠の良物件だ。
これでは蘭華といえど惹かれるのも無理はない。
しかも翠蓮の見るところ刀夜の方もまんざらじゃなさそうである。
(刀夜様が蘭華さんに恋するのは仕方ないのよ。だって蘭華さんは美人で優しくてとぉっても強い最高の女性なんだから。だけど……)
このままだと蘭華が奪られる。
そう翠蓮の本能が告げている。
だから、危機感を抱いた翠蓮は甘えるように蘭華に縋った。
「蘭華さんは私と一緒は嫌ですか?」
「うっ!」
翠蓮の上目遣いの直撃を受け蘭華は空いた手で胸を押さえた。
翠蓮は自分の容姿がとても愛らしく、蘭華が可愛いもの好きであると正しく理解している。それを最大限に利用して蘭華を堕としにかかったのだ。
「翠蓮が私を慕ってくれるのはとっても嬉しいわ」
「えへへ」
事実、こうやって好意を寄せてくれる翠蓮といると蘭華の心が温まる。
「だけど……」
だが、蘭華の顔は曇るのだった。
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