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第五章 剣仙の皇子と魔女の由来
五の参.
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「これなら綺麗に消えるわ」
蘭華は最後に擦過傷と打撲傷を負った幼い少女の治療に当たっていた。
ただ走って転倒してして負った妖虎とは関係ない命に別状の無い軽い怪我である。たが、擦り傷や青痣をこさえた顔が痛々しい。
「この薬を日に三回服用してね」
蘭華が少女に薬を処方したのに刀夜は意外に感じた。傷の治療だけに方医術を使うのかと思っていたのだ。
「外傷にも内服薬を使用するのか?」
「軽度の傷は下手に方医術で治療せず、薬を使用した方が免疫力の低下を招かずに済むのです。これから免疫を強めていく子供なら尚更です」
今まで治療に専念していた蘭華も余裕ができたのか刀夜の疑念にすかさず回答した。
「入れたのは経皮、丁子、大黄に甘草か?」
ひょいっと覗き込んだ斉周が口を挟んだ。
「他に樸樕、川芎も組み合わせております、打ち身や疼痛、青痣に著効するんですよ」
「なるほど、良く考えられた配合だな」
内容を聞いて斉周は感心したが、薬を渡された少女は嫌そうに顔を歪めた。
「おくすり、苦いからやっ!」
「これは苦くないわよ?」
「ウソッ! 斉先生もおんなじこと言って朱朱を騙したもん!」
「こらっ朱明、良薬は口に苦しってんだ」
どうやら斉周が以前この愛らしい少女朱明を騙して苦い薬を服用させたらしい。
「ほら、嘘つきじゃない」
「嘘も方便ってんだ」
「大人は都合が悪くなるとすぐキベンをロウするんだから」
「お前、何処でそんな言葉を覚えたんだ!?」
「そうやって朱朱を騙してモテ遊んだんだわ」
「人聞きの悪い事言うんじゃねぇ!」
「あらあら」
小さな女の子に熊のような大人がやり込められる滑稽な姿に、蘭華は思わずくすりと笑った。
(か、可愛い!?)
蘭華が見せた笑顔に刀夜は胸がぎゅうっと鷲掴みにされるような苦しさを覚えた。
(患者に向き合う真剣な顔も綺麗だったが……こんな可憐な表情もできるのか)
凛とした佇まいの蘭華が垣間見せた愛らしさは刀夜にとって破壊力抜群だったらしい。
そんな刀夜の視線に気づかず、蘭華は柔らかい笑顔を朱明へ向けた。
「大姐も嘘つきはダメって思うでしょ?」
「そうねぇ、嘘はいけないわ」
縋ってきた朱明の栗色の髪を蘭華は優しく撫でる。
「あの時は一刻も早く飲ませんと大事になるから仕方なかったんだ」
「分かっていますよ」
斉周が困り顔で言い訳すると、蘭華はくすりと笑って頷き朱明の前に屈んで視線を並べた。
「お薬はね、その人に合わない場合や急性治療の為に使う下薬なんかは苦く感じるの」
証の合わない薬は口に苦いものであるし、下薬の場合はどうしても味は二の次になってしまう。
「おう、あん時の朱明は酷い高熱だったから急いで熱を冷ます為に強い薬を使ったんだ」
蘭華の説明に斉周は後ろから自分の正当性を言い訳するが、却って朱明から疑いの目を向けられてしまった。
蘭華は最後に擦過傷と打撲傷を負った幼い少女の治療に当たっていた。
ただ走って転倒してして負った妖虎とは関係ない命に別状の無い軽い怪我である。たが、擦り傷や青痣をこさえた顔が痛々しい。
「この薬を日に三回服用してね」
蘭華が少女に薬を処方したのに刀夜は意外に感じた。傷の治療だけに方医術を使うのかと思っていたのだ。
「外傷にも内服薬を使用するのか?」
「軽度の傷は下手に方医術で治療せず、薬を使用した方が免疫力の低下を招かずに済むのです。これから免疫を強めていく子供なら尚更です」
今まで治療に専念していた蘭華も余裕ができたのか刀夜の疑念にすかさず回答した。
「入れたのは経皮、丁子、大黄に甘草か?」
ひょいっと覗き込んだ斉周が口を挟んだ。
「他に樸樕、川芎も組み合わせております、打ち身や疼痛、青痣に著効するんですよ」
「なるほど、良く考えられた配合だな」
内容を聞いて斉周は感心したが、薬を渡された少女は嫌そうに顔を歪めた。
「おくすり、苦いからやっ!」
「これは苦くないわよ?」
「ウソッ! 斉先生もおんなじこと言って朱朱を騙したもん!」
「こらっ朱明、良薬は口に苦しってんだ」
どうやら斉周が以前この愛らしい少女朱明を騙して苦い薬を服用させたらしい。
「ほら、嘘つきじゃない」
「嘘も方便ってんだ」
「大人は都合が悪くなるとすぐキベンをロウするんだから」
「お前、何処でそんな言葉を覚えたんだ!?」
「そうやって朱朱を騙してモテ遊んだんだわ」
「人聞きの悪い事言うんじゃねぇ!」
「あらあら」
小さな女の子に熊のような大人がやり込められる滑稽な姿に、蘭華は思わずくすりと笑った。
(か、可愛い!?)
蘭華が見せた笑顔に刀夜は胸がぎゅうっと鷲掴みにされるような苦しさを覚えた。
(患者に向き合う真剣な顔も綺麗だったが……こんな可憐な表情もできるのか)
凛とした佇まいの蘭華が垣間見せた愛らしさは刀夜にとって破壊力抜群だったらしい。
そんな刀夜の視線に気づかず、蘭華は柔らかい笑顔を朱明へ向けた。
「大姐も嘘つきはダメって思うでしょ?」
「そうねぇ、嘘はいけないわ」
縋ってきた朱明の栗色の髪を蘭華は優しく撫でる。
「あの時は一刻も早く飲ませんと大事になるから仕方なかったんだ」
「分かっていますよ」
斉周が困り顔で言い訳すると、蘭華はくすりと笑って頷き朱明の前に屈んで視線を並べた。
「お薬はね、その人に合わない場合や急性治療の為に使う下薬なんかは苦く感じるの」
証の合わない薬は口に苦いものであるし、下薬の場合はどうしても味は二の次になってしまう。
「おう、あん時の朱明は酷い高熱だったから急いで熱を冷ます為に強い薬を使ったんだ」
蘭華の説明に斉周は後ろから自分の正当性を言い訳するが、却って朱明から疑いの目を向けられてしまった。
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