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第一章 常夜の魔女と森の家
一の伍.
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「確かに『常夜の魔女』とは私を指した蔑称です」
蘭華は小さく溜め息を漏らすと素直に白状した。
刀夜達を追い返すのは難しくはないだろうとは思う。
だが、刀夜を敵に回すのは得策ではない、蘭華はそう判断した。それに青年の瞳には理性的な光が見られる。彼なら大丈夫だと何故か信じられた。
「月門の邑の方々は私の事をそう呼んでおります」
森に住む蘭華を恐れ蔑み、邑の者は蘭華を『常夜の魔女』と呼んでいる。それの事を蘭華も当然知っていた。
「ですが、私は本当に導士で決して謀る意図は……」
「いや、悪いのは不躾な俺達の方だ」
謝罪する蘭華に構わないと刀夜はからりと笑う。その屈託ない笑顔に蘭華は見入ってしまった。
(とても綺麗な人……)
容姿の美しさもあるが、内から滲み出る風格の清々しさが好ましい。深く青い瞳に惹き込まれ、思わず蘭華の頬が赤くなった。
「済まなかった。巫蠱を生業にする者が人里近くにいる筈もなかったな」
魔女とは蠱道(蠱術とも呼ばれる呪術)を継承している巫蠱の別称である。古来、神降ろしを行う巫女の一族であったが、現在では呪いが主体となっており人里から離れた隠れ里で暮らしている。
「だがしかし、其方を魔女と呼ぶ者達の気持ちも分かる気がする」
「……」
蘭華の眉間に皺がよる。
非礼を詫びたかと思ったら直ぐに手の平を返して他人を魔女呼ばわり。すんっと蘭華の顔から熱が引く。せっかく信じようと思った刀夜の株が一気に落ちた。
「人とは思えぬ美しさだ」
「なっ、なっ、なっ……」
が、落とされた所に意表を付いて、刀夜に甘く褒められた蘭華は言葉を失った。
「これ程まで美しい姑娘が斯様な森に一人で暮らしていれば、誰もが魔女と思うのも仕方があるまい」
「あぅあぅ……」
賛辞が続き、あわあわと蘭華は消え入りそうに恥じ入る。
「珍しいですな。刀夜様が女性にそんな言葉を掛ける所を某は初めて見ました」
「ふふふ、俺は真実しか口にせんよ」
「ん――ッ!?」
そこへ更に主従の連携攻撃で追い討ちを掛けられ、蘭華はボンッと音を立てそうな程まっ赤になったのだった。
蘭華は小さく溜め息を漏らすと素直に白状した。
刀夜達を追い返すのは難しくはないだろうとは思う。
だが、刀夜を敵に回すのは得策ではない、蘭華はそう判断した。それに青年の瞳には理性的な光が見られる。彼なら大丈夫だと何故か信じられた。
「月門の邑の方々は私の事をそう呼んでおります」
森に住む蘭華を恐れ蔑み、邑の者は蘭華を『常夜の魔女』と呼んでいる。それの事を蘭華も当然知っていた。
「ですが、私は本当に導士で決して謀る意図は……」
「いや、悪いのは不躾な俺達の方だ」
謝罪する蘭華に構わないと刀夜はからりと笑う。その屈託ない笑顔に蘭華は見入ってしまった。
(とても綺麗な人……)
容姿の美しさもあるが、内から滲み出る風格の清々しさが好ましい。深く青い瞳に惹き込まれ、思わず蘭華の頬が赤くなった。
「済まなかった。巫蠱を生業にする者が人里近くにいる筈もなかったな」
魔女とは蠱道(蠱術とも呼ばれる呪術)を継承している巫蠱の別称である。古来、神降ろしを行う巫女の一族であったが、現在では呪いが主体となっており人里から離れた隠れ里で暮らしている。
「だがしかし、其方を魔女と呼ぶ者達の気持ちも分かる気がする」
「……」
蘭華の眉間に皺がよる。
非礼を詫びたかと思ったら直ぐに手の平を返して他人を魔女呼ばわり。すんっと蘭華の顔から熱が引く。せっかく信じようと思った刀夜の株が一気に落ちた。
「人とは思えぬ美しさだ」
「なっ、なっ、なっ……」
が、落とされた所に意表を付いて、刀夜に甘く褒められた蘭華は言葉を失った。
「これ程まで美しい姑娘が斯様な森に一人で暮らしていれば、誰もが魔女と思うのも仕方があるまい」
「あぅあぅ……」
賛辞が続き、あわあわと蘭華は消え入りそうに恥じ入る。
「珍しいですな。刀夜様が女性にそんな言葉を掛ける所を某は初めて見ました」
「ふふふ、俺は真実しか口にせんよ」
「ん――ッ!?」
そこへ更に主従の連携攻撃で追い討ちを掛けられ、蘭華はボンッと音を立てそうな程まっ赤になったのだった。
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