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第二章 剣仙の皇子と妖虎の真相
二の弐.
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「それでも刀夜様のお立場には納得いきませぬ」
刀夜は春風の如く穏やかに人と接し、秋霜の如く鋭く自分に厳しい。まだ二十四歳の若さで国に並び立つ者がいない程に剣を極められたのは神賜術のお陰だけではなく、自分を律し努力を積み重ねてきたからだ。
そんな傑物である自分の主人を夏琴は誇りに思っている。だから、夏琴としては人品に優れた泰然はともかく、他の三人の皇子の下に刀夜が置かれているのに納得がいかない。
「第二だろうと第五だろうと帝位に着かないのならどちらも同じだろう?」
「それはそうなのですが……」
夏琴は頭で分かっていながらも憤懣遣る方無いといった表情が出てしまっている。
そんな裏表のない直臣に刀夜はくすりと笑った。
「お前の心配も分かる」
言葉にこそしないが夏琴の不満や不安は刀夜にも理解できる。
何事も無く泰然が無事に帝位を継げれば問題はない。だが、宮中には泰然の即位を望まぬ者が常日頃から陰謀を巡らしている。
「だからこそ、この件は内々に処理しなければならん」
珍しく刀夜の顔が苦々しくなった。
「日輪十二神の一柱が行方不明だなどと知られては帝の威信に傷が付く」
日輪十二神とは帝に降り掛かる災厄を喰らうとされる十二の守護霊獣である。
窮奇、甲作、 胇胃 、雄伯、騰簡、攬諸、伯奇、強梁、祖明、委隨、錯断、騰根がそれにあたる。
その内、宮中に巣食う蠱――悪心を起こさせる蠱の呪いを喰らう窮奇が、ひと月程前より行方が知れないのだ。
事が公になれば帝が守護霊獣に見限られたと思われかねない。秘密裏に捜索されたが行方は一向に判明しなかった。
ところが先日、月門の近郊で、それらしき姿の目撃情報が齎されたのだ。
それも最悪の形で――
「国を守護する霊獣が人を襲ったとなれば一大事」
虎の妖魔が暴れ回っており、多数の邑人が負傷したらしい。窮奇は翼を持つ虎であり特徴が一致している。
「しかも場所が問題だ」
月門の邑は泰然の直轄だ。ここぞとばかりに反泰然派が動くだろう。
「場合によっては兄上が窮奇失踪の責まで問われかねない」
刀夜は春風の如く穏やかに人と接し、秋霜の如く鋭く自分に厳しい。まだ二十四歳の若さで国に並び立つ者がいない程に剣を極められたのは神賜術のお陰だけではなく、自分を律し努力を積み重ねてきたからだ。
そんな傑物である自分の主人を夏琴は誇りに思っている。だから、夏琴としては人品に優れた泰然はともかく、他の三人の皇子の下に刀夜が置かれているのに納得がいかない。
「第二だろうと第五だろうと帝位に着かないのならどちらも同じだろう?」
「それはそうなのですが……」
夏琴は頭で分かっていながらも憤懣遣る方無いといった表情が出てしまっている。
そんな裏表のない直臣に刀夜はくすりと笑った。
「お前の心配も分かる」
言葉にこそしないが夏琴の不満や不安は刀夜にも理解できる。
何事も無く泰然が無事に帝位を継げれば問題はない。だが、宮中には泰然の即位を望まぬ者が常日頃から陰謀を巡らしている。
「だからこそ、この件は内々に処理しなければならん」
珍しく刀夜の顔が苦々しくなった。
「日輪十二神の一柱が行方不明だなどと知られては帝の威信に傷が付く」
日輪十二神とは帝に降り掛かる災厄を喰らうとされる十二の守護霊獣である。
窮奇、甲作、 胇胃 、雄伯、騰簡、攬諸、伯奇、強梁、祖明、委隨、錯断、騰根がそれにあたる。
その内、宮中に巣食う蠱――悪心を起こさせる蠱の呪いを喰らう窮奇が、ひと月程前より行方が知れないのだ。
事が公になれば帝が守護霊獣に見限られたと思われかねない。秘密裏に捜索されたが行方は一向に判明しなかった。
ところが先日、月門の近郊で、それらしき姿の目撃情報が齎されたのだ。
それも最悪の形で――
「国を守護する霊獣が人を襲ったとなれば一大事」
虎の妖魔が暴れ回っており、多数の邑人が負傷したらしい。窮奇は翼を持つ虎であり特徴が一致している。
「しかも場所が問題だ」
月門の邑は泰然の直轄だ。ここぞとばかりに反泰然派が動くだろう。
「場合によっては兄上が窮奇失踪の責まで問われかねない」
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