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第25話 紡ぐ物語⑧「新たに紡がれた物語・後編」
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どちらからだったのか、自然と私たちの唇と唇は別たれた。
だけど、私たちの心はしっかり結びついたままだと感じる。
目を開ければ世界は暗転していた。
なんの光も届かない真っ暗闇で、だけど不思議と綴さんの姿ははっきり見えた。
綴さんの腕の確かな力強さと温もり、そして目の前にいる安心感からか、こんな異常な世界にいながらちっとも恐くなかった。
「世界……無くなっちゃいましたね」
「後悔されていますか?」
「いいえ、これっぽっちも……」
即答して傍にいてくれて綴さんの存在がとても嬉しい。
「だって、生きるも死ぬも一人より二人の方が寂しくないから」
「私もです……本さえ読めれば一生一人で良いって思っていたのに……」
その場で留まったまま私たちは抱き締め合い、再びお互いを確かめるように唇を重ねた。
「もう、私は一人では生きていけませんね」
「大丈夫、紡子さんはもう一人じゃありません」
世界の終わりに私と綴さんの二人だけ。
取り残されたのが一人じゃないのがこんなに心強いなんて……いいえ、きっと相手が綴さんだからね、きっと……
「ふふふ、もう大丈夫そうね」
突然、私と綴さんだけの世界に横から楽しげな女性の声が割って入った。
「コデット!」
私たちが驚き見れば、そこには白いドレスのコデットと黒衣のロッドバロンが並び立っていた。
「この物語は終わりだけど、あなたたちの物語はこれから紡がれるのよ」
「だけど、私たちはもう……」
「まだ終わらないわ」
コデットは首を横に振って笑う。
「だから、頑張れ」
コデットはパチッと器用にウィンクした。
「私は私で頑張ってロッドバロン様にアタックするわ。まあ見てなさい、絶対に堕としてみせるから」
コデットが愛おしそうに横のロッドバロンを見上げる。するとしだいに周囲が白く染まっていき、光の世界に私と綴さんは飲み込まれた。
「紡子さん!」
「綴さん!」
あまりの明るさに互いの姿を見失った私たちは引き離されるのを恐れるように抱き締め合った。
「くすくす、それがあなたの望んだ真の結末でしょ?」
そんな光だけの世界にコデットの声が私の耳に届いた。
だけど、私たちの心はしっかり結びついたままだと感じる。
目を開ければ世界は暗転していた。
なんの光も届かない真っ暗闇で、だけど不思議と綴さんの姿ははっきり見えた。
綴さんの腕の確かな力強さと温もり、そして目の前にいる安心感からか、こんな異常な世界にいながらちっとも恐くなかった。
「世界……無くなっちゃいましたね」
「後悔されていますか?」
「いいえ、これっぽっちも……」
即答して傍にいてくれて綴さんの存在がとても嬉しい。
「だって、生きるも死ぬも一人より二人の方が寂しくないから」
「私もです……本さえ読めれば一生一人で良いって思っていたのに……」
その場で留まったまま私たちは抱き締め合い、再びお互いを確かめるように唇を重ねた。
「もう、私は一人では生きていけませんね」
「大丈夫、紡子さんはもう一人じゃありません」
世界の終わりに私と綴さんの二人だけ。
取り残されたのが一人じゃないのがこんなに心強いなんて……いいえ、きっと相手が綴さんだからね、きっと……
「ふふふ、もう大丈夫そうね」
突然、私と綴さんだけの世界に横から楽しげな女性の声が割って入った。
「コデット!」
私たちが驚き見れば、そこには白いドレスのコデットと黒衣のロッドバロンが並び立っていた。
「この物語は終わりだけど、あなたたちの物語はこれから紡がれるのよ」
「だけど、私たちはもう……」
「まだ終わらないわ」
コデットは首を横に振って笑う。
「だから、頑張れ」
コデットはパチッと器用にウィンクした。
「私は私で頑張ってロッドバロン様にアタックするわ。まあ見てなさい、絶対に堕としてみせるから」
コデットが愛おしそうに横のロッドバロンを見上げる。するとしだいに周囲が白く染まっていき、光の世界に私と綴さんは飲み込まれた。
「紡子さん!」
「綴さん!」
あまりの明るさに互いの姿を見失った私たちは引き離されるのを恐れるように抱き締め合った。
「くすくす、それがあなたの望んだ真の結末でしょ?」
そんな光だけの世界にコデットの声が私の耳に届いた。
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