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第24話 紡ぐ物語⑧「新たに紡がれた物語・前編」

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 私はいきなり佐倉さんにグイッと引っ張られ、彼の腕の中に閉じ込められてしまいました。

「僕が好きなのは書院さん……書院紡子さんだけだから」

 頭上から降って来た突然の告白。

 私の頭は真っ白になってしまいました。

「あ、あの……私……」

 佐倉さんが……私を?
 なんで?……本当に?

 どうしよう?……どう答えれば良い?
 私は困ってる?……それとも嬉しい?

 佐倉さんに好きって言われて、私の胸に去来する思考の渦が騒めき落ち着かない。

「帰れなくなってもいいんですか?」
「書院さんを……紡子さんを見殺しにするくらいなら帰れなくてもいい」

 私の背に回された佐倉さんの腕に力がこもる。それは彼の絶対に離さない意思表示。

「紡子さんが一緒ならこの世界に取り残されても構いません」
「原作の筋書きが壊れてしまいます」
「紡子さんが死んでしまう世界ストーリーなんて壊れてしまえばいい」

 佐倉さんの口が私の耳に近づいた。

「僕が永遠の愛を誓う相手がいるなら、それはコレットではなく……紡子さん、あなたです」
「あっ!?」

 私の顔がカァッと熱くなる。

「この先に世界の終わりが待っていても……最後の最後まで僕は紡子さんが大好きです」
「佐倉さん……」

 ダメなのに……いけないのに……嬉しい……涙が出そう……

「綴です……綴って呼んでもらえますか?」
「それは……はい……つづ…るさん?」

 見上げて恐る恐る名前を口にすれば、佐倉さん……綴さんが優しく微笑む。その顔がとっても穏やかで、とても死を覚悟した者の表情ではありません。

「死ぬかもしれないのに……綴さんは私なんかでいいんですか?」
「なんかじゃありません」

 綴さんの瞳が真っ直ぐ私に向けられる。
 意外と長い彼のまつ毛にドキリとした。

「紡子さんがいいんです……紡子さんじゃないとダメなんです」
「綴さん……」

 ――嬉しい

 異能とか、小説とか、物語の筋書きとか、そんな全てがもうどうでもよくて、ただただ私の胸は喜びでいっぱいになった。

「だから何度だって言います……紡子さんが好きです」
「はい……はい……」

 私の目に溜まった涙が零れる。綴さんはその雫をそっと拭った手で私の頬を包み込む。綴さんの顔がしだいに大きくなっていく。

「私も……綴さんが……んっ」

 私の言葉を遮って、唇に温かく柔らかいものが触れる。
 私は目を閉じてその心地よい優しさに身も心も委ねた。

 そのキスは唇を重ねるだけではなく、私と綴さんの体温もまた重なり一体となっていく。

 そう……

 このキスは私と綴さんの想いを繋げ、マーブル模様のように混ざり溶け合わせていった……
 
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