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第15話 綴る世界⑥「煌びやかな悪夢の世界・前編」

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 ここはホントに中世ヨーロッパのようで、夜になるとちょっと先も見通せない闇に包まれた。

 色んな光に照らされ24時間365日明るい日本とはえらい違いだ。だけど、今いるホールだけはとても光輝いていた。

 各テーブルには古風なキャンドルが飾られ、天井を見上げるとシャンデリアが煌びやかな灯りを振り撒き会場を幻想的に彩っている。

 その輝きの中で正装やドレスを纏った男女が踊る様子は夢の世界みたいだ。

 いや、ホント夢だったら良かったのに……

 けっきょく寝て覚めても、この悪夢は醒めることはなかった。そのまま夜になって昨日の王妃からの宣告通り舞踏会が始まり、僕はお妃候補の綺麗な令嬢たちとダンスを踊ったのだ。

 ダンスなんて生まれてこのかた経験はなかったけど、不思議と卒なくステップを踏めた。きっと僕の体にはジークの経験も宿っているんだろう。

 まあ、それは助かったんだけど……

 僕の隣に座る美しい女性を盗み見ながらげんなりした気分になる。

「ジーク、どういうつもりです?」

 成人した息子がいるとは思えないほど若々しく美しい王妃が失望のため息を吐いた。ホントは僕とは無縁のはずなんだけど、なんか罪悪感がハンパない。

「この中に僕が選ぶべき女性がいないのです」

 と言うか僕はジークじゃないんだから選べないって!

 それに昨日コデットがここで書院さんと引き合わせてくれると約束してくれた。それまではなんとか粘らないと。

 それにしても、白鳥とコデット……なにか引っかかるワードなんだよなぁ。

 どっかで聞いたことがあると思うんだけど……んー、思い出せない。

「ジーク、お前がどれほど嫌がろうと妃を得て王位を継がねばならないのです」
「それは重々承知しております」
「ならば駄々を捏ねていないで彼女たちの中から誰か気に入った者を選びなさい」
「いえ、先ほど申したように相応しい者がおりません……」

 住む世界が違うのに結婚相手をここで選んだら日本に帰れないような気がする。

「……この中には」

 それに、王座に座る僕を期待の目で見上げる候補の令嬢たちは美人だけど肉食系で恐くて選べないってのもあるけど。

「何を言っているのです。妃候補は全員出席してこの中以外に釣り合う令嬢は……」

 僕の意味深な言葉に王妃が首を傾げた。それと同時に新たな来場者を報せるファンファーレが鳴り響いた。

「ロッド男爵、並びに御息女コデット様のご入場!」

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