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第10話 綴る世界④「白鳥が人になる世界」
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――嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ結婚なんて嫌だ!
僕の中でジークが喚く。
――まだ恋もしたことないのに……自由に選べないなんて……
今度はメソメソと。鬱陶しいことこの上なし。
どうやら僕はジークの代わりに政略結婚しなきゃいけないらしい。そんな自分の現状に混乱している中、ジークがうるさくて頭がぐちゃぐちゃになりそうだ。
そこで頭を冷やそうと僕はふらりと外へ涼みに出た。
「どう見ても日本の景観じゃないよなぁ」
映画のセットには見えない質感のある城。行き交う人々に東洋人は一人もいない。
「いったい僕はどこにいるんだろ?」
ここまでリアリティあるならドッキリってわけはないよね?
異世界転移かタイムスリップか……それよりは何かの異能に巻き込まれたと考えるのが現実的かな。
「あっ、いっけね、どこだここ?」
考え事をしていたら、いつの間にか森の中に入り込んでしまっていた。
「とにかく来た道を引き返し……」
――バサバサ
踵を返そうとした僕の視界に入った一羽の梟。
「あれ? 梟って夜行性じゃなかったっけ?」
なんだろう?
梟からジーッと見られているような。
――バサバサ
「あっ」
興味を失くしたのか梟は飛び立っていく。その行く先を眺めていた僕はなんとなく後を追うように足を踏み出した。
しばらく歩いていると森が開けて湖にたどり着いた。
「うわぁ」
目の前に広がる景観に僕はただ感嘆の声が漏れた。夕陽に赤く染まった湖面が波で光を割ってキラキラと輝いていて綺麗だな。
「白鳥かぁ」
スィーっと白鳥の群れが列をなして泳いでいる。ティアラを頭に載せた白鳥を先頭に綺麗に並んで…………
って、ティアラを被った白鳥!?
「いやいやいやいや、どんなメルヘンだよ!?」
――バサバサ
――バサバサ
「あっ!」
僕の叫び声にびっくりしたのか、白鳥たちが一斉に飛び立った。
「あの鳥はいったい……」
いや、普通に考えて野生の白鳥が頭にティアラってあり得なくない?
見上げれば白鳥たちは上空を旋回している。そのまま観察していると少し先にある元聖堂のような廃墟へ次々に降り立っていくのが見えた。
その廃墟が急に光を放ち始めた。たぶん中で何かが光っているのだろう。
「さっきの白鳥が光ってるわけ……ないよね?」
僕は恐る恐る近づき、物陰からそっと中を覗き込んだ。
あー、ホントに白鳥が光ってたよ。
「――ッ!?」
いや、それだけじゃない!?
光り輝く白鳥たちがしだいに膨れ上がり人の形へと変化していく。そして、全ての白鳥が女性の姿になったのだ。
だいたいがメイド服を着ている中でティアラを被っていた白鳥だけが純白のドレスを着ている。
少し色素が抜けたような黒髪を背中に流した後ろ姿を見ただけで美人を予感させるくらいスタイルが良い。
――カツン
どうにも気になって一歩踏み出すと石を蹴ってしまい堂内に音が響き渡った。
「誰!」
「――ッ!?」
その音に振り返ったドレスの女性の顔を見て僕は息を飲んだ。
「書院さん!?」
ティアラを頭に載せた女性は書院紡子さんだったのだ……
僕の中でジークが喚く。
――まだ恋もしたことないのに……自由に選べないなんて……
今度はメソメソと。鬱陶しいことこの上なし。
どうやら僕はジークの代わりに政略結婚しなきゃいけないらしい。そんな自分の現状に混乱している中、ジークがうるさくて頭がぐちゃぐちゃになりそうだ。
そこで頭を冷やそうと僕はふらりと外へ涼みに出た。
「どう見ても日本の景観じゃないよなぁ」
映画のセットには見えない質感のある城。行き交う人々に東洋人は一人もいない。
「いったい僕はどこにいるんだろ?」
ここまでリアリティあるならドッキリってわけはないよね?
異世界転移かタイムスリップか……それよりは何かの異能に巻き込まれたと考えるのが現実的かな。
「あっ、いっけね、どこだここ?」
考え事をしていたら、いつの間にか森の中に入り込んでしまっていた。
「とにかく来た道を引き返し……」
――バサバサ
踵を返そうとした僕の視界に入った一羽の梟。
「あれ? 梟って夜行性じゃなかったっけ?」
なんだろう?
梟からジーッと見られているような。
――バサバサ
「あっ」
興味を失くしたのか梟は飛び立っていく。その行く先を眺めていた僕はなんとなく後を追うように足を踏み出した。
しばらく歩いていると森が開けて湖にたどり着いた。
「うわぁ」
目の前に広がる景観に僕はただ感嘆の声が漏れた。夕陽に赤く染まった湖面が波で光を割ってキラキラと輝いていて綺麗だな。
「白鳥かぁ」
スィーっと白鳥の群れが列をなして泳いでいる。ティアラを頭に載せた白鳥を先頭に綺麗に並んで…………
って、ティアラを被った白鳥!?
「いやいやいやいや、どんなメルヘンだよ!?」
――バサバサ
――バサバサ
「あっ!」
僕の叫び声にびっくりしたのか、白鳥たちが一斉に飛び立った。
「あの鳥はいったい……」
いや、普通に考えて野生の白鳥が頭にティアラってあり得なくない?
見上げれば白鳥たちは上空を旋回している。そのまま観察していると少し先にある元聖堂のような廃墟へ次々に降り立っていくのが見えた。
その廃墟が急に光を放ち始めた。たぶん中で何かが光っているのだろう。
「さっきの白鳥が光ってるわけ……ないよね?」
僕は恐る恐る近づき、物陰からそっと中を覗き込んだ。
あー、ホントに白鳥が光ってたよ。
「――ッ!?」
いや、それだけじゃない!?
光り輝く白鳥たちがしだいに膨れ上がり人の形へと変化していく。そして、全ての白鳥が女性の姿になったのだ。
だいたいがメイド服を着ている中でティアラを被っていた白鳥だけが純白のドレスを着ている。
少し色素が抜けたような黒髪を背中に流した後ろ姿を見ただけで美人を予感させるくらいスタイルが良い。
――カツン
どうにも気になって一歩踏み出すと石を蹴ってしまい堂内に音が響き渡った。
「誰!」
「――ッ!?」
その音に振り返ったドレスの女性の顔を見て僕は息を飲んだ。
「書院さん!?」
ティアラを頭に載せた女性は書院紡子さんだったのだ……
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