77 / 94
第58話 侯爵令嬢は黒幕を知る
しおりを挟む
去っていく男たち。リリは彼らをそのまま行かせた。
──逃げてくれるなら、私としては助かります。
殺さずに無力化することが現在では難しい。自分の手を汚す覚悟はあるが、だからと言って進んで他人に危害を加えたいわけではない。
リリは安堵にほっと溜息をついた。
その時、俄かにガチャガチャと騒がしい音を立てて何かが近づいてくるのがリリにも分かった。おそらく警邏の騎士団だろう。
──先ほどの少年の警告はこれですか。彼は何か危険や魔術などを察知する能力を持っているようですね。
彼は屋敷内から覗くリリに気がつき、『隠形』をも見破った。そして今度は騎士団が近づいて来ていることまでも察知した。リリの魔術を破った茶髪の男の魔術構文破壊といい、この傭兵団は異能を備えた者たちで構成されているのかもしれない。
──そうなると彼らを尾行しても少年に気取られてしまうのですね。
困ったとリリは素直に思った。せっかくの手掛かりが失われてしまったのだ。
「通報のあった現場はここか?」
「美幼女が悪漢たちに襲われているとか?」
──通報?
「どこだ!どこに美幼女がいる!」
「探せ!早く美幼女を救出するのだ!」
何か分からないが、警邏の騎士たちは異様な雰囲気を出している。
「ん?君か?通報にあった美幼女は」
「おお!黒髪赤目の美幼女キター!」
「す、すげぇクオリティだ……」
リリはこの騎士たちに不穏な気配を感じたことと、正直に言って少し面倒になって『隠形』を発動して逃げ出すことにした。
「うお!き、消えた!?」
「ま、ま、ま、まさか……ゆ、ゆ、幽霊?」
「きゃー」
「いやぁ!」
「こわーい!」
野太可愛い悲鳴を上げる騎士たち。
「やめろよ。俺そーいうの苦手なんだから」
「物理で対応できないのはちょっと……」
因みにこの世界にアンデットは存在しません。オール物理対応可能なアンナに優しい世界です。なので、この世界の幽霊に対する感覚は日本と変わらず、幽霊はいると言えばいるし、いないと言えばいないのです。
やいのやいのと幽霊騒動で騒ぎ出し、一向に仕事をしない騎士たちに、リリは呆れながら様子を伺った。先ほどの『通報』が気になったのだ。
確かに街中で剣戟を繰り広げれば通報されても仕方がない。ましてやここは商業地区。盗賊などに目を光らせている警邏の騎士団からは注意すべき区画である。
──ですが、戦闘開始から騎士団が到着するまで10分と経っていない……
「しかし通報にあった黒髪の美幼女は先ほどの消えた幽霊らしき少女だとして……」
「うむ、悪漢たちは?」
「到着した時には影も形もなかったぞ」
お馬鹿な騎士たちがやっと核心を話し始めた。
「現場を間違えたか?」
「だとすると別の場所で悪漢に襲われている美幼女が?」
「すわ!一大事!」
「然り!俺の美幼女が!」
「何を言う!美幼女は私の助けを待っているのだ」
「何を言うか貴様ら!オレに決まっているだろう」
──こいつら!エルゼ様に報告しますよ!!
妄想を膨らませるロリコン騎士たちに、リリは青筋を立てそうになった。
「まあ待てお前ら。通報場所はベルクルド商会館前だ。ここで間違いない」
「ああ、それに黒髪で赤い瞳の美幼女との話だった」
「そうだな……黒髪で赤い瞳の美幼女などそうそういないか……」
「悪漢たちは赤髪の男を筆頭にした集団とのことだったが……」
騎士たちが語る通報内容にリリは疑問が確信に変わった。
──騎士団到着までの時間の短さ。通報内容の詳しさ……
間違いなく誰かが監視していた。そして、リリが見つかったと同時に、騎士団へ通報に向かったのだろう。
──アンナの手の者でしょうか?
やはりリリの行動は色々と筒抜けらしい。
「しかし、先ほどの黒髪の美幼女……かなりいい線いってたな」
「ああ、えがった」
「幼い容貌だが、黒髪に赤い瞳が大人びた印象でゾクッときたな」
「この前リュシリュー嬢襲撃の折に一緒にいた銀髪美幼女に似てたな」
「お前もそう思ったか?」
リリはどきりとした。髪と瞳を変えればそうそう露呈はしないと踏んだが、この間抜けそうな騎士たちに見抜かれるとは!
「我らの幼女を見る目に間違いはない!」
「然り!あの銀髪美幼女を忘れようもない」
「お近づきになりたい美幼女だった」
「私の調査によればルルーシェ・ルミエンという男爵令嬢だそうですよ」
ルル大モテである。どうやらここにも狭い需要があるようだ。
「リュシリュー嬢も絶世の美少女なんだが……」
「ああ、既に薹が立っているからな」
ビシッ!
騎士たちの暴言にリリのこめかみに青筋が入る。しかし、そんなリリの存在に気が付かない騎士たちはルル談義を継続した。
「それに比べてあの輝く銀髪に優しげな水色の瞳……」
「そして小さな体に慎ましい胸元……」
「まさに理想的」
「オレもあの時は鳥肌が立った」
「聞いたか?あの娘はリュシリュー嬢と同い年らしい」
「まことか!?」
「では完全なる合法ロリ!」
「ではあの絶壁は『永遠に0』!?」
「「「何というロマン!!!」」」
『ロリの権化』が現れた!
『ロリコンの救世主』の誕生だ!
『現人幼女神』がご降臨された!
などなど騎士たちが騒めく。そしてリリは遂にキレた。
──こいつらエルゼ様の地獄の特訓行き決定です。
騎士たちの愚にも付かないロリコン談義が始まったので、リリはこの騎士たちをエルゼに報告して地獄へ叩き落とすことを決意した。
──しかし、どうしましょうか?
騎士たちはもはや用済み。こいつらはエルゼに地獄送りにしてもらうとして、問題なのは黒幕の正体を探れなかったこと。
──この状況から彼らを追跡する術を私は持っていません。出直しですか……
だがリリにはあまり時間がない。
──エルゼ様の呼び出しの件があります。おそらくもう時間はあまりない……
エルゼは最初から魔術研究者の伝手はあったと思われる。何時でも会える研究者に今引き合わせようとしているのは、おそらく既に大詰めなのだろうとリリは予想している。
「にゃ~」
「え!?」
姿を消して悩んでいるリリの足元から、俄かに猫がひと鳴き。シャノワだった。
「シャノワには私が見えるの?」
「にゃっ!」
二足歩行状態になったシャノワは右前足を挙げて応えた。実際には見えてはいないが感覚的に分かるのだろう。
リリは屈んで黒い子猫と視線を合わせた。
「あなたはどうしてここにいるの?」
「にゃんにゃんにゃ~」
まだ幼い猫妖精であるシャノワは、人の言葉は解せても、喋ることができないないのだ。
シャノワはもどかしそうにグルグルと屈むリリの周りを歩き始めた。何かを伝えようとしているようだ。
「いけません。シャノワが必死になってくれているのに、あまりに可愛くて和みそうです」
「にゃん!」
リリの言葉が分かるシャノワは奥義猫拳をリリにお見舞いするが、まったく痛くない。それどころかシャノワの行為の愛らしさに、リリはますます悶えた。
「シャノワ!ちょーカワイ過ぎです」
シャノワを抱き締めようとリリは手を出したが、シャノワはその手をスルリと躱し、リリから離れて溜息を吐いた。
「何ですか!猫が溜息とか反則級の可愛さです!」
朱に染めた頬を両手で覆って身悶えするリリの姿に、シャノワは呆れ顔になりながらもタッタッと4足で走り、数歩先で立ち止まってチラチラとリリを振り返る。
まるで先導するかのように……
リリははっとした。
「もしかしてシャノワは最初から私に付いて来ていたのですか?」
こくりと頷く黒い子猫。シャノワは猫妖精である。ただの可愛いだけの子猫ではないと、リリは再認識させられた。
「私の代わりに馬車を尾行してくれた?」
頷く黒い猫妖精。
「そこまで私を導いてくれるのですか?」
「にゃっ!」
立ち上がって胸を叩く猫妖精。少しドヤ顔に見えた。
「さすがシャノワです!ちょー可愛いです!ちょー賢いです!」
リリの賛辞に胸を反らして完全ドヤ顔の猫妖精。
そんなに胸を反らしたら……あ、こけた。
自分の所業にも関わらず、転けてびっくり。大きな目を見開いてキョロキョロするシャノワをリリは抱き上げた。
「ん~!この可愛いさを堪能したいところですが、今は黒幕を探るのが先ですね」
「にゃん!」
リリはシャノワを抱き締めたまま、街中を疾駆した。シャノワが前足で指し示す方に向かって……
商業地区は貴族街に隣接している。リリはシャノワの案内で程なくして目的の場所に到着した。
そこは貴族の屋敷の一つ。
「シャノワここで間違いないですか?」
「にゃー!」
建物の陰からシャノワの示す覆面伯爵のものと思われる屋敷を窺った。
「あそこが……」
周囲に先ほどの傭兵たちはいないようだ。特に気を付けるべきは、おそらくリリの『隠形』を見破ったであろう金髪の少年。『隠形』を行使している状態でも油断はできない。
リリは姿を消しながら周りの気配を探る。
人の気配が無いのを確認すると油断なく門の前まで進んだ。
この屋敷の持ち主の誰か?
リリは正門に刻印されている、各貴族に特有の紋章を確認したのだが……
「この紋章は……」
リリの顔が険しくなる。
さすがのリリも全ての貴族の紋章を覚えているわけではない。だが、その門に刻印されていた紋章はリリの記憶にあったもの。
「ではこの屋敷は……」
見たことのある紋章……
この紋章の持ち主は……
魂魄置換の首謀者は……
「コラーディン伯爵……」
マリーの父であった。
リリは傭兵相手でも困りません。だけど友達の親が黒幕でした……
~~~~~後書きコント~~~~~
エルゼ「『アンナストラッシュ』が嫌なら、第二王子妃を目指しましょう!」
ルル「なんでそこで嫁の話!!!」
エルゼ「なんだかルルちゃんて意外と人気あるから、さっさと息子と結婚させようと思って」
アンナ「本当に人気ありますね……変なのばかりに」
ルル「ぐぬぬぬぬ!否定できない」
アンナ「『ロリの権化』w『現人幼女神』w『ロリコンの救世主』w『永遠に0』www」
ルル「うわぁぁぁん!」
──逃げてくれるなら、私としては助かります。
殺さずに無力化することが現在では難しい。自分の手を汚す覚悟はあるが、だからと言って進んで他人に危害を加えたいわけではない。
リリは安堵にほっと溜息をついた。
その時、俄かにガチャガチャと騒がしい音を立てて何かが近づいてくるのがリリにも分かった。おそらく警邏の騎士団だろう。
──先ほどの少年の警告はこれですか。彼は何か危険や魔術などを察知する能力を持っているようですね。
彼は屋敷内から覗くリリに気がつき、『隠形』をも見破った。そして今度は騎士団が近づいて来ていることまでも察知した。リリの魔術を破った茶髪の男の魔術構文破壊といい、この傭兵団は異能を備えた者たちで構成されているのかもしれない。
──そうなると彼らを尾行しても少年に気取られてしまうのですね。
困ったとリリは素直に思った。せっかくの手掛かりが失われてしまったのだ。
「通報のあった現場はここか?」
「美幼女が悪漢たちに襲われているとか?」
──通報?
「どこだ!どこに美幼女がいる!」
「探せ!早く美幼女を救出するのだ!」
何か分からないが、警邏の騎士たちは異様な雰囲気を出している。
「ん?君か?通報にあった美幼女は」
「おお!黒髪赤目の美幼女キター!」
「す、すげぇクオリティだ……」
リリはこの騎士たちに不穏な気配を感じたことと、正直に言って少し面倒になって『隠形』を発動して逃げ出すことにした。
「うお!き、消えた!?」
「ま、ま、ま、まさか……ゆ、ゆ、幽霊?」
「きゃー」
「いやぁ!」
「こわーい!」
野太可愛い悲鳴を上げる騎士たち。
「やめろよ。俺そーいうの苦手なんだから」
「物理で対応できないのはちょっと……」
因みにこの世界にアンデットは存在しません。オール物理対応可能なアンナに優しい世界です。なので、この世界の幽霊に対する感覚は日本と変わらず、幽霊はいると言えばいるし、いないと言えばいないのです。
やいのやいのと幽霊騒動で騒ぎ出し、一向に仕事をしない騎士たちに、リリは呆れながら様子を伺った。先ほどの『通報』が気になったのだ。
確かに街中で剣戟を繰り広げれば通報されても仕方がない。ましてやここは商業地区。盗賊などに目を光らせている警邏の騎士団からは注意すべき区画である。
──ですが、戦闘開始から騎士団が到着するまで10分と経っていない……
「しかし通報にあった黒髪の美幼女は先ほどの消えた幽霊らしき少女だとして……」
「うむ、悪漢たちは?」
「到着した時には影も形もなかったぞ」
お馬鹿な騎士たちがやっと核心を話し始めた。
「現場を間違えたか?」
「だとすると別の場所で悪漢に襲われている美幼女が?」
「すわ!一大事!」
「然り!俺の美幼女が!」
「何を言う!美幼女は私の助けを待っているのだ」
「何を言うか貴様ら!オレに決まっているだろう」
──こいつら!エルゼ様に報告しますよ!!
妄想を膨らませるロリコン騎士たちに、リリは青筋を立てそうになった。
「まあ待てお前ら。通報場所はベルクルド商会館前だ。ここで間違いない」
「ああ、それに黒髪で赤い瞳の美幼女との話だった」
「そうだな……黒髪で赤い瞳の美幼女などそうそういないか……」
「悪漢たちは赤髪の男を筆頭にした集団とのことだったが……」
騎士たちが語る通報内容にリリは疑問が確信に変わった。
──騎士団到着までの時間の短さ。通報内容の詳しさ……
間違いなく誰かが監視していた。そして、リリが見つかったと同時に、騎士団へ通報に向かったのだろう。
──アンナの手の者でしょうか?
やはりリリの行動は色々と筒抜けらしい。
「しかし、先ほどの黒髪の美幼女……かなりいい線いってたな」
「ああ、えがった」
「幼い容貌だが、黒髪に赤い瞳が大人びた印象でゾクッときたな」
「この前リュシリュー嬢襲撃の折に一緒にいた銀髪美幼女に似てたな」
「お前もそう思ったか?」
リリはどきりとした。髪と瞳を変えればそうそう露呈はしないと踏んだが、この間抜けそうな騎士たちに見抜かれるとは!
「我らの幼女を見る目に間違いはない!」
「然り!あの銀髪美幼女を忘れようもない」
「お近づきになりたい美幼女だった」
「私の調査によればルルーシェ・ルミエンという男爵令嬢だそうですよ」
ルル大モテである。どうやらここにも狭い需要があるようだ。
「リュシリュー嬢も絶世の美少女なんだが……」
「ああ、既に薹が立っているからな」
ビシッ!
騎士たちの暴言にリリのこめかみに青筋が入る。しかし、そんなリリの存在に気が付かない騎士たちはルル談義を継続した。
「それに比べてあの輝く銀髪に優しげな水色の瞳……」
「そして小さな体に慎ましい胸元……」
「まさに理想的」
「オレもあの時は鳥肌が立った」
「聞いたか?あの娘はリュシリュー嬢と同い年らしい」
「まことか!?」
「では完全なる合法ロリ!」
「ではあの絶壁は『永遠に0』!?」
「「「何というロマン!!!」」」
『ロリの権化』が現れた!
『ロリコンの救世主』の誕生だ!
『現人幼女神』がご降臨された!
などなど騎士たちが騒めく。そしてリリは遂にキレた。
──こいつらエルゼ様の地獄の特訓行き決定です。
騎士たちの愚にも付かないロリコン談義が始まったので、リリはこの騎士たちをエルゼに報告して地獄へ叩き落とすことを決意した。
──しかし、どうしましょうか?
騎士たちはもはや用済み。こいつらはエルゼに地獄送りにしてもらうとして、問題なのは黒幕の正体を探れなかったこと。
──この状況から彼らを追跡する術を私は持っていません。出直しですか……
だがリリにはあまり時間がない。
──エルゼ様の呼び出しの件があります。おそらくもう時間はあまりない……
エルゼは最初から魔術研究者の伝手はあったと思われる。何時でも会える研究者に今引き合わせようとしているのは、おそらく既に大詰めなのだろうとリリは予想している。
「にゃ~」
「え!?」
姿を消して悩んでいるリリの足元から、俄かに猫がひと鳴き。シャノワだった。
「シャノワには私が見えるの?」
「にゃっ!」
二足歩行状態になったシャノワは右前足を挙げて応えた。実際には見えてはいないが感覚的に分かるのだろう。
リリは屈んで黒い子猫と視線を合わせた。
「あなたはどうしてここにいるの?」
「にゃんにゃんにゃ~」
まだ幼い猫妖精であるシャノワは、人の言葉は解せても、喋ることができないないのだ。
シャノワはもどかしそうにグルグルと屈むリリの周りを歩き始めた。何かを伝えようとしているようだ。
「いけません。シャノワが必死になってくれているのに、あまりに可愛くて和みそうです」
「にゃん!」
リリの言葉が分かるシャノワは奥義猫拳をリリにお見舞いするが、まったく痛くない。それどころかシャノワの行為の愛らしさに、リリはますます悶えた。
「シャノワ!ちょーカワイ過ぎです」
シャノワを抱き締めようとリリは手を出したが、シャノワはその手をスルリと躱し、リリから離れて溜息を吐いた。
「何ですか!猫が溜息とか反則級の可愛さです!」
朱に染めた頬を両手で覆って身悶えするリリの姿に、シャノワは呆れ顔になりながらもタッタッと4足で走り、数歩先で立ち止まってチラチラとリリを振り返る。
まるで先導するかのように……
リリははっとした。
「もしかしてシャノワは最初から私に付いて来ていたのですか?」
こくりと頷く黒い子猫。シャノワは猫妖精である。ただの可愛いだけの子猫ではないと、リリは再認識させられた。
「私の代わりに馬車を尾行してくれた?」
頷く黒い猫妖精。
「そこまで私を導いてくれるのですか?」
「にゃっ!」
立ち上がって胸を叩く猫妖精。少しドヤ顔に見えた。
「さすがシャノワです!ちょー可愛いです!ちょー賢いです!」
リリの賛辞に胸を反らして完全ドヤ顔の猫妖精。
そんなに胸を反らしたら……あ、こけた。
自分の所業にも関わらず、転けてびっくり。大きな目を見開いてキョロキョロするシャノワをリリは抱き上げた。
「ん~!この可愛いさを堪能したいところですが、今は黒幕を探るのが先ですね」
「にゃん!」
リリはシャノワを抱き締めたまま、街中を疾駆した。シャノワが前足で指し示す方に向かって……
商業地区は貴族街に隣接している。リリはシャノワの案内で程なくして目的の場所に到着した。
そこは貴族の屋敷の一つ。
「シャノワここで間違いないですか?」
「にゃー!」
建物の陰からシャノワの示す覆面伯爵のものと思われる屋敷を窺った。
「あそこが……」
周囲に先ほどの傭兵たちはいないようだ。特に気を付けるべきは、おそらくリリの『隠形』を見破ったであろう金髪の少年。『隠形』を行使している状態でも油断はできない。
リリは姿を消しながら周りの気配を探る。
人の気配が無いのを確認すると油断なく門の前まで進んだ。
この屋敷の持ち主の誰か?
リリは正門に刻印されている、各貴族に特有の紋章を確認したのだが……
「この紋章は……」
リリの顔が険しくなる。
さすがのリリも全ての貴族の紋章を覚えているわけではない。だが、その門に刻印されていた紋章はリリの記憶にあったもの。
「ではこの屋敷は……」
見たことのある紋章……
この紋章の持ち主は……
魂魄置換の首謀者は……
「コラーディン伯爵……」
マリーの父であった。
リリは傭兵相手でも困りません。だけど友達の親が黒幕でした……
~~~~~後書きコント~~~~~
エルゼ「『アンナストラッシュ』が嫌なら、第二王子妃を目指しましょう!」
ルル「なんでそこで嫁の話!!!」
エルゼ「なんだかルルちゃんて意外と人気あるから、さっさと息子と結婚させようと思って」
アンナ「本当に人気ありますね……変なのばかりに」
ルル「ぐぬぬぬぬ!否定できない」
アンナ「『ロリの権化』w『現人幼女神』w『ロリコンの救世主』w『永遠に0』www」
ルル「うわぁぁぁん!」
0
お気に入りに追加
160
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢アンジェリカの最後の悪あがき
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【追放決定の悪役令嬢に転生したので、最後に悪あがきをしてみよう】
乙女ゲームのシナリオライターとして活躍していた私。ハードワークで意識を失い、次に目覚めた場所は自分のシナリオの乙女ゲームの世界の中。しかも悪役令嬢アンジェリカ・デーゼナーとして断罪されている真っ最中だった。そして下された罰は爵位を取られ、へき地への追放。けれど、ここは私の書き上げたシナリオのゲーム世界。なので作者として、最後の悪あがきをしてみることにした――。
※他サイトでも投稿中
【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい
三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。
そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません
れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。
「…私、間違ってませんわね」
曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話
…だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている…
5/13
ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます
5/22
修正完了しました。明日から通常更新に戻ります
9/21
完結しました
また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる