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第31話 侯爵令嬢は男爵令嬢の秘密を聞く
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「それで最後はライル様のことね」
アンナが落ちついたところで、リリは最後の問題について切り出した。
2人の背後に立つアンナは先ほどの狂瀾ぶりが嘘のようにいつもの感情を見せない表情に戻っていた。
ルルはそんなアンナをチラチラと警戒しながら、リリの質問にため息がでそうだった。
「どうしても話さないといけませんか?」
「どうしても話せない?」
それには答えずルルはじっとリリを見詰めた。
「今日ライル様たちが接触してきたわ。このまま誤魔化し続けることはきないでしょ?」
「殿下たちに魂魄置換のことを話すのは?」
「できれば最後の手段にしたいわ」
「どうしてですか?殿下たちなら力になって……」
「私との婚約を破棄する陰謀の最中でしょ?それにやはりライル様たちには話すわけにはいかないの」
「どうしてですか?殿下たちはとても良い人たちだと思います。きっと協力して……」
リリはルルの言葉を手で制した。
リリはルルがあの側近3人たちとだいぶん気心が知れたのだろうと思った。人当たりのよいライルとお人好しのあの3人だ。今のルルを見れば打ち解けていてもおかしくはない。
リリのこの予想はあたっていた。
ルルはライルとその側近3人に強い仲間意識を持っていた。
無理もない。学園に入り友人がいない孤立した状態で、同じ企みを遂行している仲だ。自然と仲良くなったのだろう。
「ルル……そうねライル様たちはとても気持ちのよい方がたよね。でも……」
リリはライルやあの3人が貴族としては問題でも人としてはお人好しの好感の持てる人物だとは思っている。正直に言えば彼ら3人の能力だけの野心の強い兄弟たちよりも人として彼らは信用できるだろう。だからライルは彼らを側近にしたのだ。
だが、今回の件ではそれは関係ないのだ。
「私もね最初は周囲に露見してもよいかと思っていたの。だけどルルも魂魄置換の話を聞いたでしょ?」
リリはかみ砕いてルルに説明を始めた。
先の襲撃、偶然も否定できないがタイミング的に今回の件に関わるだろうこと。
エルゼやアンナの言うように、この魂魄置換に大きな陰謀の可能性があること。
魂魄置換の話をして協力を仰いだら、その者達にも累が及ぶ可能性があること。
禁忌術を使った王家を狙う陰謀ならば犯人は高位貴族である可能性が高いこと。
そして、高位貴族が犯人なら側近達の親族の中に犯人がいる可能性もあること。
「だからライル様たちに話すわけにはいかないの。ライル様だけでもだめよ。ライル様とあの側近たちはとても強い信頼関係があるわ。ライル様に秘密を共有させてあの3人に対する負い目は負わせたくないわ」
「……はい」
ルルもライルたちがとても仲のよい友人関係であることは分かっている。今までその輪の中にいたのだ。だから、その関係性を壊したくはない。
「ルル。ライル様の婚約破棄が擬態なのは予想がついているの。全部を無理に話せとは言わない。ルルの話せる範囲でお願いできないかしら?」
ルルは目を閉じてじっと考え出した。リリはそんなルルをじっと見詰め、特に話を促すこともなく沈黙を守った。
誰もが言葉を発せず、ただ言葉のない空間がこの場を支配し、重い空気が時間とともに流れていく。
「……私には前世があるんです」
やがて、ルルは目を開けるとその重い空気を払う一言を発した。
リリは微動だにしない。ただ、ルルの話すのにまかせた。
「そしてこの世界はその前世でした乙女ゲームの世界にそっくりなんです」
「この世界?乙女ゲーム?」
リリは聞き慣れない単語に小首を傾げたが、ルルは構わず話し続ける。
「はい……私の前世はこの世界の住人ではありません」
リリとアンナは軽く頷いた。魔天の1人ギベン・デルネラも別世界からの転生者であり、この世界には一定数の転生者の存在は認知されていた。
「……それで、この世界は私の前世の世界にあった乙女ゲーム『白銀と黒鋼の譚詩曲にそっくりなのです!」
リリはルルの衝撃の激白にも怯まない。リリは全てを受け入れる強さがあるから……
~~~~~後書きコント~~~~~
ルル「あれぇ~?2人ともあまり驚かないんですねぇ?」
アンナ「今さら転生者の1人や2人……」
ルル「え!?私以外にも転生者が?」
アンナ「貴女ものをホントに知らないのですね」
ルル「ぐっ!すみません」
アンナ「この世界には昔から転生者が何人も出現しているんですよ。その知識が色々なところで活きています。魔術でもギベン・デルネラが大きな貢献をしています」
ルル「あ!やっぱりギベン・デルネラって転生者だったんだぁ。ゲームでは『七魔天』なのに、ここでは『八魔天』だったからおかしいと思ったんですぅ」
アンナ「魔天もゲーム設定だったのですか……」
ルル「そっか~私だけじゃなかったんだぁ」
アンナ「ええ、それに私も……ふっふっふっふっふっ」
ルル「え!?」
アンナが落ちついたところで、リリは最後の問題について切り出した。
2人の背後に立つアンナは先ほどの狂瀾ぶりが嘘のようにいつもの感情を見せない表情に戻っていた。
ルルはそんなアンナをチラチラと警戒しながら、リリの質問にため息がでそうだった。
「どうしても話さないといけませんか?」
「どうしても話せない?」
それには答えずルルはじっとリリを見詰めた。
「今日ライル様たちが接触してきたわ。このまま誤魔化し続けることはきないでしょ?」
「殿下たちに魂魄置換のことを話すのは?」
「できれば最後の手段にしたいわ」
「どうしてですか?殿下たちなら力になって……」
「私との婚約を破棄する陰謀の最中でしょ?それにやはりライル様たちには話すわけにはいかないの」
「どうしてですか?殿下たちはとても良い人たちだと思います。きっと協力して……」
リリはルルの言葉を手で制した。
リリはルルがあの側近3人たちとだいぶん気心が知れたのだろうと思った。人当たりのよいライルとお人好しのあの3人だ。今のルルを見れば打ち解けていてもおかしくはない。
リリのこの予想はあたっていた。
ルルはライルとその側近3人に強い仲間意識を持っていた。
無理もない。学園に入り友人がいない孤立した状態で、同じ企みを遂行している仲だ。自然と仲良くなったのだろう。
「ルル……そうねライル様たちはとても気持ちのよい方がたよね。でも……」
リリはライルやあの3人が貴族としては問題でも人としてはお人好しの好感の持てる人物だとは思っている。正直に言えば彼ら3人の能力だけの野心の強い兄弟たちよりも人として彼らは信用できるだろう。だからライルは彼らを側近にしたのだ。
だが、今回の件ではそれは関係ないのだ。
「私もね最初は周囲に露見してもよいかと思っていたの。だけどルルも魂魄置換の話を聞いたでしょ?」
リリはかみ砕いてルルに説明を始めた。
先の襲撃、偶然も否定できないがタイミング的に今回の件に関わるだろうこと。
エルゼやアンナの言うように、この魂魄置換に大きな陰謀の可能性があること。
魂魄置換の話をして協力を仰いだら、その者達にも累が及ぶ可能性があること。
禁忌術を使った王家を狙う陰謀ならば犯人は高位貴族である可能性が高いこと。
そして、高位貴族が犯人なら側近達の親族の中に犯人がいる可能性もあること。
「だからライル様たちに話すわけにはいかないの。ライル様だけでもだめよ。ライル様とあの側近たちはとても強い信頼関係があるわ。ライル様に秘密を共有させてあの3人に対する負い目は負わせたくないわ」
「……はい」
ルルもライルたちがとても仲のよい友人関係であることは分かっている。今までその輪の中にいたのだ。だから、その関係性を壊したくはない。
「ルル。ライル様の婚約破棄が擬態なのは予想がついているの。全部を無理に話せとは言わない。ルルの話せる範囲でお願いできないかしら?」
ルルは目を閉じてじっと考え出した。リリはそんなルルをじっと見詰め、特に話を促すこともなく沈黙を守った。
誰もが言葉を発せず、ただ言葉のない空間がこの場を支配し、重い空気が時間とともに流れていく。
「……私には前世があるんです」
やがて、ルルは目を開けるとその重い空気を払う一言を発した。
リリは微動だにしない。ただ、ルルの話すのにまかせた。
「そしてこの世界はその前世でした乙女ゲームの世界にそっくりなんです」
「この世界?乙女ゲーム?」
リリは聞き慣れない単語に小首を傾げたが、ルルは構わず話し続ける。
「はい……私の前世はこの世界の住人ではありません」
リリとアンナは軽く頷いた。魔天の1人ギベン・デルネラも別世界からの転生者であり、この世界には一定数の転生者の存在は認知されていた。
「……それで、この世界は私の前世の世界にあった乙女ゲーム『白銀と黒鋼の譚詩曲にそっくりなのです!」
リリはルルの衝撃の激白にも怯まない。リリは全てを受け入れる強さがあるから……
~~~~~後書きコント~~~~~
ルル「あれぇ~?2人ともあまり驚かないんですねぇ?」
アンナ「今さら転生者の1人や2人……」
ルル「え!?私以外にも転生者が?」
アンナ「貴女ものをホントに知らないのですね」
ルル「ぐっ!すみません」
アンナ「この世界には昔から転生者が何人も出現しているんですよ。その知識が色々なところで活きています。魔術でもギベン・デルネラが大きな貢献をしています」
ルル「あ!やっぱりギベン・デルネラって転生者だったんだぁ。ゲームでは『七魔天』なのに、ここでは『八魔天』だったからおかしいと思ったんですぅ」
アンナ「魔天もゲーム設定だったのですか……」
ルル「そっか~私だけじゃなかったんだぁ」
アンナ「ええ、それに私も……ふっふっふっふっふっ」
ルル「え!?」
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