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閑話⑨ そのころ男爵令嬢は《遭逢》
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ルルとアンナは黙々と歩き、正面に待機していた馬車に乗ると『橄欖宮』を後にした。
馬車は2人を乗せてゆっくりと走り、そのまま城門をでると、やっとルルは気が休まる思いがした。エルゼは気安いとはいえ自国の王妃であるし、どこか全てを見通していそうで思っていた以上に緊張していたようだ。
心なしか無表情のはずのアンナの顔にも安堵の色が見えたような気がした。
「この後は学園です」
「リリ様と合流するんですよね?」
「はい。リリ様を連れ屋敷にいったん戻りましょう」
ルルはコクリと頷いた。
馬車の中が沈黙に包まれると外の音が煩く聞こえてくる。
街の喧騒、馬の息遣い、車輪の音と時折石を弾く音。
ルルにとって馬車に乗ることは初めての経験だった。
王城へ向かう時はただただ緊張して何かを感じることはなかったが、少し気持ちに余裕ができたのかルルは車窓から外を何となしに眺めた。
──これがいつもリリ様が見ている風景……
今のルルの体はリリーエン・リュシリュー。
今のルルはリリと同じ立場で、同じ服装。
そしていま見ている風景も同じ。
──だけどやっぱり私はリリ様にはなれない。
当たり前のことだ。
同じにはなれない。
──私はルルーシェ・ルミエンなんだ……
ルルは改めて自分の居場所はルミエン家なのだと実感した。
これは喜びと嬉しさのある実感だった。
流れて行く風景を見ながらルルは少しだけ心が軽くなった。
やがて馬車は学園へ到着すると門衛との遣り取りの後、校内の馬車乗り場へと乗り付けた。
ルルはアンナの手をかりて馬車から降り立つ。
「馬車で学園に来るのは、何だか新鮮ですぅ」
「もう学園ですので、誰に聞かれるか分かりません。あまり口を開かないように」
アンナに釘を刺されたルルは慌てて両手で口を押える。その仕草がダメなのだとアンナは思ったが、直ぐに改善できるわけでもなし、アンナはさてどうしたものかと頭を抱えた。
アンナとルルはリリを探すべく校舎へと向かおうとしたが、校舎の方から1人の女生徒がこちらの方に向かって歩いてくるのが見えて足を止めた。
緩やかな波を打つキラキラと輝きそうな白銀の長い髪を一つに纏め、透明度の高いパライバトルマリンを彷彿とさせる水色の瞳は穏やかな春の日の湖の様に美しい。身長は同世代の女性よりも少し低く、顔立ちは幼さを残しているが整っており愛らしい。
その微笑みは彼女の性質を表すかのように穏やかで、歩く姿は舞う様でいて白銀の髪とも相まって白百合のようだ。
彼女は2人の前に立つと見事なカーテシーをとる。その美麗な所作にルルは見とれてしまった。
──こ、これ私!?
ルルは愕然とした。
目の前の少女は間違いなく元の自分の姿であった。だが、まるで別人のような振る舞い。やはり、姿は自分でも中身が違うのだと痛感させられた。
そんな驚くルルは目の前の少女の次の言葉に凍りついてしまうことになる。
「ご機嫌よう。アンナ・ギムレット様」
──アンナ・ギムレット!?
ルルはぎょっとした。
──それじゃアンナさんはあのギムレット子爵令嬢!?
ルルにとっては驚愕の事実。
──そんな。それじゃアンナさんは……
~~~~~後書きコント~~~~~
ルル「見て見てアンナさん!あれ私です私!」
アンナ「中身はリリ様ですけどね」
ルル「えへへへへ……こうして見ると私ってやっぱり美少女ですね」
アンナ「中身がリリ様だから、キリッとして当社比1.5倍くらいビジュアルが増してるんじゃないんですか?」
ルル「ふふふ!アンナさんも今可愛いって思ったんだぁ」
アンナ「可愛いというより可愛らしい?つるペタ合法ロリだから変態中年には需要がありそうですね」
ルル「ぐあ!それは禁句です!」
アンナ「それよりルル。思わせぶりなラストは何です?」
ルル「ネタバレになるからとーぜん秘密ですす」
アンナ「つまり乙女ゲーム絡みなわけですね」
ルル「暫くは伏線のままですぅ」
馬車は2人を乗せてゆっくりと走り、そのまま城門をでると、やっとルルは気が休まる思いがした。エルゼは気安いとはいえ自国の王妃であるし、どこか全てを見通していそうで思っていた以上に緊張していたようだ。
心なしか無表情のはずのアンナの顔にも安堵の色が見えたような気がした。
「この後は学園です」
「リリ様と合流するんですよね?」
「はい。リリ様を連れ屋敷にいったん戻りましょう」
ルルはコクリと頷いた。
馬車の中が沈黙に包まれると外の音が煩く聞こえてくる。
街の喧騒、馬の息遣い、車輪の音と時折石を弾く音。
ルルにとって馬車に乗ることは初めての経験だった。
王城へ向かう時はただただ緊張して何かを感じることはなかったが、少し気持ちに余裕ができたのかルルは車窓から外を何となしに眺めた。
──これがいつもリリ様が見ている風景……
今のルルの体はリリーエン・リュシリュー。
今のルルはリリと同じ立場で、同じ服装。
そしていま見ている風景も同じ。
──だけどやっぱり私はリリ様にはなれない。
当たり前のことだ。
同じにはなれない。
──私はルルーシェ・ルミエンなんだ……
ルルは改めて自分の居場所はルミエン家なのだと実感した。
これは喜びと嬉しさのある実感だった。
流れて行く風景を見ながらルルは少しだけ心が軽くなった。
やがて馬車は学園へ到着すると門衛との遣り取りの後、校内の馬車乗り場へと乗り付けた。
ルルはアンナの手をかりて馬車から降り立つ。
「馬車で学園に来るのは、何だか新鮮ですぅ」
「もう学園ですので、誰に聞かれるか分かりません。あまり口を開かないように」
アンナに釘を刺されたルルは慌てて両手で口を押える。その仕草がダメなのだとアンナは思ったが、直ぐに改善できるわけでもなし、アンナはさてどうしたものかと頭を抱えた。
アンナとルルはリリを探すべく校舎へと向かおうとしたが、校舎の方から1人の女生徒がこちらの方に向かって歩いてくるのが見えて足を止めた。
緩やかな波を打つキラキラと輝きそうな白銀の長い髪を一つに纏め、透明度の高いパライバトルマリンを彷彿とさせる水色の瞳は穏やかな春の日の湖の様に美しい。身長は同世代の女性よりも少し低く、顔立ちは幼さを残しているが整っており愛らしい。
その微笑みは彼女の性質を表すかのように穏やかで、歩く姿は舞う様でいて白銀の髪とも相まって白百合のようだ。
彼女は2人の前に立つと見事なカーテシーをとる。その美麗な所作にルルは見とれてしまった。
──こ、これ私!?
ルルは愕然とした。
目の前の少女は間違いなく元の自分の姿であった。だが、まるで別人のような振る舞い。やはり、姿は自分でも中身が違うのだと痛感させられた。
そんな驚くルルは目の前の少女の次の言葉に凍りついてしまうことになる。
「ご機嫌よう。アンナ・ギムレット様」
──アンナ・ギムレット!?
ルルはぎょっとした。
──それじゃアンナさんはあのギムレット子爵令嬢!?
ルルにとっては驚愕の事実。
──そんな。それじゃアンナさんは……
~~~~~後書きコント~~~~~
ルル「見て見てアンナさん!あれ私です私!」
アンナ「中身はリリ様ですけどね」
ルル「えへへへへ……こうして見ると私ってやっぱり美少女ですね」
アンナ「中身がリリ様だから、キリッとして当社比1.5倍くらいビジュアルが増してるんじゃないんですか?」
ルル「ふふふ!アンナさんも今可愛いって思ったんだぁ」
アンナ「可愛いというより可愛らしい?つるペタ合法ロリだから変態中年には需要がありそうですね」
ルル「ぐあ!それは禁句です!」
アンナ「それよりルル。思わせぶりなラストは何です?」
ルル「ネタバレになるからとーぜん秘密ですす」
アンナ「つまり乙女ゲーム絡みなわけですね」
ルル「暫くは伏線のままですぅ」
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