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龍王と魔物と冒険者

102話目

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(コトア、話がしたい)


暗闇のなかで我が呼びかけると頭の中にあの子の声でコトアが反応を示した。


【ふぁ~……。いったいどうしたというのよ?そんな辛気臭い声を出して。誰かに負けたの?なら特訓まだ半分くらいだし私様はいつでも再開してあげてもいいのだけれど。】


(……その)


【言わなくていい。こっちで把握する】


何らかの方法で俺の記憶を辿っているのだろう。彼女は数秒要した後に言葉を発した


【……一つ言わせてもらえるならこれは××のせいじゃない。気にしても良いけど、気に病むべきじゃない。】


(お前神様なんだろう。これはどうすれば解決出来る)


これからもあんな事がまた起こる。魔導師の姫が考えて分からないことを俺が考えても解決出来るわけがない。ならば神に縋るしかないだろう。


【私様たちは××が考えているような神ではないのよ。全知ではないし、全能であっても万能ではない。
前もって断っておくけど魔力は使う。だけど瘴気は発生させないなんて都合の良い答えはないのよ。
お店で物を買う時にお金は払わないなんて言い分は通らないでしょう?お客様はだけどね。
だがそんな私様で良ければ簡単な解決策を3つ教えてあげられるのよ】


(本当か?)


その反応に少しだけコトアは苦笑いをしたようだ。まるで初めからこの答えは絶対に俺が望んだものではないことを知っているかのように。


【一つ目。魔力を誰も使用しない。瘴気は体外に放出された魔力系統によるものが原因だから。】


(つまりここまで社会に浸透した魔法を使わないようにさせるってことか……)


【魔力依存からの脱却。少なくとも今日明日じゃ無理な話なのよ。それに根本からの新たな社会構築なんてどれだけの労力を要するのかしら。
二つ目。今この世界に存在する生命の数を減らす。
分かっている。そんな顔するな。
実はこの世界には魔力を循環させるシステムとして"器"が組み込まれている。"玉の器"か或いは"聖杯"なんて呼ばれているな。"聖女"や"剣聖"っていうシステムもその流用。
話が逸れた。器には龍脈を通して世界中の瘴気が殆ど集まるようになっている。その瘴気を浄化したのが魔素だ。そしてその魔素が魔力に影響を与えている。
簡単に言えばこんな風に世界は廻っているわけだから器の許容範囲まで数を減らせば解決するよ。そうだね。今の1/10まで数を減らせば解決する。
ついでに"審判"の奴も出てこれなくなるからな。一石二鳥だ】


審判。たしかマトラって神様だっけ。カムイも言ってたな。未来では審判を越えれなかったって。つまり、その神様は生命の数が一定数を上回ったら出現するレイドボスなのだろう。その点から見ても、数を減らすのは妙案だ。


(9/10も殺す案なんて一考の価値もねえよ。どこぞのインフィニティストーン持った宇宙人でも半分だってのに)


【最後の三つ目。限界を迎えた器をその都度破壊して別の器に取り替える。器の中に既に入っている分の魔力は世界から消失してしまうが、デメリットはその程度】


(……いいじゃん。それ)


【……期待に添えられたなら良かったのよ。じゃあ部屋に閉じこもってないで子供らしく外で遊んで来なさい】


(おう!)


気を取り直して顔を上げると、丁度花ちゃんが部屋に入ってきた所だった。


【花ちゃん。どうしたの?】


「う、うん。なんかアカシャ様元気ないって聞いて、だから、えと。顔を見にきた……わけなんだけど、その。」


《我が主はアーカーシャ様とデートを希望しています》


「玉!?」


焦ったい花ちゃんに代わって玉が答えてくれた。流石魔導具性急だ。


【いいじゃん。行こう】


《よっしゃあああ!!!》


「故障した!?」


こうして我は花ちゃんと外の世界に踊り出した。後、牛の人形のサキも我にくっついて来ていた。





ーーー○×△◇ーーー


今日は魔導学院の記念日でお休みの日です。ところで休みの日はみなさんどんな風にして過ごすのが好きですか?私は自分で言うのも何ですけど、結構な本の虫です。だからこうした予定のない休みの日は魔導書をのんびり読むのが楽しみとなって……コンコンっと誰かが扉を叩く音がした。はて、誰でしょうか?


「イルイ。私お金が有り余っている」


開口一番に黒いローブを身に纏うエルフ黒水歪様が顔を合わせるなりそんな事を言ってきた。意味がわからず隣に立っていた青風糸様の方に救いを求めました。青風様も顔を抑えていました


「……はい」


「間違えた。お金ならある。奢るし良い店もいっぱい知ってる。だから私とでぇとしよう。風はただの見守りだから、実質2人っきり」


「準備、してきますね」


こうして私は黒水様とでぇとをすることになりました。
そして期せずして、あの方と再会することになったのです。

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