41 / 141
龍王と狐の来訪者
41話目 幼魚と逆罰
しおりを挟む呪霊を食べると吐瀉物を処理した雑巾を丸呑みしている様な味。と、例えたどこぞの呪術師がいました。
ウッキー!ところでこれに限らず、口に合わない食べ物を口にしたときに卑下する喩えとして、クソみたいな味と言ったりする人もいるわけだが、一つ気付いたことがある。クソ食った経験あるんか?ごめん。めちゃくちゃ下品なので、デトックソと表現させてもらう。デトックスじゃない、デトックソ。
ともかくデトックソを恐らく人類で主食としてる奴らはそうはいない、と思ったが、溜まったデトックソって大地に還して作物を育ててるんじゃないか?だとするなら、我々ってデトックスを間接的に口にしてることにならないか?つまり味の感想にデトックソを用いるのは何らおかしくはないのだよ!な、なんだってー!
うん?こ!れはなんの話をしているのかって?
いや、要するに夢乃さんの料理って用いられた食材が死んでねって話なのだ。料理って食材を活かすんだよな。完膚なきまでに死んでるんだが?食材だって生きてるんだぞ。こんなん事件で立件されちまうよ!何罪ですか?食罪です。夢乃さん、お前もう(料理という海原を駆ける意味で)船降りろ。
「UGGooo!」
口に流し込むデザートが舌の上で化学反応でも起こしているのか、灼熱でグツグツと煮え沸っている。ずっしりとした劇物の様な味わい。
デザートを全て喉に落とすまでにかかったのは、時間にしてそれは数秒足らずのことだろう。
だが胃袋に収まってなお、凄まじい存在感。それは俺にとっては永遠とも思えるほど長く果てしない時間に思えた。まるで本当に時が止まっているみたいだ。ああ、これを忘れていた。全ての食材に感謝を込めて。
「《ご馳走様でした》」
食前と食後に胸元で合掌する。感謝と敬意とマナーを現した所作なのだが、個人的に俺はこの一連の動作が好きだ。食べ方は自由であるにも関わらず、わざわざ食べる所作を重んじ美しく魅せる。日本人は謙虚でマナーが良いというイメージの大部分は、ここから来ているのではないだろうかとさえ思う。
「《ん?》」
んで、空蝉桐壺と桐乃さんのどちらも人形の様に硬直して反応しない。
なんでふ。いきなりの無視ですか?いやいやそういうの俺は良くないと思うけどね。無視は
‥‥‥
‥‥‥‥
‥‥‥‥‥
え、怖い。無視というか、この人たち急に動かなくなったんですけど!!何なの?俺の人生で不思議体験Best10に見事ランクインですよ。
まるで時間が止まったかのように‥‥ピコーン!そうか!分かったぞ!
俺の考えが正しいかどうか確かめるために、スプーンを宙へと無造作に放り投げる。放られたスプーンは案の定一定の距離を動いた後にピタリと静止した
「《最高にハイってやつだ!》」
時間が止まっている訳ではない。スプーンを触った時に感触があったし、呼吸も問題なく出来ている。1秒の間隔を延々と延ばし続けている。俺、というかアーカーシャが凄いな。でもどうしていきなり使えるようになったんだ?
ON.OFFが任意で出来ないなら持て余してしまうのが本音だ。
暫く考えあぐねていると、スプーンが不意に落ちて床で跳ねた。ごちゃごちゃ考えるのもあれだし、まあいいか。
夢乃さんは嬉しそうに空になった土鍋を持って奥に引っ込んでいったし、終わり良ければ全て良し。さて、何かを忘れている気がするが姫の元へ帰ろう。
俺が外へ出ようとすると、空蝉桐壺が尻尾をがしりと掴み引き寄せる
「……ありがとうです。私のために」
空蝉桐壺がまじまじ俺の顔を凝視しながら不意にそんな事を言ってきたので驚いた。随分と素直な感謝だ。子供ってのはこうでなくちゃな。
「《か、勘違いしないでよね!ここに来てから何も食べて無いから、食べただけなんだから!全然アンタの為じゃ無いんだからね!》」
俺の返事に桐壺は気持ち悪そうに俯いて言葉を漏らした。
「気持ち悪い」
シンプルに傷つく反応だった。にしてもこの子もイルイと同じように俺の言葉が理解出来てた。
疑問なのだが俺は何故この子と会話が出来るのだろう。イルイの時もそうだけど、未だ姫とは出来ないし。何か条件でも有るのだろうか。
「まじで気持ち悪い」
なんで2回言った。泣くぞ。ええんか?
俺をあまり怒らせない方がいい。人目も憚らず本気で泣き喚くぞ。
「‥‥まじで体調崩したのです。お腹痛い。出そう」
なにが出るの!!?ちょっと止めて!異性のそんな話、俺聞きたくない!あたふたした俺は取り敢えず、桐壺の背中をさすったが余り効果は無いようだった。
「《ゆ、夢乃さんっ!ヘルプミー!!》
そうこうしている内に、俺の体が赤く輝き始める。なんぞこれ。数秒後映画の場面転換のように唐突に視界が切り替わった
魔法の世界でお馴染みのワープ。今風で云うなら転移というやつだ。感慨深いものがあると思ったが体験すると別段そうでもなかったな。所で毎度余談で申し訳ないんだが転移って犯罪とかで絶対使われると思うんだけど、そこんとこの危機管理どうなってるんだ?
なに?状況を考えろだって?余談しちゃダメなほどの予断を許さない状況なんて中々ないもんよ
ごめん。現実逃避していた。不発弾処理にでも失敗したのだろうか。数時間前の俺の記憶では館の玄関付近はここまで風通しが良くなかったはずだが。床や壁は爆ぜて焼けて焦げているし。周囲には炭化した人型のなにかが転がっており、口元が脂肪でやけにベタつく。
「《いやなかんじ》」
内外の夥しい血の臭いと気配で分かるが、これ数百人規模で死人でてるな‥‥
一夜にしてこれだけの惨劇が簡単に引き起こされる世界か。
夢と希望溢れる異世界というには余りにも優しくないな。今の状況を見て嬉々としてモリタートでも口ずさめる奴がいるなら、きっとそいつは1クラス全員を殺し尽くしたあのイカれたサイコパス教師と同類だろう。
「ゲロロロ~」
触っていた影響だろうか。俺と一緒に飛ばされた桐壺は、俺の足元でマーライオンの如く吐瀉物を撒き散らしている絵面が広がっていたが、とりあえず‥‥‥そっとしておこう
「ソレが貴女の"切り札"
まさかの龍か。だが小さいな」
「見くびらない方がいい。謝るなら今のうちですよ」
状況はなんとなく理解できた。
キセルを口にした目つきの悪い女性、いや肩幅と尻の形で分かるが綺麗な男だな。こんなに綺麗な人が女の子なわけがないんだよなー
そいつが手を勢いよく後ろへ引くと、連動するように桐壺の体も床にぶつけられながら、男の足元へ引きずられる。見え辛いが煙の紐を作り出し桐壺の身体に瞬時に巻きつける芸当。俺じゃなきゃ見逃しちゃうね
「師匠もうちょっと弟子に優しくしてもバチは当たらねえと思うの‥‥ゲロロロ~」
「全く。何をやっていたかとおもえば。まあいいこれで2対2だ」
何勘違いしてやがる。なぜか床で這いつくばっている清正さんも含めてこっちは3人。そっちは体調不良でダウンしかけてる桐壺を除けば実質1人。つまり3対1という状況が成立しているわけですよ
「いけるか、桐壺」
「‥‥‥です」
意味有りげに俺に目線をくれる桐壺。一触即発な空気を破ったのは、俺たちのいる場所より更に奥の部屋の壁を何かがブチ破った音だった
俺と桐壺たちの丁度間に落ちたそれは巨大な青い肉塊であった
あとがき
国のデータ
【軍事国家 バルドラ】
首都:フリューゲル
通称:軍国
政治体制:専制君主制
王族:項・ブリュンヒルデル家
概要:国是として国民皆兵制度を掲げている。西側諸国の民族浄化を発端として、各地で多種族の武装蜂起が起きたり多くの国で内戦が勃発し経済基盤が破壊尽くされ、ほどなく生じた経済恐慌が原因として軍閥の抗争が活発化した際に、項星后が中央から東側にかけて近隣を併呑したことで大陸最大の国家となった。西側諸国より民族融和が進んでいるので多種族国家。
ちなみに軍事国家と云われるだけあり、常備軍である正規兵の数だけでも100万を超え、皆兵制度により集められる予備兵や義勇兵を合わせたらぶっちぎりの総兵力世界1位。総合国力は世界4位。
0
お気に入りに追加
49
あなたにおすすめの小説
チート生産魔法使いによる復讐譚 ~国に散々尽くしてきたのに処分されました。今後は敵対国で存分に腕を振るいます~
クロン
ファンタジー
俺は異世界の一般兵であるリーズという少年に転生した。
だが元々の身体の持ち主の心が生きていたので、俺はずっと彼の視点から世界を見続けることしかできなかった。
リーズは俺の転生特典である生産魔術【クラフター】のチートを持っていて、かつ聖人のような人間だった。
だが……その性格を逆手にとられて、同僚や上司に散々利用された。
あげく罠にはめられて精神が壊れて死んでしまった。
そして身体の所有権が俺に移る。
リーズをはめた者たちは盗んだ手柄で昇進し、そいつらのせいで帝国は暴虐非道で最低な存在となった。
よくも俺と一心同体だったリーズをやってくれたな。
お前たちがリーズを絞って得た繁栄は全部ぶっ壊してやるよ。
お前らが歯牙にもかけないような小国の配下になって、クラフターの力を存分に使わせてもらう!
味方の物資を万全にして、更にドーピングや全兵士にプレートアーマーの配布など……。
絶望的な国力差をチート生産魔術で全てを覆すのだ!
そして俺を利用した奴らに復讐を遂げる!
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜
ワキヤク
ファンタジー
その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。
そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。
創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。
普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。
魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。
まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。
制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。
これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。
前世は最悪だったのに神の世界に行ったら神々全員&転生先の家族から溺愛されて幸せ!?しかも最強➕契約した者、創られた者は過保護すぎ!他者も!?
a.m.
ファンタジー
主人公柳沢 尊(やなぎさわ たける)は最悪な人生だった・・耐えられず心が壊れ自殺してしまう。
気が付くと神の世界にいた。
そして目の前には、多数の神々いて「柳沢尊よ、幸せに出来なくてすまなかった転生の前に前の人生で壊れてしまった心を一緒に治そう」
そうして神々たちとの生活が始まるのだった...
もちろん転生もします
神の逆鱗は、尊を傷つけること。
神「我々の子、愛し子を傷つける者は何であろうと容赦しない!」
神々&転生先の家族から溺愛!
成長速度は遅いです。
じっくり成長させようと思います。
一年一年丁寧に書いていきます。
二年後等とはしません。
今のところ。
前世で味わえなかった幸せを!
家族との思い出を大切に。
現在転生後···· 0歳
1章物語の要点······神々との出会い
1章②物語の要点······家族&神々の愛情
現在1章③物語の要点······?
想像力が9/25日から爆発しまして増えたための変えました。
学校編&冒険編はもう少し進んでから
―――編、―――編―――編まだまだ色んなのを書く予定―――は秘密
処女作なのでお手柔らかにお願いします。文章を書くのが下手なので誤字脱字や比例していたらコメントに書いていただけたらすぐに直しますのでお願いします。(背景などの細かいところはまだ全く書けないのですいません。)主人公以外の目線は、お気に入り100になり次第別に書きますのでそちらの方もよろしくお願いします。(詳細は200)
感想お願いいたします。
❕只今話を繋げ中なためしおりの方は注意❕
目線、詳細は本編の間に入れました
2020年9月毎日投稿予定(何もなければ)
頑張ります
(心の中で読んでくださる皆さんに物語の何か案があれば教えてほしい~~🙏)と思ってしまいました。人物、魔物、物語の流れなど何でも、皆さんの理想に追いつくために!
旧 転生したら最強だったし幸せだった
普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。
かーにゅ
BL
「君は死にました」
「…はい?」
「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」
「…てんぷれ」
「てことで転生させます」
「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」
BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。
婚約していないのに婚約破棄された私のその後
狭山ひびき@バカふり160万部突破
恋愛
「アドリエンヌ・カントルーブ伯爵令嬢! 突然ですまないが、婚約を解消していただきたい! 何故なら俺は……男が好きなんだぁああああああ‼」
ルヴェシウス侯爵家のパーティーで、アドリーヌ・カンブリーヴ伯爵令嬢は、突然別人の名前で婚約破棄を宣言され、とんでもないカミングアウトをされた。
勘違いで婚約破棄を宣言してきたのは、ルヴェシウス侯爵家の嫡男フェヴァン。
そのあと、フェヴァンとルヴェシウス侯爵夫妻から丁重に詫びを受けてその日は家に帰ったものの、どうやら、パーティーでの婚約破棄騒動は瞬く間に社交界の噂になってしまったらしい。
一夜明けて、アドリーヌには「男に負けた伯爵令嬢」というとんでもない異名がくっついていた。
頭を抱えるものの、平平凡凡な伯爵家の次女に良縁が来るはずもなく……。
このままだったら嫁かず後家か修道女か、はたまた年の離れた男寡の後妻に収まるのが関の山だろうと諦めていたので、噂が鎮まるまで領地でのんびりと暮らそうかと荷物をまとめていたら、数日後、婚約破棄宣言をしてくれた元凶フェヴァンがやった来た。
そして「結婚してください」とプロポーズ。どうやら彼は、アドリーヌにおかしな噂が経ってしまったことへの責任を感じており、本当の婚約者との婚約破棄がまとまった直後にアドリーヌの元にやって来たらしい。
「わたし、責任と結婚はしません」
アドリーヌはきっぱりと断るも、フェヴァンは諦めてくれなくて……。
異世界に来たからといってヒロインとは限らない
あろまりん
ファンタジー
※ようやく修正終わりました!加筆&纏めたため、26~50までは欠番とします(笑)これ以降の番号振り直すなんて無理!
ごめんなさい、変な番号降ってますが、内容は繋がってますから許してください!!!※
ファンタジー小説大賞結果発表!!!
\9位/ ٩( 'ω' )و \奨励賞/
(嬉しかったので自慢します)
書籍化は考えていま…いな…してみたく…したいな…(ゲフンゲフン)
変わらず応援して頂ければと思います。よろしくお願いします!
(誰かイラスト化してくれる人いませんか?)←他力本願
※誤字脱字報告につきましては、返信等一切しませんのでご了承ください。しかるべき時期に手直しいたします。
* * *
やってきました、異世界。
学生の頃は楽しく読みました、ラノベ。
いえ、今でも懐かしく読んでます。
好きですよ?異世界転移&転生モノ。
だからといって自分もそうなるなんて考えませんよね?
『ラッキー』と思うか『アンラッキー』と思うか。
実際来てみれば、乙女ゲームもかくやと思う世界。
でもね、誰もがヒロインになる訳じゃないんですよ、ホント。
モブキャラの方が楽しみは多いかもしれないよ?
帰る方法を探して四苦八苦?
はてさて帰る事ができるかな…
アラフォー女のドタバタ劇…?かな…?
***********************
基本、ノリと勢いで書いてます。
どこかで見たような展開かも知れません。
暇つぶしに書いている作品なので、多くは望まないでくださると嬉しいです。
前世で眼が見えなかった俺が異世界転生したら・・・
y@siron
ファンタジー
俺の眼が・・・見える!
てってれてーてってれてーてててててー!
やっほー!みんなのこころのいやしアヴェルくんだよ〜♪
一応神やってます!( *¯ ꒳¯*)どやぁ
この小説の主人公は神崎 悠斗くん
前世では色々可哀想な人生を歩んでね…
まぁ色々あってボクの管理する世界で第二の人生を楽しんでもらうんだ〜♪
前世で会得した神崎流の技術、眼が見えない事により研ぎ澄まされた感覚、これらを駆使して異世界で力を開眼させる
久しぶりに眼が見える事で新たな世界を楽しみながら冒険者として歩んでいく
色んな困難を乗り越えて日々成長していく王道?異世界ファンタジー
友情、熱血、愛はあるかわかりません!
ボクはそこそこ活躍する予定〜ノシ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる