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龍王と人助け
4話目 外の世界へようこそ
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俺は姫を背中に乗せ天高く飛翔し塔から飛びだした。
高度何百何千メートルかも分からない遥か上空からぐるりと世界を見渡す
この辺りは今冬なのだろう。霞んだ鉛色の様な分厚い雲に覆われ、其処から雪がチラチラと降り積もり、眼前の色を全て白銀で統一してくれている。不思議と寒さは感じなかった
「(冬の景色も中々に絶景。絶景。絶景かな)」
本来なら水平線の彼方に何があるかなど見通せる訳がないのに遠くにいる知らない誰かの顔をはっきりくっきりと鮮明に認識できるのは驚きだ。
まるで猛禽類の如く凄まじい視力を誇っている。これならば例え100キロ先のスカートが捲れた瞬間ですら見逃すことはないだろう
遠くの空で漫画や映画でしか見たことのない飛竜が群れを為して飛んでいる。
山の頂上付近では一つ目の巨人が自身の巨体を隠せる程の葉で雪を凌いでいる。
森では見たこともないほど巨大な犬のような獣が崖に駆け上がり遠吠えをしていた。
その景趣を目にして、どうしてかゾクゾクと血が沸き立つような感覚を覚えた。今の状況は決して喜ばしい訳ではないのだが、それでも言い知れぬ感動に体を震わせずにはいられなかった
「(なんだか始まったって感じがするな)」
「前と変わらず世界は美しいですか?」
すぐ耳元で囁くように姫の言葉が聞こえたのでビックリした。いつの間にか彼女は音も無く俺の頭部にまで登っている。
そもそも前の世界を知らないのだが、ああ!そうか。
この身体はアーカーシャのものだから、勘違いしているのだろう。訂正はしないけど
「(美しいかは分かんないが凄えワクワクしてきたぞ)」
「そうですか。それは良かった」
言葉は通じて無いはずだが、俺の嬉々とした声色に姫の表情が少しだけ柔らかくなったように見えた
「ちなみにあれ」
姫が徐に指を刺した。釣られて視線が動く
「魔導教会トラオムの総本山。空中魔導図書館ビブリ・テーカー」
「(図書館っていう規模じゃねえ、島だな。あれは)」
どういう理屈かは分からないが、巨大な島が宙に浮かんでいる。空島とはたまげたなぁ。黄金都市とか雷の能力を持ってる自称神様とかいそうだぜ。誰か未来の海賊王呼んで来てくれないか?
「(ん?)」
ふと、下へ目をやると俺が居た場所は塔ではなかったことが判明した。
俺が飛びだした所は、巨大な円形状。煙突の穴みたいな外肌をゴツゴツとした無骨な岩肌が形作っていた
「カモフラージュ代わりに山一つを買い取って内部に巨大な神殿を造ってみました」
俺の為だけにご大層な話だ。後1人で作ったの?近頃はDIY女子増えてるとはいうが、異世界でもブームでしたか。少し規模が大きい気もするけど
「じゃあ行きましょうか」
いつ行くか 今でしょ!!
移動を始めると次第に速度が増していく。するとそれに比例して空と大地と海が物凄い速さで俺の後ろへと駆け抜けていく。
────何百kmあったのだろう。だがその程度の距離を物ともせず凄まじい速度をもって俺はそれを走破していた。
「もうそろそろダカン平原だね」
姫の言葉通りに聳える山々を真上から過ぎると拓けた平原が次に顔を見せる。ここがダカン平原なのだろう。そこから少し先へと行くと大きな城郭都市が目に入った。
来る途中にも見かけた小さな城々とは異色な感覚を覚える。どういう訳か知らないが、城の中に強い存在感を放つ誰かがいるのが分かる
タンタンと地団駄を踏まれた。止まれという事なのだろう。車は急には止まれないが俺は何もない空を両手で掴み無理やり動きを止める事ができた
「(ふむふむ。加速する時に空を蹴ったからもしやと思ったが、触れるな。空気に)」
例えるなら、プールにいる時と近い感覚だろう。とりあえず急加速と急停止が自由に出来るようだ
「降りて」
俺は言われるが侭に、城壁の一画に器用に降り立つ。城を守る兵士たちが恐怖に引きつった表情を隠しきれない様子で武器を構えてすぐさま取り囲んできた。
武器を向けられているというのに全く何も感じないのはどうしてだ。
恐怖を感じなくなっている?いや違うな、頭でいくら分かっていてもこの状況を俺は本当の意味で脅威として認識出来ないんだ。
「き、貴様ら!何者だ」
通りすがりの龍王様だ。よく覚えておきな!そして隣にいるお方が我が主人の腹黒白雪姫様だ。平伏しな!
「怪しい者ではありません」
姫は軽い調子で手を叩いて俺から重い腰を退かして城に降り立つが、控えめに言って不審者だと思う。大人しく捕まって欲しい。そしてあの契約も無効にしてくれ
「私は魔導教会トラオム所属の魔導師、名を白雪姫と言います。本日この塞を訪れましたのは、その方の大司祭を務める妲己様に此処に来る様に呼ばれたからです」
姫の軽やかな口調とは対照的に兵士たちが強い警戒を維持したまま重苦しく口々に話をし始めた
「天狐様がどうして魔導師なんかを……」 「あれってもしかして、龍!?……おれ初めて見た」「あの女性美しすぎるっ!」「あほか!なに呑気なこと言ってやがる!教会はうちらの仇みたいなもんだろ!」「す、すまねえ。でも……キュン」
収集がまるでつきそうになかったが、兵士たちの中で1番位が高そうな大男が怯むことなく前に一歩踏み出した
「申し訳ございませんが此処に天狐様はいらっしゃいません。お引き取りをお願いします……」
「儀式が成功したら、そっちが来いって言ってたのになんのつもりなのかしら……全く、こんな所まで呼び出しておいて本当に……」
姫は表情こそ能面みたいに少しも変わりはしなかったが、本当に少しだけ苛立ちを感じさせる声色だった。それは、或いは、死を想起させてしまうくらいには
「一層のこと、本当に暴れてしまおうかしら。ねえ、偉大なる龍王様」
本気か冗談か読み取れない言葉だが、気怠げに首を少し傾げる姫から発せられる威圧感は本物だった。この場を酷く絞めつけ、兵士たちは身動ぎ1つ、瞬き一つすら行えていない
あとがき
キャラクター紹介
【アーカーシャ】
人間/始祖
【ステータス】
スピード :S -
パワー :S -
耐久力 :測定不能
魔力 :D
賢さ :C
【判明してる能力】
飛行能力、言語理解、自身の制動エネルギーの制御
【説明欄】
身体は龍、精神は人間の状態でアルタートゥームに顕現している。魔導師である白雪姫と契約した。言葉は理解出来る。喋ると相手には鳴き声にしか聞こえない
高度何百何千メートルかも分からない遥か上空からぐるりと世界を見渡す
この辺りは今冬なのだろう。霞んだ鉛色の様な分厚い雲に覆われ、其処から雪がチラチラと降り積もり、眼前の色を全て白銀で統一してくれている。不思議と寒さは感じなかった
「(冬の景色も中々に絶景。絶景。絶景かな)」
本来なら水平線の彼方に何があるかなど見通せる訳がないのに遠くにいる知らない誰かの顔をはっきりくっきりと鮮明に認識できるのは驚きだ。
まるで猛禽類の如く凄まじい視力を誇っている。これならば例え100キロ先のスカートが捲れた瞬間ですら見逃すことはないだろう
遠くの空で漫画や映画でしか見たことのない飛竜が群れを為して飛んでいる。
山の頂上付近では一つ目の巨人が自身の巨体を隠せる程の葉で雪を凌いでいる。
森では見たこともないほど巨大な犬のような獣が崖に駆け上がり遠吠えをしていた。
その景趣を目にして、どうしてかゾクゾクと血が沸き立つような感覚を覚えた。今の状況は決して喜ばしい訳ではないのだが、それでも言い知れぬ感動に体を震わせずにはいられなかった
「(なんだか始まったって感じがするな)」
「前と変わらず世界は美しいですか?」
すぐ耳元で囁くように姫の言葉が聞こえたのでビックリした。いつの間にか彼女は音も無く俺の頭部にまで登っている。
そもそも前の世界を知らないのだが、ああ!そうか。
この身体はアーカーシャのものだから、勘違いしているのだろう。訂正はしないけど
「(美しいかは分かんないが凄えワクワクしてきたぞ)」
「そうですか。それは良かった」
言葉は通じて無いはずだが、俺の嬉々とした声色に姫の表情が少しだけ柔らかくなったように見えた
「ちなみにあれ」
姫が徐に指を刺した。釣られて視線が動く
「魔導教会トラオムの総本山。空中魔導図書館ビブリ・テーカー」
「(図書館っていう規模じゃねえ、島だな。あれは)」
どういう理屈かは分からないが、巨大な島が宙に浮かんでいる。空島とはたまげたなぁ。黄金都市とか雷の能力を持ってる自称神様とかいそうだぜ。誰か未来の海賊王呼んで来てくれないか?
「(ん?)」
ふと、下へ目をやると俺が居た場所は塔ではなかったことが判明した。
俺が飛びだした所は、巨大な円形状。煙突の穴みたいな外肌をゴツゴツとした無骨な岩肌が形作っていた
「カモフラージュ代わりに山一つを買い取って内部に巨大な神殿を造ってみました」
俺の為だけにご大層な話だ。後1人で作ったの?近頃はDIY女子増えてるとはいうが、異世界でもブームでしたか。少し規模が大きい気もするけど
「じゃあ行きましょうか」
いつ行くか 今でしょ!!
移動を始めると次第に速度が増していく。するとそれに比例して空と大地と海が物凄い速さで俺の後ろへと駆け抜けていく。
────何百kmあったのだろう。だがその程度の距離を物ともせず凄まじい速度をもって俺はそれを走破していた。
「もうそろそろダカン平原だね」
姫の言葉通りに聳える山々を真上から過ぎると拓けた平原が次に顔を見せる。ここがダカン平原なのだろう。そこから少し先へと行くと大きな城郭都市が目に入った。
来る途中にも見かけた小さな城々とは異色な感覚を覚える。どういう訳か知らないが、城の中に強い存在感を放つ誰かがいるのが分かる
タンタンと地団駄を踏まれた。止まれという事なのだろう。車は急には止まれないが俺は何もない空を両手で掴み無理やり動きを止める事ができた
「(ふむふむ。加速する時に空を蹴ったからもしやと思ったが、触れるな。空気に)」
例えるなら、プールにいる時と近い感覚だろう。とりあえず急加速と急停止が自由に出来るようだ
「降りて」
俺は言われるが侭に、城壁の一画に器用に降り立つ。城を守る兵士たちが恐怖に引きつった表情を隠しきれない様子で武器を構えてすぐさま取り囲んできた。
武器を向けられているというのに全く何も感じないのはどうしてだ。
恐怖を感じなくなっている?いや違うな、頭でいくら分かっていてもこの状況を俺は本当の意味で脅威として認識出来ないんだ。
「き、貴様ら!何者だ」
通りすがりの龍王様だ。よく覚えておきな!そして隣にいるお方が我が主人の腹黒白雪姫様だ。平伏しな!
「怪しい者ではありません」
姫は軽い調子で手を叩いて俺から重い腰を退かして城に降り立つが、控えめに言って不審者だと思う。大人しく捕まって欲しい。そしてあの契約も無効にしてくれ
「私は魔導教会トラオム所属の魔導師、名を白雪姫と言います。本日この塞を訪れましたのは、その方の大司祭を務める妲己様に此処に来る様に呼ばれたからです」
姫の軽やかな口調とは対照的に兵士たちが強い警戒を維持したまま重苦しく口々に話をし始めた
「天狐様がどうして魔導師なんかを……」 「あれってもしかして、龍!?……おれ初めて見た」「あの女性美しすぎるっ!」「あほか!なに呑気なこと言ってやがる!教会はうちらの仇みたいなもんだろ!」「す、すまねえ。でも……キュン」
収集がまるでつきそうになかったが、兵士たちの中で1番位が高そうな大男が怯むことなく前に一歩踏み出した
「申し訳ございませんが此処に天狐様はいらっしゃいません。お引き取りをお願いします……」
「儀式が成功したら、そっちが来いって言ってたのになんのつもりなのかしら……全く、こんな所まで呼び出しておいて本当に……」
姫は表情こそ能面みたいに少しも変わりはしなかったが、本当に少しだけ苛立ちを感じさせる声色だった。それは、或いは、死を想起させてしまうくらいには
「一層のこと、本当に暴れてしまおうかしら。ねえ、偉大なる龍王様」
本気か冗談か読み取れない言葉だが、気怠げに首を少し傾げる姫から発せられる威圧感は本物だった。この場を酷く絞めつけ、兵士たちは身動ぎ1つ、瞬き一つすら行えていない
あとがき
キャラクター紹介
【アーカーシャ】
人間/始祖
【ステータス】
スピード :S -
パワー :S -
耐久力 :測定不能
魔力 :D
賢さ :C
【判明してる能力】
飛行能力、言語理解、自身の制動エネルギーの制御
【説明欄】
身体は龍、精神は人間の状態でアルタートゥームに顕現している。魔導師である白雪姫と契約した。言葉は理解出来る。喋ると相手には鳴き声にしか聞こえない
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