アルビノ少女と白き真炎龍《ヴェーラフラモドラコ》〜家の近くの森で絶滅したはずの龍を見つけたので、私このまま旅にでます〜

辺寝栄無

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‐1336年 日ノ炎月 6日《5月6日》‐

予想外の――

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「トカゲがア! よくもまァ調子に乗りやがッて! ッ! 穴ァ空いてンじゃねェか! テメェは金なんだよッ! 金ッてのはなァ、だまッて仕舞われてりャアいンだよ、クソがよオ!」

 首絵を曲げ、ぐるりと頭を回す。

 あー、クソ――。マジ、イラつくぜぇ――。

 頭の中で一本、何かが切れた気がした。

 クイっ、と首を捻る。コキリ、と音が鳴る。

 フゥー――。

 溜まりに溜まったイラつきを吐き出すかのように、大きく長いため息を一つ。

 あー、もう、いいや。飛龍アイツ解体バラしちまおう。殺しにケッテーだ。

「エスペラ!」

 甲高いガキの声が、耳を突き刺し、頭に響く。

 マァジでウルセェガキだなぁア……、てか、オレのことはムシかよ。よゆーだなァ、ガキのくせになァ――。

 顔をくしゃくしゃに潰しながら天を仰ぐ。

 あぁぁああアアア!! マァアジッでッ――!

「ムッカつくなァア!!」

 飛龍ワイバーンに駆け寄って行くガキに視線を合わせる。対象の動きに合わせて片足を振り上げ、そのまま思いっきり蹴り抜く。

 瞬間、喉を潰されるような衝撃とともに、視界に写る景色全てが一斉に後ろに下がった。

 後頭部と背中が硬い何かに思いっきりぶつかった。思わず目を瞑ってしまう。

「ガッ、ッ――!」

 肺の中の空気が一気に喉元まで迫り上がってくる。しかし、何かに阻まれ、うまく吐き出せない。喉が詰まって息すらまともにできない。

 うっすらと徐々に目を開けていく。目の前にはあのルイスイカれクソ犬がいた。

 驚きのあまり、ゆっくり動いていた瞼が一気に開く。

 は? え? なんで? え? なんでいるの? え? なんで――?

 突如現れた対象に対してまったく理解が追い付かない。今まで頭の中と感情全て埋め尽くしていたはずの怒りとイラだちは一気に霧散し、新たに疑問で全てが埋め尽くされていく。

 疑問ばかりが頭の中を埋め尽くし、思考が一向に進まない。一度息を吸おうとした、だが息がうまくできない。

 そうだ何かが喉に詰まって――。

 瞬間、喉を押し込まれるような感覚がして詰まりがよりひどくなった。

「お嬢様に何を、しようとした……――」

 低い、唸り声混じりの声がした。

 声を出そうとして、口を動かす。しかし、喉が詰まってうまく声が出ない。

「貴様が今! お嬢様に! 何をしようとしていたのかを聞いている!!」

 へ、返事をしないと――、でも、声が、出ない――、なんで、わからない――、喉が、心臓が、苦しい――。

「答えろ!!」

 喉が、痛い――、苦しい――、息が、したい――。

「ルイス! や……て! 死ん……う!!」

 う、る、さい、声――――。
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