アルビノ少女と白き真炎龍《ヴェーラフラモドラコ》〜家の近くの森で絶滅したはずの龍を見つけたので、私このまま旅にでます〜

辺寝栄無

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‐1336年 日ノ炎月 5日《5月5日》‐

ママ? に出会えた日

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v  マ、マ……?   

 目の前でとんでもない数の白い角の生えたドラゴン? がさっきからずっと何かぶつぶつ言っている。   

 これは本当にママなの? 確かにさっきから小さく聞こえている声の波は、昔に聞いていたものと似ている。だけどなんか昔に聞いた声とは違う気がする。気がするだけで何が違うのかはわからないけど。   

 ずいぶん久しぶりに聞いたママの声に嬉しくなって思わずしまったけど、そもそもママを時に聞こえた声もよくよく思い出せば昔聞いた声とは少し違ったような気もする。

 最初こそぼやけて聞こえていた声も、だんだんはっきりと聞こえるようになって、やっとママに会えると思ってがんばって急いで殻から出てきたのに、なのに目の前にいるのは自分とは似ても似つかない、だいぶ変わった変なドラゴン? がいる。

 声だって、似ているけどなんか違うし……。あとたぶん、羽もなければ尻尾のない。爪だって鋭くないし鱗はとても柔らかそうだ。それに何枚もの鱗があるわけではなく、一枚? の大きな鱗が体を覆っているし頭や腕、足など鱗がついていない部分すらある。

 いや、よくよく見るとものすごく大きな一枚の鱗以外に足にも鱗が、あとなぜかまぶたとその少し上の部分にもとてつもなく薄く細い鱗が生えている。けどどの鱗も自分に生えている鱗とは似ても似つかない。本当に鱗かどうかも怪しい。

 それに腕は短いのに足はものすごく長い。随分と歩きづらそう。角は生えているみたいだけどものすごく数が多い。一体何本生えているんだ。数える気にもならない。あとものすごく柔らかそう。だって頭を動かしただけで角が揺れている。それじゃあすぐに欠けそうだし簡単に折れそうだ。あまりにも違うところが多すぎる。   

 やっぱりママじゃない? だけど変な見た目をしてはいるけれども一応は鱗? はあるし角も生えてはいる。本当にないのは翼ぐらい。それに角と鱗の色が自分と同じ色、白色だ。声も昔聞いていた声と比べて聞こえてくる感じは違うけど音の波の形は似ている。   

 やっぱりママなの? 信じたいよ。   

 けど違うところもある。むかし聞いていたママの声の波の色は、濃かったり薄かったり少しの違いはあっても、いつも変わらずに吸いこまれそうなほど綺麗な青い色をしていた。その音の波に包まれた時は何よりも心地がよくて気持ちがよかった。けどいま聞こえている声の波の色は青色じゃない。黄色だ。それに波の流れがちょっと速くて少し荒れている。むかしたまに聞こえていた、いっつもものすごく荒れていて真っ赤な色をした声の波ほどは怖くはないけれど、記憶の中のママの声ほど安心ができない。

 ママどうすればいいの? 本当にママはママなの。やっとママに会えると思っていたのに。

 久しぶりに声がした時は本当に嬉しかった。けどいまはもう怖いのが強い。わからないことが怖い。本当はいますぐにでもママに触れたい、ママの胸に飛び込みたい。たけどもしママがママじゃなかったら? そう思うとママに触れることすらできない――。   

 ねえ、ママ、何か言ってよ……。またあの声を聞かせて……――。
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