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‐1336年 日ノ炎月 5日《5月5日》‐
龍と出会った日 2
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「本物……の、龍……。」
あまりの驚愕と感動に半分呆けながらも、私はただただ龍を見ていた。
しばらくして感情に思考が追いつき始める。いやむしろ思考が感情につられたというべきかもしれない。
思考は、まるで感情に導かれるかのようかの様に、目の前の龍について分析をし始めた。
全体の印象としては線が細くしなやかな印象……で、頭は蛇や蜥蜴に近い? まぁ、そもそも魔瘴の影響で変化した蜥蜴や蛇が竜擬と呼ばれているくらいだ。似ていて当然か。
額からは生えかけの歯のような小さな角? が左右からちょこんと顔を出している。竜擬とは違い、鱗が変化したものではなく、そもそもの構造からして頭蓋骨に角という部位が存在していると思える生え方だ。鱗を突き破っていることからもそれは明らかだ。これは紛れもなく本物の龍であることの証明だ。新・龍種解体書にそう書かれていたのだから間違いない。だけど思っていたよりも小さい。まだ子供だから?
成長と共に角も伸びていくのかな。どんな形になるだろう。天を突くように真っ直ぐ? それともグネグネ捻れる? 鹿の様に枝分かれするかもしれない!
おっと、いつまでも角だけにかまけている場合じゃない。見るべき所はまだまだいっぱいある。
とりあえず上から下に順々に下がっていこうか。
首はスラッとしていて長く、蛇みたいだ。これならば真後ろだって首を捻るだけで簡単に見れそうだ。
首の付け根には肩があって腕が伸びている。腕の先にはもちろん手もあって指だってある。本数は……。一、ニ、、五本だ、私たち人と同じ! いや、まだ翼指があったんだった。全部含めると本のとおりなら六本のはずだけど…………。
だめだ。翼が折り畳まれてピッタリと腕にくっついていて数えようがない。でもちゃんと肘に沿って曲がっているあたり翼指はちゃんとありそうだ。さすが翼の指と翼指というだけのことはある。翼の扱いは自由自在ってわけだ。
うーん、でもやっぱりちゃんと確認したいし……どうにか翼を広げてくれないかな。今の状態でもなんとか腕の外側から翼膜が張っているということはわかるけど……。うーーん……見てみたい、どうにかならないかな……。あ、そうだ!
私は腕を開き、脇をワキワキさせて翼を広げる様な動作をする。
龍と違って翼膜なんてないから、ちゃんと伝わるかどうかはわからないけど、でもやらないよりはやったほうがいいに決まってるし、後は真似さえしてくれれば――。
しかし、私の思惑とは裏腹に龍はびっくりしたのか、首を引いて小刻みに震え出してしまった。
まずい……、警戒させちゃったかもしれない。
腕を下ろし、私は慌てて後ろに下がった。
逃げられちゃ元も子もない。残念だけど翼を広げた姿は今は諦めよう。しばらくはじっとして、警戒が解けたとしてもとりあえずのところは観察だけにしておこう。
お互い少し距離をとって離れたおかげか、と言っても手を伸ばせばなんなく触れる程度の距離ではあるけど、龍の緊張がさっきよりは解けた様な気がする。
早速と言わんばかりに私は再び観察を再開した。
翼はまだ折り畳まれたままなので確実ではないけど、おそらく翼膜は、腰? にまで張っている、かな。となればこれは相当大きい。それだけ大きくなければ飛べないということは鳥の様に骨が軽いということではないのかも。それに腕から腰にかけて翼膜が張っているということは腕を上下に振って飛ぶということだ、たぶん……。だけどその割には肩や胸といった上半身の筋肉が発達していない様な気がする。
これも角と同じで子供だから未発達ってことかな?
いや、それとも魔力の循環効率が高くて体内を循環する魔力を操作する技術があるってことかも?
魔力循環の意図的な操作は干渉魔法の基本中の基本だし身体機能の補助と向上のために私だってやっていることだ。本によると龍の知能は相当高いと言っていたし中には言葉を発していた龍もいたとか。そうなると確かにできないことはなさそうだ。とっさに思いついた割には結構ありそうな話じゃ。だとすればこれは物凄い発見だ。だって龍が魔力循環の操作に長けるなんて本にも書かれていなかった。あのインクリオスティン先生すらも発見できなかったことだ。観察だけで気がつけるなんてすごい、すごいぞ私!! そうとなれば早速観察を続けていかないと。きっとまだまだ新しい発見が私を待っている。
上半身の次は下半身だ。
まず最初の印象としては丸みがあって土台がしっかりしていそうな感じだ。瞬発力もありそうで小回りの利きそうな体つきをしている。そう、まるで猫みたいな。パッと見る限りだと足の構造だって猫に近そうだし結構機敏なのかも。太腿がしっかり、って言ってもまだ生まれたばかりだから全然細身ではあるけど、している気がする。踵の位置も高い。本当に猫みたいな足だ。指の本数は……手と違って四、本かな。いや、踵に生えている爪……? を入れると五本だ。ただこれを指として数えていいのか。見た限りだと踵から直接爪が飛び出ている。この踵の指? には、前についている指と違って関節が無いのかもしれない。あったとしてもこれじゃあ相当短そうだしこれじゃあ曲がるかどうかすら怪しい。それを指と言ってもいいのか……微妙だ。そもそもこの爪はなんのために生えているんだろう。尻尾を振る時に振り回されないように踏ん張るためとか? 確かに尻尾は長いし体全体に対しての太さも結構あるし必要といえばそうかもしれない、けどただそのためだけにあんな場所に突然ポツリと爪が飛び出ているものなのか、支えるためというのは理由としてはまだ弱い気がする。他に何か理由が……。うーん、……。 ! もしかして……、いやけど、……。……! ……、……? ……――――。
あまりの驚愕と感動に半分呆けながらも、私はただただ龍を見ていた。
しばらくして感情に思考が追いつき始める。いやむしろ思考が感情につられたというべきかもしれない。
思考は、まるで感情に導かれるかのようかの様に、目の前の龍について分析をし始めた。
全体の印象としては線が細くしなやかな印象……で、頭は蛇や蜥蜴に近い? まぁ、そもそも魔瘴の影響で変化した蜥蜴や蛇が竜擬と呼ばれているくらいだ。似ていて当然か。
額からは生えかけの歯のような小さな角? が左右からちょこんと顔を出している。竜擬とは違い、鱗が変化したものではなく、そもそもの構造からして頭蓋骨に角という部位が存在していると思える生え方だ。鱗を突き破っていることからもそれは明らかだ。これは紛れもなく本物の龍であることの証明だ。新・龍種解体書にそう書かれていたのだから間違いない。だけど思っていたよりも小さい。まだ子供だから?
成長と共に角も伸びていくのかな。どんな形になるだろう。天を突くように真っ直ぐ? それともグネグネ捻れる? 鹿の様に枝分かれするかもしれない!
おっと、いつまでも角だけにかまけている場合じゃない。見るべき所はまだまだいっぱいある。
とりあえず上から下に順々に下がっていこうか。
首はスラッとしていて長く、蛇みたいだ。これならば真後ろだって首を捻るだけで簡単に見れそうだ。
首の付け根には肩があって腕が伸びている。腕の先にはもちろん手もあって指だってある。本数は……。一、ニ、、五本だ、私たち人と同じ! いや、まだ翼指があったんだった。全部含めると本のとおりなら六本のはずだけど…………。
だめだ。翼が折り畳まれてピッタリと腕にくっついていて数えようがない。でもちゃんと肘に沿って曲がっているあたり翼指はちゃんとありそうだ。さすが翼の指と翼指というだけのことはある。翼の扱いは自由自在ってわけだ。
うーん、でもやっぱりちゃんと確認したいし……どうにか翼を広げてくれないかな。今の状態でもなんとか腕の外側から翼膜が張っているということはわかるけど……。うーーん……見てみたい、どうにかならないかな……。あ、そうだ!
私は腕を開き、脇をワキワキさせて翼を広げる様な動作をする。
龍と違って翼膜なんてないから、ちゃんと伝わるかどうかはわからないけど、でもやらないよりはやったほうがいいに決まってるし、後は真似さえしてくれれば――。
しかし、私の思惑とは裏腹に龍はびっくりしたのか、首を引いて小刻みに震え出してしまった。
まずい……、警戒させちゃったかもしれない。
腕を下ろし、私は慌てて後ろに下がった。
逃げられちゃ元も子もない。残念だけど翼を広げた姿は今は諦めよう。しばらくはじっとして、警戒が解けたとしてもとりあえずのところは観察だけにしておこう。
お互い少し距離をとって離れたおかげか、と言っても手を伸ばせばなんなく触れる程度の距離ではあるけど、龍の緊張がさっきよりは解けた様な気がする。
早速と言わんばかりに私は再び観察を再開した。
翼はまだ折り畳まれたままなので確実ではないけど、おそらく翼膜は、腰? にまで張っている、かな。となればこれは相当大きい。それだけ大きくなければ飛べないということは鳥の様に骨が軽いということではないのかも。それに腕から腰にかけて翼膜が張っているということは腕を上下に振って飛ぶということだ、たぶん……。だけどその割には肩や胸といった上半身の筋肉が発達していない様な気がする。
これも角と同じで子供だから未発達ってことかな?
いや、それとも魔力の循環効率が高くて体内を循環する魔力を操作する技術があるってことかも?
魔力循環の意図的な操作は干渉魔法の基本中の基本だし身体機能の補助と向上のために私だってやっていることだ。本によると龍の知能は相当高いと言っていたし中には言葉を発していた龍もいたとか。そうなると確かにできないことはなさそうだ。とっさに思いついた割には結構ありそうな話じゃ。だとすればこれは物凄い発見だ。だって龍が魔力循環の操作に長けるなんて本にも書かれていなかった。あのインクリオスティン先生すらも発見できなかったことだ。観察だけで気がつけるなんてすごい、すごいぞ私!! そうとなれば早速観察を続けていかないと。きっとまだまだ新しい発見が私を待っている。
上半身の次は下半身だ。
まず最初の印象としては丸みがあって土台がしっかりしていそうな感じだ。瞬発力もありそうで小回りの利きそうな体つきをしている。そう、まるで猫みたいな。パッと見る限りだと足の構造だって猫に近そうだし結構機敏なのかも。太腿がしっかり、って言ってもまだ生まれたばかりだから全然細身ではあるけど、している気がする。踵の位置も高い。本当に猫みたいな足だ。指の本数は……手と違って四、本かな。いや、踵に生えている爪……? を入れると五本だ。ただこれを指として数えていいのか。見た限りだと踵から直接爪が飛び出ている。この踵の指? には、前についている指と違って関節が無いのかもしれない。あったとしてもこれじゃあ相当短そうだしこれじゃあ曲がるかどうかすら怪しい。それを指と言ってもいいのか……微妙だ。そもそもこの爪はなんのために生えているんだろう。尻尾を振る時に振り回されないように踏ん張るためとか? 確かに尻尾は長いし体全体に対しての太さも結構あるし必要といえばそうかもしれない、けどただそのためだけにあんな場所に突然ポツリと爪が飛び出ているものなのか、支えるためというのは理由としてはまだ弱い気がする。他に何か理由が……。うーん、……。 ! もしかして……、いやけど、……。……! ……、……? ……――――。
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