ぼくは妖怪配信者!

神伊 咲児

文字の大きさ
上 下
4 / 23
動画を撮影してみよう!

第4話 妖怪

しおりを挟む
「ネ、ネズミ!?」

 今、ネズミが着物を着ていたよ! 
 隠れて見えなくなっちゃったけどさ。
 花柄の色鮮やかな着物を着たネズミ。

 神社の中に入っちゃった。

 こ、これは気になるな。

 僕は神社の中に入ることにした。

「お、お邪魔しまーーす」

 神社の中は薄暗い。
 カビ臭くてじめッとしてる。
 でも、木とお線香の匂いもして、僕は結構好きだったりする。
 足を一歩踏み入れると、ミシィイイ~~って木の床が鳴った。

『クスクス。こっちさ。こっち』

 この声はネズミなんだろうか?

 歩くたんびに、ギシィイイ、ミシィイイっと床が鳴る。

 うう。
 古い建物だからなんかちょっと怖いよね。

サササーーーーッ!!

 と、壁沿いに、小さななにかが動く。

 それが止まると、僕と目が合った。

「うわっ! やっぱりネズミだ!」

 派手な着物を着てるぞ!

 と、思うやいなや。
 僕の体はひっくり返った。

「え!? 逆さまになった!?」

 え!? 上に床が見えるぞ!?

 不思議なことに、僕の両足は天井にしっかりと付いていた。
 でも、髪は逆立って今にも下に落ちそうだ。

「な、なんで!?」

 床から大きな目玉がニョキっと出て来た。

「え!? え!? か、カタツムリみたいな目玉だ!」

 目玉はしゃべった。

『オラは『逆さベッタラ』。オラの好物を当ててみな』

「こ、好物ってなんのこと?」

『好きな食べ物さね。さぁ、当ててみな。当てねぇと。ずっと逆さまにしてやるからな』

 ええええ!?
 ずっと逆さまは困るよ。

 好きな食べ物って言われてもわからないよね。

 えっと……僕なら……。

「ラーメンとか?」

『なんだよそれ?』

「カ、カレーライス」

『知らねぇな』

「ハンバーグは?」

『見たこともねぇよ』

 難しいな。
 あーー。でも日本の古い料理とかならわかるのかな?
 昔の料理。昔の料理ぃ……。

「お味噌汁!」

『おお。そいつは知ってるぜ。でも、オラの好きなもんじゃねぇな』

 ああ違うのかぁ。
 昔の料理なら知ってるようだけど、僕はそんなに知らないしなぁ。

「ヒント欲しいです」

『ひんとってなんだい? オラは日本語しかわからねぇぞ』

 ヒントって英語かもしれないな。
 えーーと。

「答えの手がかりになりそうなことです」

『ああ、だったらオラの名前だな。わっかんねぇだろうなぁ』

「名前? さかさ……なんだっけ?」

『オラは、逆さベッタラだ』

 逆さベッタラ……。つまり、逆さまのベッタラってことか。
 ベッタラって東京を代表とする名産品だよね。ベッタラ漬けは大根の漬物って意味だ。だから、

「大根」

『うわ! なんだよ! 当てちまうのかよ! おめぇただもんじゃねぇな』

クルリン。

 僕の体は元の位置に戻った。

 良かったぁ。

「あのままずっと逆さまのままだったら頭に血が回っちゃうよね」

 あー良かった。
 どうやら正解みたいだ。

 床から出ていた目ん玉は、ニョキっと這い出した。
 その体は大根その物。

『オラは100年生きた大根なんだ』

 へぇ……。
 大根も、そんなに長く成長したら言葉をしゃべるのかな?

『仕方ねぇな。長《おさ》に会うことを許してやるよ』

 おさ?

『おさってなんですか?』

『長は長じゃねぇか』

 そう言って、床の中に潜ってしまった。

 木の床は隙間なんかないしな。
 大根が床の中に消えちゃうなんて不思議だなぁ。

 そう思っていると、ニョッキと2つの目ん玉が出た。

『長はあっちだで。ホラ。会って来いよ』

 目ん玉が見ている方向。
 そこには大きな瓢箪《ひょうたん》があった。
 2メートルは超えているだろう。
 見上げるほどに大きい。

「こんなデッカイ瓢箪、見たことないや」

 すると、瓢箪の口から大きなネズミが顔を出した。
 それは60センチほどの大きさで、立派な紋付き袴もんつきはかまを着ていた。

『羽織《はお》りネズミが連れ込んだから、どんな人間かと思ったが、子供ではないか』

 うわぁ。
 なんて答えたらいいのかわからない。
 大きいネズミもすごいし、話してるのもすごい。紋付き袴を着込んでるのだってすごすぎるぞ。

 こういうのは、もしかして……。

「あの……。ネズミさんは妖怪ですか?」

 私わしはこの辺の長をやっておる。瓢箪ネズミじゃ』

 えーーと。

「おさってなんですか?」

『長も知らんのか? 子供じゃのう』

「11歳なので、まだ子供です」

『人間の世界じゃあ、リーダーとか言う意味じゃな。団体の中で一番偉い人じゃよ』

「ああ! じゃあ、この辺の妖怪で、瓢箪ネズミさんがリーダーってことですか?」

『そういうことじゃな』

 おお!
 なんかすごい妖怪と出会えたぞ。

 私わしは100年生きたネズミじゃよ。ネズミはな。30年も生きれば言葉も話すし服も着る。おまえを案内したのは羽織りネズミじゃよ』

 すごいな。

「じゃあ、この神社は妖怪の棲家なんだ」

 僕は妖怪と友達になってしまったのか。これはビッグニュースだぞ。牛田だって妖怪の友達はいないだろう。ふふふ。

 長は瓢箪を登ったり降りたりを繰り返す。

『さてはて。どうやって若さを吸い取ってやろうかの? 煮て吸うか。焼いて吸うか?』

「え? な、なんのことですか?」

『おまえの若さを吸い取るんじゃよ』

「ええええ!? そんなことをされたら、おじいちゃんになっちゃう!」

『だから、この社に入ったのじゃろう。神隠しって聞いたことないかの?』

「あ、ありますよ。急に行方不明になることでしょ? 原因がわからないんだ」

『ククク。でも、ひょっこりと現れることがある。おまえさんの場合は、そうじゃのう60年後くらいには家に帰れるかの』

「えええええ!? 母さんが心配するので無理ですぅ!!」

『今宵《こよい》は宴《うたげ》じゃわい。おまえさんの若さを肴《さかな》にしてな。みんなで酒を飲むんじゃよ』

「ひぃいいい!!」

 僕は急に怖くなった。
 妖怪って怖いんだ!

 急いで引き返す。
 でも、さっきまで開いていた扉はバタンと閉まって、うんともすんともいわなくなった。

「ええ!? どうして開かないの!?」

『逃げられるもんかい。さぁ、どうやって若さを吸い取ってやろうかねぇ。ヒヒヒ。おまえの若さはさぞかし美味かろうて』

「うわぁああッ!! 誰かぁ!!」

 長は大きな瓢箪を横に倒した。

『瓢箪の口を見るんじゃ。ほぉら、おまえさんの若さを吸い取っちまうぞぉ』

 その瓢箪は、まるで掃除機のように空気を吸った。キュオオオという音とともに僕の若さを吸おうとしている。

『さぁ。もっと近くに来い。若さを吸い取ってやろう』

 「嫌だぁあああああああッ!!」

 すると、扉がブワッと開いて白い物体が飛び込んできた。

『待ってくれ長! 優斗はオイラの友達なんだ!!』

 え? え?
 と、友達ぃ?

 それはポメラニアンのような白い毛をした小型犬だった。

『オイラの友達から若さを吸い取るのはやめてくれ!』

 い、犬がしゃべってる!?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

湯本の医者と悪戯河童

関シラズ
児童書・童話
 赤岩村の医者・湯本開斎は雨降る晩に、出立橋の上で河童に襲われるが…… ‪     ‪*‬  群馬県の中之条町にあった旧六合村(クニムラ)をモチーフに構想した物語です。

こちら御神楽学園心霊部!

緒方あきら
児童書・童話
取りつかれ体質の主人公、月城灯里が霊に憑かれた事を切っ掛けに心霊部に入部する。そこに数々の心霊体験が舞い込んでくる。事件を解決するごとに部員との絆は深まっていく。けれど、彼らにやってくる心霊事件は身の毛がよだつ恐ろしいものばかりで――。 灯里は取りつかれ体質で、事あるごとに幽霊に取りつかれる。 それがきっかけで学校の心霊部に入部する事になったが、いくつもの事件がやってきて――。 。 部屋に異音がなり、主人公を怯えさせる【トッテさん】。 前世から続く呪いにより死に導かれる生徒を救うが、彼にあげたお札は一週間でボロボロになってしまう【前世の名前】。 通ってはいけない道を通り、自分の影を失い、荒れた祠を修復し祈りを捧げて解決を試みる【竹林の道】。 どこまでもついて来る影が、家まで辿り着いたと安心した主人公の耳元に突然囁きかけてさっていく【楽しかった?】。 封印されていたものを解き放つと、それは江戸時代に封じられた幽霊。彼は門吉と名乗り主人公たちは土地神にするべく扱う【首無し地蔵】。 決して話してはいけない怪談を話してしまい、クラスメイトの背中に危険な影が現れ、咄嗟にこの話は嘘だったと弁明し霊を払う【嘘つき先生】。 事故死してさ迷う亡霊と出くわしてしまう。気付かぬふりをしてやり過ごすがすれ違い様に「見えてるくせに」と囁かれ襲われる【交差点】。 ひたすら振返らせようとする霊、駅まで着いたがトンネルを走る窓が鏡のようになり憑りついた霊の禍々しい姿を見る事になる【うしろ】。 都市伝説の噂を元に、エレベーターで消えてしまった生徒。記憶からさえもその存在を消す神隠し。心霊部は総出で生徒の救出を行った【異世界エレベーター】。 延々と名前を問う不気味な声【名前】。 10の怪異譚からなる心霊ホラー。心霊部の活躍は続いていく。 

【総集編】日本昔話 パロディ短編集

Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。  今まで発表した 日本昔ばなしの短編集を、再放送致します。 朝ドラの総集編のような物です笑 読みやすくなっているので、 ⭐️して、何度もお読み下さい。 読んだ方も、読んでない方も、 新しい発見があるはず! 是非お楽しみ下さい😄 ⭐︎登録、コメント待ってます。

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

【奨励賞】おとぎの店の白雪姫

ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】 母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。 ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし! そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。 小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり! 他のサイトにも掲載しています。 表紙イラストは今市阿寒様です。 絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。

守護霊のお仕事なんて出来ません!

柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。 死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。 そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。 助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。 ・守護霊代行の仕事を手伝うか。 ・死亡手続きを進められるか。 究極の選択を迫られた未蘭。 守護霊代行の仕事を引き受けることに。 人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。 「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」 話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎ ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。

悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~

橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち! 友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。 第2回きずな児童書大賞参加作です。

鎌倉西小学校ミステリー倶楽部

澤田慎梧
児童書・童話
【「鎌倉猫ヶ丘小ミステリー倶楽部」に改題して、アルファポリスきずな文庫より好評発売中!】 https://kizuna.alphapolis.co.jp/book/11230 【「第1回きずな児童書大賞」にて、「謎解きユニーク探偵賞」を受賞】 市立「鎌倉西小学校」には不思議な部活がある。その名も「ミステリー倶楽部」。なんでも、「学校の怪談」の正体を、鮮やかに解明してくれるのだとか……。 学校の中で怪奇現象を目撃したら、ぜひとも「ミステリー倶楽部」に相談することをオススメする。 案外、つまらない勘違いが原因かもしれないから。 ……本物の「お化け」や「妖怪」が出てくる前に、相談しに行こう。 ※本作品は小学校高学年以上を想定しています。作中の漢字には、ふりがなが多く振ってあります。 ※本作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。 ※本作品は、三人の主人公を描いた連作短編です。誰を主軸にするかで、ジャンルが少し変化します。 ※カクヨムさんにも投稿しています(初出:2020年8月1日)

処理中です...