俺とお前、信者たち【本編完結済み/番外編更新中】

知世

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番外編(小ネタ、小話、小説)

ノワール『楓』+最後にお知らせがあります

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「11月22日」は、順番を入れ替えて、「宿命」の前に変更しました。

それと、「宿命と運命」を「彼方とゼロ」という題名に変えます。

本当は「宿命(楓)と運命(彼方)」の意味でしたが、今回の「ノワール」に合わせることにしました。





プライベートジェットから降りて、機内の出入口でお座りしているノワールを手招きした。

「ノワール、おいで」

こちらにきたノワールの頭や顎下、背中を撫でる。

「よく我慢したね。偉かったよ」

プライベートジェットの中でも最速の機体で、機内では自由にさせたとはいえ、長時間移動を大人しく過ごしてくれて、今回も助かった。

良い子、良い子、と褒めながら、ノワールが触ると喜ぶ場所を、優しく撫でる。

尻尾を振って、目を細めているノワールに、おやつを差し出す。

「お利口さんには、ご褒美をあげないとね。―食べていいよ、ノワール」

「わん」

嬉しそうに、でも決してがっついたりせず、おやつを食べるノワールを、ぼんやりと見る。


[ノワール、おいで]

[ご飯だよ。 いただきます。―はい、食べていいよ]

[お散歩しよう、ノワール。…そうだ、今日は一緒にかけっこする?]

[おやつの時間だよ]

[ノワール。お風呂に入ろう]

[ブラッシングするけど、どのブラシがいい? 分かった、今回はこれだね]

ノワールと過ごす時間は、いつも楽しそうに笑っていて。

[新しいおもちゃだよ。後で父さんにお礼を言いに行こうね]

[この毛布、触り心地が良いから、買って貰ったんだ。ノワールにあげる]

自分が欲しい物は言わないのに、ノワールにあげたい物は父さんにおねだりして。

[ノワールはお利口さんだね]

[偉い偉い]

[良い子だね]

[凄いよ、ノワール]

褒める時は、いっぱい褒めて。

[ノワール、大好きだよ]

[可愛い。ノワールは可愛いね]

大好きも、可愛いも、毎日伝えて。

[よしよし。気持ちいい?ノワール]

[可愛い子にはハグ攻撃だっ。…あははっ!舐めないで、ノワール。くすぐったいよ]

[ノワールは、本当に可愛い。…本当に可愛い相手には、頬擦りしたくなるんだ…なんか、不思議だな…]

撫でたり、抱き締めたり、頬擦りしたり…スキンシップも、沢山して。

[ノワール]

愛情たっぷりに、ノワールのお世話をしていた、兄さん。


兄さんが、あんなに、無邪気に笑い掛けたり、大好きって言ったり、スキンシップをしていたのは、ノワールだけだ。

…犬相手に、みっともないけれど、ちょっと、いや、かなり羨ましかった。

だって、あからさまに溺愛してて、口調も声も優しくて、そもそも、一目惚れとか!

狡い!!

一目惚れするなら、僕にしてよ!!!

…落ち着こう。

犬に本気で嫉妬したら、人として終わりだ。

本当にみっともない。


…ノワールが犬で良かった。

犬じゃなかったら、殺さないといけないところだったよ。

兄さんの心を奪う奴は、老若男女問わず、存在することが許せない。

髪の毛一本も残さないよう、この世から抹殺しなきゃ…。

そう思うと、やっぱり、彼方は邪魔だな。…兄さん好みの顔だし。

兄さんは、外見も内面も優しい人がタイプだから、優男代表みたいな、彼方の顔、結構好きだと思うんだよね。多分。

まだ殺せないし、殺すつもりもないけど、あの顔だけは、どうにかしたいな…。

「わん、わん」

「…ん?」

彼方の顔面について(ぐちゃぐちゃにする方法を)考えていたら、ノワールに吠えられた。珍しい。

「わんわん」

まるで、悪事を企む僕を咎めるような目をして、叱るような声で、何か訴えかけてくる。

…ノワールは賢いね。流石、兄さんと僕の愛犬だよ。

「ごめんね、ノワール。もう、(今日は)悪い事を考えないよ」

「わん」

分かれば宜しい、と言わんばかりの表情で、返事をされた。

ノワールって、僕のお目付け役かな?

ある意味、一番抑止力はあるけど。

兄さんの(勿論僕も)大切な家族だから、邪険にも排除も出来ない。

厄介な可愛い子だよ。


僕の邪魔をしてきたノワールは、やっと自由に動けると思い、そわそわしている。

三年振りでも、この場所を覚えていたようだ。

(ここは、あまり来てないエリアだけど、ノワールは大丈夫そうだね)

「好きなだけ散歩しておいで。僕は兄さんの部屋にいるから」

「わんっ」

許可を出した途端、元気良く走り去るノワールを見送り、待機していた車に乗る。

優秀な使用人は、指示を出さなくても、ノワールの後を追っていた。

ノワールは、満足すれば、自分で帰ってくるし、トイレも問題ないけど、慣れない場所だから、ひとりにはしたくないことを、使用人も理解してくれているようだ。

(ノワールの散歩か…。兄さん、がっかりしてたな)


本宅の敷地は(無駄な程)広大で、散歩は庭で事足りる。

だから、初めての散歩は、兄さん一人で行っていた。

勿論、一人といっても、少し離れたところから、兄さん付きの使用人が見守っていたけど。

僕は小説の続きが読みたくて、同行しなかったんだ。

それで、読み終わって、部屋を出たら、ちょうど帰ってきた兄さんと鉢合わせして…。

[思ってたのと違う]

[飼い主として、うんちの処理は当然なのに、やらせてもらえなかった]

[そもそも、外にもペット用トイレを予め用意してあるって、普通の散歩じゃない]

[こんなの違う]

[…ビニール袋とスコップ、使えないなら、必要なかったな…]

珍しく愚痴をこぼして、がっかりしていた。

兄さんは、『兄さんが思う、ペットの散歩』がしたかったんだと思う。

まあ、その後も、(兄さんにとっては)残念なことに、仕様は変わらなかった。

利口なノワールは、外でもペット用トイレがあれば、そこで用を足していたから、兄さんの望む展開には、一度もならなかったな。

兄さんには悪いけど、この方法、僕は賛成だよ。

どうしてもしたくないわけじゃないけど、しなくていいならしたくない、というのが本音だ。

積極的にやりたいことではないかな。

ただ、兄さんがやりたいって言うんだから、やらせてあげればいいのに。とは、今でも思う。



兄さんの部屋に入ると、埃っぽい…なんてことは当然なく、三年前のままだった。

兄さんと僕の部屋は、配置も家具も殆ど変わらない。色や種類は違うけど。

プライベートの空間が、三部屋で一つになっているのは、家族全員共通だ。

ベヒシュタインのピアノ、端だけ隙間がある本棚、テレビ、ソファー、ローテーブル、カーペット。

キングサイズのベッド、クローゼット、ノワールのベッドとトイレ。

お風呂とトイレ、洗面所。

僕のお気に入りは、ピアノと本棚がある、兄さんの『好き』で構成された部屋。

ノワールがいれば、完璧だろう。

[寂しくなったら、兄さんの部屋に行っていい?]

[いいよ]

[ベッドで寝てもいい?]

[うん。楓の好きに過ごしていいよ]

[ありがとう]

(…兄さんに嘘吐いちゃったな)

寂しい時だけじゃなくて、毎日入り浸っていた。

(この部屋は、兄さんそのものだから。…寧ろ、ここにしか、兄さんの痕跡がない)

一年半も住んでいたのに、部屋にしか形跡がないなんて、兄さんらしいよ。

(きっと、いつでも出て行けるようにしていたんだろう…。帰ってくるって、僕と約束したから、処分しなかっただけで、本当は何も置いていかないつもりだったに違いない)

…この家は、兄さんの帰る場所には成り得なかった、ということだ。

兄さんの心情を考えると、仕方がないのかもしれないけれど…。

仮に僕が兄さんの立場なら、安住の地には程遠いだろう。

(…気にすることなんか、一つもないのにね)

父さんにとって、兄さんのお母さんと兄さんが本命で、僕らは義理なんだから。

(邪魔だったのは、僕と母さんの方だよ)

最愛を見付けた僕も、父さんの気持ちが理解できる。その考え方も生き方も。

好きだった時には知らなかったのに、嫌いになって分かるとは、皮肉だね。


(兄さん)

最も愛しい人。

(母さん)

兄さんの次に、大好きだった人。

(父さん)

好きだったけど、嫌いになった人。

(ノワール)

可愛い子。

(もう、僕の大切な人、兄さんだけになっちゃった)

(…僕は酷い人間だから、それでも良かったと思うんだ)

(母さんを失っても、父さんを嫌いになっても、兄さんと会えて良かった)

(兄さん以外は、何も要らない)

(兄さん以上に、大切なものはない)

(兄さんだけが、僕を幸せにしてくれる)

(神楽の愛が呪いで、最愛を見付けると狂うって言われるのは、こういうところなんだろうね)

(…僕を生かすも殺すも、兄さん次第だよ)

(だから、)

(約束、忘れないで)



「……さびしいよ、にいさん」





こうして、楓が病んでいく…(今更)

奏も楓も(要も)、心は過去に置いてきぼりです。

それが幼少期の二人は、必然的に幼い部分が、少し残っています。

奏に対して駄々っ子になる楓、彼方に対して(響と同じように)甘える奏。

女々しいわけではなく、幼児っぽいです(といっても、幼児の時は、全く手がかからない子たちでしたが)

とりあえず、楓は奏が傍にいれば、それだけで(色々と)安定するので、一緒にいましょう、って感じですね。

彼方は…うん。出来る限り、楓の前に現れないようにしようか(無理ゲー)


ノワールと一緒にいる時は、年相応な奏(七~八歳)

響が亡くなる前の、無邪気な子供だった頃に、戻ってます。

表情筋が一番仕事する。


奏のピアノと楓のピアノは種類が違います。

奏は、ベヒシュタイン…「ピアノのストラディバリウス」といわれる、音の透明感が素晴らしいドイツ最大のブランド。

楓は、スタインウェイ&サンズ…「世界最高峰のピアノを作る」という理念のもと頂点に君臨し続ける、ピアノのトップメーカー。


寝室には、ノワール関連のものが多数ありましたが、ベッドとトイレ以外は、楓が引き継いで、持って行き、今は置いてません。

「ノワール、奏と一緒に寝るから、ベッド必要ないんじゃ…」というツッコミはなしで(^^;

ノワールは奏としか寝ないので、ベッドは必要なんです。


誰も考えてないと思いますが、一応楓の為に明言しておきます。

楓は変態ではないので、奏のベッドで変なことはしてません。今後もしません(匂いを嗅ぐはセーフ。ハァハァしてないし。洗いたての洗濯物を嗅ぐのと同じ感覚です)

奏、良かったね!弟が変態じゃなくて!変態だったら、ねぇ…?アウトでーす。

…そういえば、変態キャラ、いないな。

凛は腐男子としては変態だけど、三次元(現実)では変態じゃないし…。

変態の一人や二人いないと、インパクトに欠けますかね…?

いや、いるにはいるんだけど、出る機会がないというか。ほぼモブっていうか。

もしかして、惜しいことしたかな…。

…まあ、いいか!


楓視点の話は、あと二回で終わる予定です。

彼方視点は一話なので…。

今年中に書き終わりたかったですが、難しそうです。


それと、年末に(12月24日0時~31日0時まで)リクエストを受け付けます。

小ネタか小話か小説かは、その時の私次第なので、残念ながら出来は微妙かもしれませんが…(いつスランプに陥るかは、私にも分かりません…)

奏受けで、R18以外(ガッツリ本番は未だに書けません。練習はしていますが、どうも、こう…「違う!全然エロくない!やり直し!」ビリィッ!って感じで、上達しません。エロの神様に全力で逃げられているのか…?)なら、書きたいです。

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