隠れヤンデレは自制しながら、鈍感幼なじみを溺愛する

知世

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不安と恐怖と決心

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俺は頭を抱えていた。

(どうしよう…)

今日は色々あって、未だに混乱している。

(だって、純が、…ああもう!)

とんだ爆弾発言だった。

頭の中がぐちゃぐちゃになってしまうくらい。

[純は慶が好き。大輝は聖が好き。同じ好き]


純が慶くんを好き過ぎて、[純、慶くんのこと、好きなんじゃないの?]冗談で言ったら、[? 純、慶のこと、好きだよ][それは知ってるよ。俺が言いたいのは、まるで恋してるみたいだな、って][こい?][魚の鯉じゃないぞ。恋愛の恋][恋…][あ、あれ…?否定しないの?][慶の好きだけ違うの、恋だから…?][おーいっ。戻ってこーい][…大輝。純、慶のこと、好き。恋してる][ふぁっ!?ま、マジで?えっ、マジ!?][うん][(ヤバい!!自覚させちゃったよ!)]後悔したところで、後の祭り。

親友の恋を自覚させてしまった…しかも、男同士の険しい道…やっちゃった!いや、だって、まさか、冗談が本当だったとか思わないよ!そりゃ、確かに、純は慶くんを猫可愛がりしてたけど…してたけど!弟とか、猫みたいな感じだと思ってたんだよ!

(あああ…!)内心頭を抱え、プチパニックな俺に、純が更に爆弾を投下してきた。

[ん…? ああ、そっか。…純は慶が好き。大輝は聖が好き。同じ好き]

[why!?]

Japanese people!

俺も日本人だけど。つい、ノリで。

[ほわ…?]

[な、何で?何でそんな、いきなり…]

[大輝、聖大好き。一番好き。純も慶が大好き。一番好きだ。同じ]

[お、同じだけど…同じだけど、違うよ…]

[? どう違うの?]

[聖は、幼なじみで、親友で…大好きだけど、恋とは、違う…と思う…]

言いながら、だんだん、不安になった。

(本当に違う?聖がいないと、楽しいことも、どこかつまらないなんて、幼なじみとしても、親友としても、ちょっと、おかしいんじゃないの?でも…俺が聖に恋してるとしたら、そんなにおかしくない、かも)

今まで思いもしなかった考えに愕然とした。

自分の気持ちに気付いたから。

キャパオーバーで、呆然としたまま純と別れて、ふらふら家に帰ると、頭を抱えた。


どうしよう?どうすればいい?

「聖に電話…」

ってバカ!バカなの?いやバカだけど。聖のことが恋愛感情で好きかもしれない、って悩んでるのに、本人に相談できるわけないじゃん!

そもそも何て言うの?

―聖のことが好きなんだけど、どうしたらいい?

知るか!で終わりだよ。

いくら聖が俺に甘いからって、ドン引きされるわ。

友情にヒビが入る!


こういう時は…。

「アル~。助けて…」

神様仏様アルト様!

〔まずは落ち着いて。何があったの?〕

開口一番、情けない声を上げた俺に、アルは優しく問い掛けてくる。

やだ、イケメン。

[惚れてまうやろ~!]

芸人さんの叫び声が脳裏を過りつつ、とりあえず深呼吸して、気持ちを落ち着かせた。

「あのさ…ビックリすると思うし、引いちゃうかもしれないんだけど、アルに相談したくて…」

〔うん。聞かせて?〕

「…その、俺…。…俺…」

〔大丈夫だよ〕

「え?」

〔私は大輝が好きだから。驚くことも引くこともないとは言い切れないけど、嫌いになったりしないよ。それだけは約束する〕

「アル…。アルがイケメン過ぎて、二度目の惚れてまうやろが聞こえてきた」

〔ん?〕

「や、何でもない」

アルはお笑い見ないから、芸人さんのネタは分からないんだ。

「…俺さ、聖のこと、す、す、好き、みたい。いわゆる恋愛的な意味で」

〔…うん〕

「……アル?」

〔なに?〕

「えっと…、聞こえた?」

〔聞こえたよ〕

「あの、…俺、どうしたらいいと思う?なんか、頭ん中ごちゃごちゃして、どうすればいいのか、分からないんだ…」

〔大輝はどうしたいの?〕

「俺?」

〔そう。現状維持か、変化か。大輝の望みは何?〕

「俺は…現状維持、かな。聖のいない人生なんて考えられない…」

〔それでいいの?〕

「う、うん…」

〔本当に?〕

「…アルも、俺のことお見通しなんだね。…本当は、伝えたいよ」

「好きだよ、とか、ずっと一緒にいたい、とか、聖も俺のこと好きになって、とか…言いたい」

〔でも、怖いんだね〕

「うん…。怖い。聖に嫌われるのも、気持ち悪いって思われるのも、怖いよ」

〔…大輝はポジティブだけど、たまにネガティブになるね〕

「よ、よくご存知で。ま、ネガティブっていうか…意外と現実的かも」

〔そうだね。―固定観念に囚われているとも言えるけれど〕

「固定観念?俺、そんな頭固くないよ」

〔…人間は異性を好きになるのが普通。同性を好きになるのは悪いことではないけど、普通でもない。そう思ってない?〕

「そう、かも…。…いや、そうなんだろうね。でも、悩んでる理由は、それだけじゃないよ。聖に嫌われたら、俺は…全てを失ってしまう。大切な幼なじみも、一番仲良しな友達も、好きな人も…全部、無くなるんだ。…俺、聖に嫌われたくない」

〔ねえ、大輝。聖が大輝を嫌いになると思う?私は思わない。大輝の良いところも、良くないところも、一番知っているのは聖だよ。大輝のことを誰よりも理解している聖が、大輝の想いを、気持ち悪いだけで済ませるわけがない。…違うかな?〕

「…違わない。聖は、ちゃんと受け止めて、返事をくれる」

〔そうだろうね〕

「アルト。話を聞いてくれて、ありがとう。俺、聖に告白してみる。じゃないと、後ろめたくて、聖を避けるようになると思う…。気まずくなっても、大学は違うから、あんまり会わなくなるし。…振られたら、甘えてもいい?」

〔いいよ。いっぱい甘やかしてあげる〕

(イケメンかよ…。ああ、イケメンだった。初めて会った時、儚げな美少年~なんて思ってたけど、内面はカッコいいんだよな、アルって)

でも、美少年フェイスから中性的なイケメンになるとは…結局美形だけど。


よく考えなくても、俺の周り、イケメンパラダイスだ。

聖は正統派美形。さらっさらの黒髪、切れ長の目、カッコよくて綺麗な顔、180cmの長身、抜群のスタイル。手足がすらっと長い。実は細マッチョで、脱いだら凄い。着痩せするタイプ。たとえ好みじゃなくても、誰もがイケメンだと認める美形だ。『超絶美形』って、聖の為にある言葉だと思う。

アルは綺麗。とにかく綺麗だ。ちょっと癖のある、ゆるふわな銀髪、深い色合いの赤い目、背は俺より高くなったな…175cm。170の俺は平均です。低くない。普通だ。入学当初は160だったのに…。負けた。身体は華奢なままだけど、護身用に空手を習っているからか、筋肉はついてる。必要なところに、必要な分だけ、って感じ。

純は精悍な男前。カッコいい。同じ男から見ても、凄くカッコいいな、と思う。目付きはやや鋭いけど、にこっとした笑顔はちょっと可愛い。…なるほど、これがギャップ萌えか。188cmとか、背高すぎ!身長分けて!身体は細マッチョなんだけど、服着てても、うわっ、絶対イイカラダだろうな、って分かる。一人の男として羨ましい、そんな男性だ。

慶くんとは話したことないけど、純から話を聞いたり、ちらっと見ての感想では、猫みたいな美少年。くりっとした目は大きくて可愛い。見掛けた時、大抵不機嫌そうだから、恐ろしいことになってるけど…。ツヤツヤした髪は、手入れされた猫の毛並みみたい。身長は160くらいだけど、中学生だしね。これから伸びるよ。身体は意外と鍛えてるんだよな。アルと似てる。純曰く[煩い奴らを黙らせる(物理)為]らしい。本人が言ったまんまだって。…不良怖い。いや、でも、自分からは喧嘩吹っ掛けないらしいし。売られた喧嘩は十倍にして返す、らしいけど。…慶くん怖い。[怪我治って良かった。嬉しい]とか呑気に言ってる場合じゃないと思うよ、純!

…マジでイケパラじゃん。俺、浮きまくりだね。

だって、見た目も身長も身体も普通だよ?唯一の特徴は、運動神経がそこそこ良いってだけ。あと、勉強苦手。聖に家庭教師してもらわなきゃ、高校入れなかった。最初E判定だったし、担任も遠回しに(めっちゃ言いにくそうだった。先生ごめん)諦めろと言ってきたし。ちなみに、大学も聖先生のお陰で合格しました。俺に甘い聖は、勉強を教えてくれる時だけ、厳しくなる。優しいけど、スパルタ。(内心半泣きで)猛勉強しました、はい。対等になるどころか、負んぶに抱っこの状態…聖には頭上がんない。

キラキラしたイケメンズの友達が普通の男。

…浮く。これは浮く。

超絶美形の幼なじみに、中性的イケメンな友達。純は店でしか会わないから、ノーカン。

友達少ないのに、両手に花ならぬ、両手にイケメン。カオス。

けど…聖とも、アルとも、気軽に会えないんだ、もう。


―来週の卒業式。

聖に告白して、玉砕して、アルに思い切り甘えさせてもらったら、明るい大学生活に向けて、気持ちを切り替えないと。

(聖…。友情をぶち壊す俺がお願いするのは、本当に図々しいんだけど…どうか、俺を嫌いにならないで)

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