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あぶない夢
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「俺、世界の悪を滅ぼさなあかんことになったわ、悪って言ったらどうせ都会のボスキャラやろ、俺、都会行きたいなぁ」
「その前に、この村の災いを退けてほしいもんじゃが……」
「なーにいっとんのや、じいさん、そんな昔の村人が考えたハッタリ、嘘っぱちに決まっとるで」
「でもな、山の麓の祠には、呪いの札が貼られておるし、災いとはその札が原因とされていて、いわくつきなんだぞい」
「ペリッとはがしたらええやん、その札」
「それがそうもいかんのだ、呪いを解除しないと、それははがれん。よほど腕利きの魔法使いでないと、解除の呪文が唱えられないのだ」
「魔法使いって、またそんなファンタジーな……ふぁあ、何でか知らんけど体が疲れとるな、いっかい死んだからかな、ちょっと寝ていい? 寝床ある?」
じいさんは気前よく二階のベッドを貸してくれた。じいさんの寝室だという。しかしもう一部屋あって、そちらは誰の部屋かと問うと、ベンじいさんは笑顔で答えた。
「この家には孫娘が一人おってな、うちは一応シャーマンの家系ということになっとるし、その孫娘は村の重要な祈祷師の役割を担っておるから、その仕事で今は出払っているのじゃ」
「シャーマンの孫娘ねぇ、……お、この写真の子かいな」
じいさんの寝室にあった写真立てを手に取る。孫娘の顔立ちはやはり洋風だったが、しかし外人ピーポーには珍しく長い黒髪をして、瞳も黒い。肌は透き通るように白かった。
「ちょうど、お前さんと同じ17歳じゃよ。名前はネネ」
「あ、そうなんや。……うーん、きれいな顔しとるのに、仏頂面しとるな、この孫娘。写真撮られるん嫌なタイプ?」
「……昔は笑顔の絶えない子だった」
じいさんは椅子に座り、うなだれた。なんやこれ、悲しい話始まるやつか、悲しいBGM流れてくるやつか!?
「……その子の父親は戦争で死んでしまった。母は流行病で亡くなり、しだいに笑わなくなってしまったんじゃよ……。今ではただ、老人たちが住まう田舎の暮らしを淡々とこなしている、そんなふうに、人生を嫌がるような顔つきでな……」
◇◆◇◆
めちゃくちゃシリアスな話を聞いて、ぶっちゃけ悲しくなってもて、あんまり寝れんかった。でも疲れてるし、いちおう仮眠ぐらいはできたと思う。起きたらすでに夜だった。
寝ているとき、妙な夢を見た。悲しい夢だ。たぶんベンじいさんが悲しい話しやがるからこんな夢見たんやと思うけど、とりあえず夢の内容はざっとこんな感じ。
まず、朝方に騎馬兵の小隊がぞろぞろと山間をゆく。敗残兵だ。こいつらは敗走する中で敵国の小さな村を見つける。戦力を一切持たない弱い村だ。敗戦の苛立ちをもっていた兵たちは、その村に火の矢を放ったり、建物を破壊し、村人を惨殺して、血祭りに上げてしまう。
恐ろしさで目が覚めた。戦争のとばっちりを受けた村の風景に見覚えがあった。このアルル村だ。リアルな夢で、本当に怖かった、夢でよかったよ。
放心状態でいると、またスマホが鳴る。この非通知の番号は神様からだ。
「なんや神様、なんか用か」
「勝手に電話きるなや、お前に連絡つけるのにどんだけ手続きいると思ってんねん、どつくぞボケ、ワイはこっちの世界の神や、そっちの世界の神とちがうし、世話やかすなや」
「はぁ、すんません」
「ワイには説明責任があんねん、尻切れトンボみたいになってもたからもう一回言うで、お前には「スキル」が三つ備わっとる。スキルって言うのは、まあ、平たく言えば才能やな」
「才能? 聞き捨てならんな、三つと言わず、もっとちょうだいよ」
「あかん、ほしがるな。それより、そのスキルの内訳やけど、一つは「鑑定」、一つは「嘘っぱち」、もう一つは「予知夢」や」
「……わっと、どぅー、ゆー、みーん?」
「頭ん中で「鑑定」っていうてみい」
俺は頭の中で「鑑定」とつぶやいてみた。すると目の前にとつぜん、ゲームのステータス表示のようなものが浮かび上がった。
【道明寺清晴 17歳 男】
《職業》無職
《基礎能力》生命力 30/30
腕力 25
知力 3
走力 40
野心 50
社交性 35
ビジネス力 30
統率力15
《スキル》鑑定 D
嘘っぱち C
予知夢 D
なんじゃこら、と言うと、神様が親切にも解説をくれた。
神様によると、スキル「鑑定」は、意識した対象のデータを見ることのできる才能らしい。対象を選ばないと、自動的に自分のデータが浮かび上がって見える。スキルのランクはDから始まって、Sが最上らしい。
「基礎能力は体鍛えたら変動するし、スキルはあとから覚えたりできるからな、まあその辺は努力次第やわ。嘘っぱちは嘘を相手に信じ込ませるスキルやから、まぁ嘘ついたときに効果を実感せえや、ほんで予知夢やけどな、夢の中でちょっと先の未来が見えるって言うあれのことな、まだDランクやから、ほんのちょっと先のことしか見えんし、Dやったら明日のことしか分からんレベルやけど、まあスキルは使い込んだらランクと性能上がっていくから最初はこんなもん、説明は以上や」
「……ちょっとまて、なんやこの、知力3って」
「え? ……まぁ、それは、なんていうか、……うーん」
「鑑定スキル壊れとんのちゃうか、さすがに3はおかしいやろ、飛び抜けて低いし、表示間違っとるで」
「……いや、スキルが壊れるとか聞いたことあらへんけど」
「ほなあれか、つまり、この道明寺清晴が正真正銘のアホやと、そうおっしゃりたいんか」
「……」
「おい」
「……ブツっ……――ツー、ツー」
「おおぉぉいっっ! 勝手に切るなぁぁぁぁぁあ!」
確かに俺はアホだった。全然勉強してこなかったし、ふてくされて、半分くらい不良だったから、しかたない。でも3って、……3ってさぁ。
頭をかきむしり、イライラを落ち着けてから、冷静になってから、ふと疑問がわいた。
(予知夢って、俺が異世界転生したときから身についとるスキルなんかな、せやったら、さっき見た夢って……)
「その前に、この村の災いを退けてほしいもんじゃが……」
「なーにいっとんのや、じいさん、そんな昔の村人が考えたハッタリ、嘘っぱちに決まっとるで」
「でもな、山の麓の祠には、呪いの札が貼られておるし、災いとはその札が原因とされていて、いわくつきなんだぞい」
「ペリッとはがしたらええやん、その札」
「それがそうもいかんのだ、呪いを解除しないと、それははがれん。よほど腕利きの魔法使いでないと、解除の呪文が唱えられないのだ」
「魔法使いって、またそんなファンタジーな……ふぁあ、何でか知らんけど体が疲れとるな、いっかい死んだからかな、ちょっと寝ていい? 寝床ある?」
じいさんは気前よく二階のベッドを貸してくれた。じいさんの寝室だという。しかしもう一部屋あって、そちらは誰の部屋かと問うと、ベンじいさんは笑顔で答えた。
「この家には孫娘が一人おってな、うちは一応シャーマンの家系ということになっとるし、その孫娘は村の重要な祈祷師の役割を担っておるから、その仕事で今は出払っているのじゃ」
「シャーマンの孫娘ねぇ、……お、この写真の子かいな」
じいさんの寝室にあった写真立てを手に取る。孫娘の顔立ちはやはり洋風だったが、しかし外人ピーポーには珍しく長い黒髪をして、瞳も黒い。肌は透き通るように白かった。
「ちょうど、お前さんと同じ17歳じゃよ。名前はネネ」
「あ、そうなんや。……うーん、きれいな顔しとるのに、仏頂面しとるな、この孫娘。写真撮られるん嫌なタイプ?」
「……昔は笑顔の絶えない子だった」
じいさんは椅子に座り、うなだれた。なんやこれ、悲しい話始まるやつか、悲しいBGM流れてくるやつか!?
「……その子の父親は戦争で死んでしまった。母は流行病で亡くなり、しだいに笑わなくなってしまったんじゃよ……。今ではただ、老人たちが住まう田舎の暮らしを淡々とこなしている、そんなふうに、人生を嫌がるような顔つきでな……」
◇◆◇◆
めちゃくちゃシリアスな話を聞いて、ぶっちゃけ悲しくなってもて、あんまり寝れんかった。でも疲れてるし、いちおう仮眠ぐらいはできたと思う。起きたらすでに夜だった。
寝ているとき、妙な夢を見た。悲しい夢だ。たぶんベンじいさんが悲しい話しやがるからこんな夢見たんやと思うけど、とりあえず夢の内容はざっとこんな感じ。
まず、朝方に騎馬兵の小隊がぞろぞろと山間をゆく。敗残兵だ。こいつらは敗走する中で敵国の小さな村を見つける。戦力を一切持たない弱い村だ。敗戦の苛立ちをもっていた兵たちは、その村に火の矢を放ったり、建物を破壊し、村人を惨殺して、血祭りに上げてしまう。
恐ろしさで目が覚めた。戦争のとばっちりを受けた村の風景に見覚えがあった。このアルル村だ。リアルな夢で、本当に怖かった、夢でよかったよ。
放心状態でいると、またスマホが鳴る。この非通知の番号は神様からだ。
「なんや神様、なんか用か」
「勝手に電話きるなや、お前に連絡つけるのにどんだけ手続きいると思ってんねん、どつくぞボケ、ワイはこっちの世界の神や、そっちの世界の神とちがうし、世話やかすなや」
「はぁ、すんません」
「ワイには説明責任があんねん、尻切れトンボみたいになってもたからもう一回言うで、お前には「スキル」が三つ備わっとる。スキルって言うのは、まあ、平たく言えば才能やな」
「才能? 聞き捨てならんな、三つと言わず、もっとちょうだいよ」
「あかん、ほしがるな。それより、そのスキルの内訳やけど、一つは「鑑定」、一つは「嘘っぱち」、もう一つは「予知夢」や」
「……わっと、どぅー、ゆー、みーん?」
「頭ん中で「鑑定」っていうてみい」
俺は頭の中で「鑑定」とつぶやいてみた。すると目の前にとつぜん、ゲームのステータス表示のようなものが浮かび上がった。
【道明寺清晴 17歳 男】
《職業》無職
《基礎能力》生命力 30/30
腕力 25
知力 3
走力 40
野心 50
社交性 35
ビジネス力 30
統率力15
《スキル》鑑定 D
嘘っぱち C
予知夢 D
なんじゃこら、と言うと、神様が親切にも解説をくれた。
神様によると、スキル「鑑定」は、意識した対象のデータを見ることのできる才能らしい。対象を選ばないと、自動的に自分のデータが浮かび上がって見える。スキルのランクはDから始まって、Sが最上らしい。
「基礎能力は体鍛えたら変動するし、スキルはあとから覚えたりできるからな、まあその辺は努力次第やわ。嘘っぱちは嘘を相手に信じ込ませるスキルやから、まぁ嘘ついたときに効果を実感せえや、ほんで予知夢やけどな、夢の中でちょっと先の未来が見えるって言うあれのことな、まだDランクやから、ほんのちょっと先のことしか見えんし、Dやったら明日のことしか分からんレベルやけど、まあスキルは使い込んだらランクと性能上がっていくから最初はこんなもん、説明は以上や」
「……ちょっとまて、なんやこの、知力3って」
「え? ……まぁ、それは、なんていうか、……うーん」
「鑑定スキル壊れとんのちゃうか、さすがに3はおかしいやろ、飛び抜けて低いし、表示間違っとるで」
「……いや、スキルが壊れるとか聞いたことあらへんけど」
「ほなあれか、つまり、この道明寺清晴が正真正銘のアホやと、そうおっしゃりたいんか」
「……」
「おい」
「……ブツっ……――ツー、ツー」
「おおぉぉいっっ! 勝手に切るなぁぁぁぁぁあ!」
確かに俺はアホだった。全然勉強してこなかったし、ふてくされて、半分くらい不良だったから、しかたない。でも3って、……3ってさぁ。
頭をかきむしり、イライラを落ち着けてから、冷静になってから、ふと疑問がわいた。
(予知夢って、俺が異世界転生したときから身についとるスキルなんかな、せやったら、さっき見た夢って……)
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