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第13話「先物契約、市場を揺るがす新戦略」
しおりを挟む大市初日の朝、フェルミナは祝祭のような熱気に包まれていた。大環の広場では盛大な開市式が行われ、商工ギルドの長老たちが伝統的な儀式を執り行っていた。
「素晴らしい光景だ」
ガルドが感嘆の声を上げた。彼らは大環の一角に設けられた自分たちの店舗スペースを整えながら、式典を見守っていた。
「確かに」
ライアンは頷きつつも、その目は冷静に周囲を分析していた。大市初日、多くの商人は最高級の宝石や美術品、珍しい魔法具などを展示し、富裕層の注目を集めようと競い合っている。
「我々も商品を並べましょうか?」
「いや、今日は様子見だ」
ライアンは店先に小さなテーブルと椅子を置いただけで、商品は一切展示しなかった。代わりに「新たな取引方式相談所」という看板を掲げた。
「商品を出さないのですか?」
「商品ではなく、概念を売るんだ」
ガルドは首を傾げたが、ライアンの判断を信頼して従った。
朝から昼過ぎまで、彼らの店の前を多くの人が通り過ぎたが、ほとんどは不思議そうな顔をして立ち去るだけだった。ライアンはそれを気にする様子もなく、じっと時を待っていた。
「あの…」
午後も遅い時間、一人の中年男性が恐る恐る近づいてきた。質素ながらもしっかりとした服装から、小規模な地主か農場経営者と見て取れた。
「何かご相談ですか?」
ライアンは親しみやすい笑顔で迎えた。
「はい…その、新たな取引方式というのが気になって」
「どうぞお座りください。お名前は?」
「マルコス・ヘイブンです。フェルミナ郊外で小麦農場を営んでいます」
「ライアン・ミラーです。王都から来ました」
二人は軽く握手を交わした。
「マルコスさん、あなたの農場経営で最も大変なことは何ですか?」
唐突な質問に、マルコスは少し戸惑ったが、すぐに答えた。
「そうですね…収穫後の価格変動です。豊作の年は価格が暴落し、せっかくの収穫も赤字になることも…」
「その通りです。農業の最大のリスクは『価格の不確実性』ですね」
ライアンは頷き、紙に図を描き始めた。
「では、もし収穫前に、価格が確定していたらどうでしょう?」
「それは…理想的ですが、不可能でしょう」
「不可能ではありません」
ライアンは微笑んだ。
「私が提案するのは『先物契約』というシステムです。今、来季の収穫物について、数量と価格を事前に契約する。農家は安定した収入を確保でき、商人は仕入れ計画を立てやすくなる」
マルコスは興味深そうに聞き入った。
「具体的には?」
「例えば、あなたの農場では来季、小麦を何トン収穫できる見込みですか?」
「良い年なら約50トンです」
「では、その50トンのうち30トンについて、トンあたり15シルバーで来年の収穫時に買い取る契約を今結びませんか?」
マルコスは目を見開いた。
「15シルバーは…平均的な相場ですね」
「そうです。豊作で価格が10シルバーに下がっても、あなたは15シルバーで売れる。不作で20シルバーになっても、契約分は15シルバーです」
「残りの20トンは?」
「自由に市場で売れます。つまり、安定収入と市場機会の両方を得られるのです」
マルコスは思案顔になった。
「興味深い提案ですが…前金はありますか?」
「契約金として1トンあたり1シルバーをお支払いします。つまり、今日30シルバーをお渡しし、収穫時に残りの14シルバー×30トンをお支払いします」
「保証は?」
「正式な契約書を作成し、フェルミナ商業ギルドに登録します。私が契約を破れば、違約金として全額の二倍をお支払いする条項も含めます」
マルコスの目が輝いた。
「…試してみる価値はありそうですね」
***
その日の終わりまでに、ライアンは5人の農場主と先物契約を結んだ。小規模ながら、フェルミナ市場では前例のない取引だった。
「興味深い動きをしているな」
夕刻、市場監督官のクラウディウスがライアンの店を訪れた。公式の制服を着た中年の男性だ。
「初めまして、市場監督官様」
ライアンは丁重に挨拶した。
「君の『先物契約』について聞いた。説明してもらえるかな」
ライアンは詳しく契約内容を説明した。クラウディウスは時折頷きながら、慎重に話を聞いていた。
「法的には問題ない。実際、理にかなった取引だ」
彼は感心した様子で言った。
「しかし、フェルミナでは前例がない。一部から苦情も出ている」
「どのような苦情でしょうか?」
「『市場の秩序を乱す』というものだ」
クラウディウスは意味ありげに言った。言外に「黄金翼商会からの圧力」が示唆されていた。
「私の取引は完全に合法です。むしろ、生産者と商人双方に利益をもたらす画期的な契約だと自負しています」
「私もそう思う」
監督官は予想外の応援を示した。
「フェルミナの市場は革新が必要だ。だが、用心したまえ。既得権益を持つ者たちは変化を嫌う」
警告を残して、クラウディウスは去った。
***
「どうやら監督官は我々の味方のようだ」
ガルドが言った。
「単純に味方ではない。彼は『市場の健全性』を重視しているだけだ」
ライアンは冷静に分析した。
「大事なのは、彼が『先物契約』を正当な取引と認めたことだ。これで明日からさらに攻勢をかけられる」
「明日の戦略は?」
「情報拡散だ。今日契約した農場主たちに、仲間への紹介を依頼した。明日は郊外の農業組合の代表も来るはずだ」
ライアンの目が鋭く光った。
「そして、契約内容を少し発展させる」
***
大市2日目、予想通り彼らの店の前には多くの農場主が集まっていた。
「昨日の契約者から話を聞いて来ました」
「先物契約について詳しく知りたい」
「我々の組合全体で契約できないか?」
様々な声が上がる中、ライアンは冷静に対応した。
「皆さん、お一人ずつご説明します。まず、昨日の基本契約に加え、今日は新たなオプションもご用意しました」
彼は新しい契約書を示した。
「基本的な先物契約に加え、『価格変動ボーナス』という条項を加えました。市場価格が契約価格を20%以上上回った場合、その超過分の一部を農家にも還元するというものです」
農場主たちからどよめきが起きた。
「つまり、安定性を確保しつつ、高騰時の利益も一部得られる…」
「その通りです。リスクとリターンのバランスを取る仕組みです」
ライアンの説明は明確で、論理的だった。彼の言葉には説得力があり、農場主たちは次々と契約に興味を示した。
午前中だけで20件以上の契約が成立。午後には農業組合の代表との大型契約も結ばれた。
「驚くべき進展です」
ガルドは興奮気味に言った。
「まだ始まったばかりだ」
ライアンは冷静だった。
「我々の真の目的は単なる先物契約ではない。フェルミナの『情報の流れ』と『資金の流れ』を変えること」
彼の言葉には深い意味があった。
***
「何事だ?あの騒ぎは」
黄金翼商会の豪華な会議室で、グランツ総帥が窓から見える人だかりを指差した。
「ライアン・ミラーという商人の店の前です」
秘書が報告した。
「昨日から『先物契約』という新しい取引で農場主たちの注目を集めています」
「先物契約?」
グランツは眉をひそめた。
「まだ収穫されていない作物の買取権を事前に契約するというものです。農場主たちに前金を払い、収穫時の価格を固定する…」
「馬鹿な!」
グランツは机を叩いた。
「そんなことをすれば市場の価格形成が歪む!我々の穀物取引はどうなる?」
「既に多くの契約が成立しています。特に南部の農場主たちが…」
「南部?」
グランツの顔が強張った。南部は黄金翼商会の穀物調達の主要地域だった。
「マーカスを呼べ。すぐに」
息子のマーカスが現れると、グランツは命令した。
「あの男を止めろ。合法的な手段で」
「どうすれば?」
「我々も先物契約を提示する。より高い価格で農場主たちを引き抜け」
「しかし父上、それでは利益が…」
「利益は二の次だ!フェルミナの市場支配が脅かされているのだ」
グランツの目には怒りの炎が燃えていた。
***
午後遅く、ライアンの店に一人の男が現れた。黄金翼商会の幹部、マーカス・グランツだ。
「ライアン殿」
彼は冷たく挨拶した。
「マーカス様、何のご用件でしょう」
「警告だ。君の『先物契約』は市場の秩序を乱している」
ライアンは穏やかに微笑んだ。
「秩序とは何でしょう?自由な取引こそ市場の本質ではありませんか」
「フェルミナには伝統がある。新参者が勝手に新しいルールを持ち込むべきではない」
「ルールではなく、取引方法です。農家も喜び、私も利益を得る。皆が得をする取引に何の問題が?」
マーカスは言葉に詰まった。
「我々も先物契約を提供する。トンあたり20シルバーだ」
ライアンは眉を上げた。彼の提示価格は15シルバーだった。
「素晴らしい。農家にとってさらに良い条件ですね」
マーカスは混乱した様子だった。敵対的な反応を期待していたのだろう。
「…君は構わないのか?」
「もちろん。市場競争は健全なものです。しかし…」
ライアンは声を落とした。
「黄金翼商会が全ての農場と契約できるほど資金があるとは思えませんが」
マーカスの顔色が変わった。確かに、高値での大量契約は黄金翼商会にとっても大きな負担になる。
「それに、契約は『履行』されなければ意味がありません。あなた方が契約を守る保証はありますか?」
「黄金翼商会の名誉にかけて…」
「名誉より大切なのは『制度的保証』です」
ライアンは商業ギルドの公式契約書を示した。
「私の契約には違約金条項があり、ギルドが保証しています。農家たちはそれを信頼しているのです」
マーカスは言葉を失った。彼らはそこまで考えていなかった。
「さらに、私の契約には『価格変動ボーナス』があります。価格高騰時の利益を農家と分け合う仕組みです」
ライアンの説明を聞いた周囲の農場主たちから、感嘆の声が上がった。
「マーカス様、競争は歓迎します。しかし、単なる価格競争ではなく、契約の『質』で勝負しませんか?」
マーカスはライアンを鋭く見つめた後、何も言わずに立ち去った。
***
「あの男、恐るべき商才だ」
黄金翼商会に戻ったマーカスは、父に報告した。
「単なる価格競争に持ち込ませず、契約の『質』と『信頼性』で勝負を仕掛けてきた」
グランツは沈黙した。
「さらに悪いことに、市場監督官のクラウディウスが彼を支持している。『健全な革新』だと」
「くそっ…」
グランツは拳を握りしめた。
「あの東方の小僧…私を愚弄するか」
「父上、彼の目的は何なのでしょう?単なる穀物取引ではないはずです」
グランツは思案した。
「彼は市場そのものを変えようとしている。『先物』という概念を導入することで…」
彼は不安そうに窓の外を見た。
「金の流れを変えようとしているのだ」
***
大市3日目の朝、ライアンの店の前には前日以上の人だかりができていた。今度は農場主だけでなく、中小の商人たちも集まっていた。
「ライアン殿、我々も先物契約に参加できますか?」
一人の商人が尋ねた。
「もちろんです。商人間での先物取引も可能です」
ライアンは新たな契約書を示した。
「これは『二次市場』の概念です。農家から買い付けた先物契約を、商人間で売買できる仕組みです」
これは完全に新しい概念だった。まだ実物が存在しない商品の「権利」が、それ自体として取引される。
「つまり、収穫前から何度でも取引できる?」
「その通りです。価格変動の予測に基づいて、利益を得るチャンスが生まれます」
商人たちは興奮した。これは単なる商品取引を超えた、全く新しい市場だった。
午後までに、多くの商人が参加を表明。ライアンの「先物市場」は急速に拡大していった。
「市場監督官のクラウディウスが来られました」
ガルドが報告した。
「お通ししなさい」
クラウディウスは厳しい表情でライアンの前に立った。
「君の『二次市場』について、議論が起きている」
「問題があるでしょうか?」
「法的には問題ない。だが、これは…フェルミナの市場構造を根本から変える可能性がある」
ライアンは静かに頷いた。
「その通りです。より効率的で、透明性の高い市場へと」
クラウディウスは深く息を吐いた。
「ギルド長会議で検討された。結論としては、『監視下での実験的導入』が認められた」
これは大きな勝利だった。ライアンの「先物市場」がフェルミナの公式制度として認められたのだ。
「ありがとうございます。必ず市場の発展に貢献します」
クラウディウスは去る前に、小声で付け加えた。
「気をつけろ。グランツ家は簡単に諦めない」
***
夕刻、ライアンは一日の取引を終え、帳簿をまとめていた。
「今日だけで200件以上の契約。総額5000ゴールド相当の取引が成立しました」
ガルドが興奮気味に報告した。
「始まりに過ぎない」
ライアンは静かに言った。
「明日からが本番だ。先物市場が動き出せば、フェルミナの金融構造そのものが変わる」
彼の目には、遠い未来を見通す光があった。
「我々の目的は単なる利益ではない。『金融の力』を手に入れることだ」
ライアンは窓から夜のフェルミナを見下ろした。無数の灯りが輝く商業都市。その心臓部に、彼は全く新しい血液を注入し始めたのだ。
「明日の戦略は?」
「『証券化』と『レバレッジ』の概念を導入する」
ガルドには理解できない言葉だったが、ライアンの目に宿る冷徹な計算と野心は明らかだった。
彼は市場を揺るがすだけでなく、再構築しようとしていた。そして、その新しい市場の支配者となる—。
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