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より強くなるために

お披露目

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 木鬼・・は目の前に何故、聖剣使いの仲間であるレイとチビルが現れたのがわからなかった。

「お前達は……聖剣使いの腰巾着か」

「おい誰が腰巾着だ!」

「そうだそうだ!」

「でなければ金魚のフンか? どちらにしろ間違いでもなかろう」

 だが突然現れたレイとチビルに戸惑う事なく、木鬼は冷静に対応する。

「それで? 我が何故ここにいるとわかった?」

「わかったっも何も難しい事じゃあねえだろ」

「まずシオンからお前の事を聞いた時 おそらく魔王軍からリンの情報収集辺りを命令されたんだろ?」

「んでだ! そんな奴が日の出てる時に現れないだろうって事で日が沈んでからここに来たのさ」

「それならば直接聖剣使いを監視するという選択肢もあっただろ」

 木鬼の言う通り、それだけが目的であれば暗殺を狙う事もできるリンの監視の方が、情報も得られて理にかなっている。

「そこでもう一つの根拠さ! オレ様達がここに来た理由は聖剣『ゲイルグリーフ』だぜ?」

「盗まれたって聞いたからな どうせ魔王軍がらみだろうってことさ」

「そしてオレ様達が目をつけたのがこの神社ってわけよ」

「聖剣なんて呼ばれる代物だぜ? そんなお宝祭り上げたくもなるってもんよ 」

「城じゃなくてここの『神社』に置いてあったんだろうってな! もしかしてお前が盗んだんじゃね? と睨んだってわけよ!」

「どうよオレの推理! これで名探偵も腰を抜かす推理力にアニキも惚れ直すってもんよ!」

(まあ殆ど当てずっぽうだしオレ様が適当に考えただけなんだけど)

「さあて洗いざらい吐いてもらおうか! 血反吐吐きたくなかったらな」

 全てを解き明かしたと思っている自称名探偵に対して、動揺する事なく木鬼は答える。

「……それで我が犯人だと?」

「おうよ まんざら犯人ってのも間違いでもないんだろう?」

「だとしたら……どうする?」

「まあぶっちゃけた話し当たってようが外れてようがこの際どうでもいいんだよ」

 銃の引き金を引く。

 目視する事は出来なかったが、木鬼が既に闇夜に紛れて苦無を投げていたのをレイは読んでいた。

「オレが当てたいのはコイツだけなんでな」

「当てられるかな? 小娘」

「言わなきゃわかんねえか? 木偶の坊」

 地面から木々が、突然レイに向けて槍のごとく放たれる。

 それを躱すとその木めがけて球体の物を投げつけ、それが爆発する。

「爆弾か……」

「チビルは上に飛んで避難してな! コイツはオレがぶっ倒す!」

「ヘマすんなよ!」

「オイオイ……すると思うか?」

 互いにニヤリと笑いチビルは空に逃げ、レイは戦闘態勢に入る。

「話しは済んだか? 今のが最後の会話となるというのに」

「ならその時は手向けの花でも供えてくれんのかい?」

「そうだな 『オダマキ』はどうだ? 中々おもしろい形をしている」

「へぇ よく知らねえがありがとよ」

「レーイ! そいつが言った花の花言葉は確か『愚か者』だぞ!」

「よーし! ぶっ殺す!」

 遠回しな挑発がレイの心に火をつける。

 銃を機関銃に持ち替えて木鬼を狙い撃つ。

 数撃ちゃ当たるという考えだが、そう簡単には当たってくれない。

(奴は夜には慣れてる……けどタイマンにはそう慣れてないはずだ)

 普段諜報活動を専門にしているので、あれば真っ向からの戦いをする事は少ないとレイは睨んでいた。

(だったらこっちが攻めて攻めて攻めまくる!細けえこたあ考えるな!)

 目に見えないのであれば音を聞けばいい。微かな音も聞き逃さず、レイは木鬼に銃を向ける。

「ただの取り巻きと考えていたが……考えを改めなくてはな 充分に魔王軍の脅威となり得る存在だと報告しておこう」

「今頃変えたってもう遅いぜ?」

「それもそうか……お前はここで死ぬのだからな」

「いーや違う てめえがくたばるんだよ!」

 銃を持ち替え、引き金を引く。

 躱されるがその弾が着弾した場所から燃え上がる。

「火炎弾……!」

「弾ならいくらでもあるぜ! これがオレの能力だからな」

 レイは火や水といった属性を持つ魔法を使うことはできない。

 だが、銃火器を保存する・・・・という空間魔法に関しては非常に優れていた。

「名付けて『銃武器庫ガンボックス』! これとオレの射撃スキルの腕前が合わされば怖い者なしってな!」

「その慢心……実に愚かだ」

「今度は直接言ってくれてありがとよ お礼にバカの怖さ教えてやんよ」

 両手に構えた銃には先程と同じ弾が込められている。

 着弾すれば燃え広がる。これは木々を操る木鬼にとっては、まさに天敵である。

「オレの勝ちで決まりだろう?」

「果たしてそうかな?」

「すぐにわからせてやんぜ!」

 木鬼めがけて放たれた弾丸は、木鬼が出現させた木の壁によって阻まれる。

「そんな壁燃やしてやんぜ!」

「そうしてもらうと助かる」
 
 すると出現した木はいつのまにかレイを囲うようにして出現して、レイを閉じ込める。

 そして、その木に火がつくと次々に燃え移る。

「何!?」

「薄っぺらい自らの策に燃え尽きろ」

 当然自身の弱点など百も承知てある。

 ならばその対策法も、またそれを利用する事も考えている。

「まず一人 空に小悪魔を捕獲して任務に戻……」

 その時だった。

 木が燃え、炎の壁に囲まれた中から爆音が鳴り響く。

「おー爽快爽快! やっぱたまには大型の武器も使っとかないと錆びちまうぜ」

(まさか……そんな物まで所持してたとはな)

 そこにいたのは『ロケットランチャー』を構えたレイの姿だった。

「燃えやすいように乾いた枯れ木を使ったのは失敗だったな 閉じ込めるなら何重にもしとかねえと」

 手の内の出し合いはどちらも一歩も引かずに、まだ始まったばかりだった。
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