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風の都『カザネ』
二刀流
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聖剣を二本同時に出すという発想は、以前からリンにはあった。
だがそれに伴う代償があると、そう思っていからこそ、今まで使えなかった。
「二刀流がどこまでやれるか……お手並み拝見といこうかぁ!」
攻められた左側は、ガイアペインが防ぎ右手に持ったフレアディスペアをムロウに叩き込む。
鎌鼬によって、生身では受けられない。ならば身体を硬化させて受けられればいいのだが、その魔力が足りない。
ならばその魔力を補えればいい。
(聖剣の二刀流か……確かにそれなら魔力は十分だろう)
賢者の石は膨大な魔力が内包された奇跡の石だである。
そこから生み出された聖剣は、十分すぎるほどの魔力を持っている。
(だがその持ち主の魔力が持って無きゃ宝の持ち腐れだなぁ?)
元々魔力の無いリンは、自動的に賢者の石の魔力はリンの身体に蓄積されていた。
そのおかげで今まで扱えていたのだろうが、今現在その魔力がツヴァイとの戦闘により大きく消費していた。
おそらくではあるが、身体を治すのにも使われたのだろう。おかげで骨折などは異常な速さで治っていた。
(魔力は無限に湧くんだろうが常に無限ってわけじゃあねぇ 一時的に無くなることはある)
それを補うための聖剣の二刀流である。
聖剣を二本同時に展開する事で、二つ分の魔力を一気に解放させる。そうする事で二つ分の石の魔力を繋げているのだ。
(ガイアペインの足りない魔力をフレアディスペアの魔力を使って身体を硬化させる……確かにそれは出来るんだろうが……)
これだけ聞けばメリットしかないように聞こえるかもしれない。
メリットだけならな最初からそうすれば良い。単純計算で魔力は二倍になるのだから。
だがそう上手い話ばかりでは無いのが今まで使わなかった理由であり、使わなかった理由があるのだ。
(それに伴う魔力の消費 それをどうするよ?)
最大の問題、それは聖剣を発動するための魔力の消費だ。
魔力が足りないが為に魔力を消費して魔力を繋げる……その『矛盾した対策法』では根本的な解決にはならないのだ。
リンの中の溜まっていた魔力は今、聖剣の二本同時解放に全て使われた。
あとは賢者の石にある魔力をどこまで使えるかに賭かっている。
「お前の奥の手! 見せただけでもう終わりじゃねえだろうな!?」
「そうならないように全力でぶっ潰す だから……さっさとやられろよ!?」
「こんな楽しい事すぐに終わらせられねえよ!」
風を纏う刃がリンを狙う。
その刃を大胆にもリンは左腕でそのまま受け、右に回転をかけて二本の聖剣で斬りつける。
「随分賭けに出たなぁ!? 成功してなきゃその腕吹っ飛んでたぜぇ!?」
そう言いながらムロウは躱す。表には出さなかったがかなり焦っていた。
(どうやら魔力の接続は成功みたいだが……こりゃあ早い所終わらせなきゃヤバそうだ)
持っていた刀に力を込めると、纏う風が更に強くなる。
「おじさんも本気出しちゃうからついてきなよぉ!」
「無理するなよおっさん もっとも頑張りすぎて自滅してくれりゃありがたいがな」
「失礼な! こう見えてもおじさん四……三十代だし」
言いかけた言葉をぐっと押し込んで嘘をついた。急に言葉にするのが嫌になったからだった。
どうして歳をとればとるほど、本当の事を言うのに勇気がいるようになるのだろうか。
そんなどうでも良い事をムロウはこんな時に考えているが、それでも迷いなく刃はリンの首を刈りにいく。
硬化した身体を盾にしていたリンだったがこの一撃は『当たってはいけない』と直感からか、躱す事を選択した。
その行動は正解だった。
目視できない風の一撃を躱すことは難しい。最初と同じように完全に躱すことができず、そのうえガリガリと大きな音を立てながらリンの身体は削られたのだ。
「なっ!?」
「斬ることが難しいなら 削るだけさ」
炎を巻き上げ、無理矢理ムロウから距離をとらせた。
左の次は今度は右首だ、硬化していたとはいえ
、今のはリンにとって非常に危なかった。
(今のは……そういう事か)
先程まで刀に纏わせていた風を何重にも纏わせ、高速で風の刃を回転させる事でまるで鎖鋸のように首を削ったのだ。
「随分えぐい真似してくれるな おっさん」
「ん~? 上手くいかないもんだねなかなか」
仕留めたと思ったが、硬化された身体はそう簡単に削りきる事は出来なかった。
「だが通用するのがわかれば上々だ あとはその首落とすだけよ」
「やれるもんならやってみな もっとも魔力が保てばの話だがな」
「そうそう 頑張ってくれよ~? 魔力切れで自滅だなんてお間抜けな勝ち方はしたくないからさ」
「人の魔力の心配よりも自分の魔力は大丈夫かよ」
「ちと厳しいかもな 器用さはあるが量はそんな無いし」
ムロウは再び構え、風を更に強く纏わせる。
どちらの考えも『長期戦に持ち込ませるわけにはいかない』だった。その為には魔力は惜しまずに出し尽くす。
「本当はおじさん もっと楽しみたいんだけどねぇ?」
「残念だな 俺は逆だよ」
リンの瞳は右は炎の色を、左は大地の色へと変わっている。
魔力は確実にリンの身体に馴染み始めていた。
(ヤバイ……凄まじく……眠い)
予想よりも身体への痛みはなかった。
だがそれは痛みが無いからではなく、余りにも痛すぎて限界を超えていたからだった。
その証拠に身体からミシミシと嫌な音が確かに聞こえ、動かすたびに違和感を覚える。
そんな状態で戦わなくてはならないのだから、最早身の安全など考える必要はないだろう。
(勝つ方法……考える限りは一つだけか)
一つだけ思いついた事があるが、それが上手くいくかは賭けになる。
(それにその状況を上手く作れるかだ 今はとりあえず打ち合うしかない)
二本の聖剣に力を込め、ムロウへと斬り込む。
炎を纏った一撃は風に阻まれ、風は一瞬だけ強風となり身体が後方へ飛ばされそうになった。
(近づくこともできないのか……)
飛ばされそうになるともう一つの聖剣ガイアペインを地面に突き立て、踏みとどまる。
「隙だらけだぜ!?」
耐えるのがやっとなこの状況で、追い討ちをかける一撃。
再び刀に纏わせた風の一撃を受ける。
再びガリガリと表面が削られる音がする。硬化していなければこの時点でミンチであろう。
「くっ!?」
「やっぱ硬いな~ でもまあ痛いだろう? そろそろ諦めるかい?」
「断る……!」
斬り払い、ムロウに距離をとらせる。
攻めなければこちらが不利になる、だから攻めるのだがこちらの攻撃は一向に当たらない。むしろ近づき過ぎると風の刃がこちらを引き裂く。
「まったく 借り物の袴が台無しだな」
「随分と余裕だな ならもっとやれるだろう?」
「そう見えるか? だったら相当な節穴だなアンタは」
もう限界であった。これ以上は身体がもたない。
(さて……上手くいくかどうかやるしかない)
ありったけの魔力を二本の聖剣に集中させ、同時に地面へ突き立てる。
二本の聖剣のうち、ガイアは更に深く地面へ押し込むように刺す。すると突き立てたフレアからムロウとリンを囲む火の線が円になって広がっていく。
(アイツ……一体何を?)
「こいつで最後だ だから逃げられないようにな」
火の線が大きな円になって二人を囲むと、その線から勢いよく炎が噴出する。
「炎の壁!?」
「そうだ……そしてこれが」
深く突き刺したガイアペインを引き抜くと、元々大きかったその刀身は地面の土や石を纏い更に大きく巨大化していた。
「ありったけの魔力を今流し込んでる こいつで最後だ」
火の聖剣を突き立てたまま、土の聖剣だけを構えムロウへと立ち向かった。
だがそれに伴う代償があると、そう思っていからこそ、今まで使えなかった。
「二刀流がどこまでやれるか……お手並み拝見といこうかぁ!」
攻められた左側は、ガイアペインが防ぎ右手に持ったフレアディスペアをムロウに叩き込む。
鎌鼬によって、生身では受けられない。ならば身体を硬化させて受けられればいいのだが、その魔力が足りない。
ならばその魔力を補えればいい。
(聖剣の二刀流か……確かにそれなら魔力は十分だろう)
賢者の石は膨大な魔力が内包された奇跡の石だである。
そこから生み出された聖剣は、十分すぎるほどの魔力を持っている。
(だがその持ち主の魔力が持って無きゃ宝の持ち腐れだなぁ?)
元々魔力の無いリンは、自動的に賢者の石の魔力はリンの身体に蓄積されていた。
そのおかげで今まで扱えていたのだろうが、今現在その魔力がツヴァイとの戦闘により大きく消費していた。
おそらくではあるが、身体を治すのにも使われたのだろう。おかげで骨折などは異常な速さで治っていた。
(魔力は無限に湧くんだろうが常に無限ってわけじゃあねぇ 一時的に無くなることはある)
それを補うための聖剣の二刀流である。
聖剣を二本同時に展開する事で、二つ分の魔力を一気に解放させる。そうする事で二つ分の石の魔力を繋げているのだ。
(ガイアペインの足りない魔力をフレアディスペアの魔力を使って身体を硬化させる……確かにそれは出来るんだろうが……)
これだけ聞けばメリットしかないように聞こえるかもしれない。
メリットだけならな最初からそうすれば良い。単純計算で魔力は二倍になるのだから。
だがそう上手い話ばかりでは無いのが今まで使わなかった理由であり、使わなかった理由があるのだ。
(それに伴う魔力の消費 それをどうするよ?)
最大の問題、それは聖剣を発動するための魔力の消費だ。
魔力が足りないが為に魔力を消費して魔力を繋げる……その『矛盾した対策法』では根本的な解決にはならないのだ。
リンの中の溜まっていた魔力は今、聖剣の二本同時解放に全て使われた。
あとは賢者の石にある魔力をどこまで使えるかに賭かっている。
「お前の奥の手! 見せただけでもう終わりじゃねえだろうな!?」
「そうならないように全力でぶっ潰す だから……さっさとやられろよ!?」
「こんな楽しい事すぐに終わらせられねえよ!」
風を纏う刃がリンを狙う。
その刃を大胆にもリンは左腕でそのまま受け、右に回転をかけて二本の聖剣で斬りつける。
「随分賭けに出たなぁ!? 成功してなきゃその腕吹っ飛んでたぜぇ!?」
そう言いながらムロウは躱す。表には出さなかったがかなり焦っていた。
(どうやら魔力の接続は成功みたいだが……こりゃあ早い所終わらせなきゃヤバそうだ)
持っていた刀に力を込めると、纏う風が更に強くなる。
「おじさんも本気出しちゃうからついてきなよぉ!」
「無理するなよおっさん もっとも頑張りすぎて自滅してくれりゃありがたいがな」
「失礼な! こう見えてもおじさん四……三十代だし」
言いかけた言葉をぐっと押し込んで嘘をついた。急に言葉にするのが嫌になったからだった。
どうして歳をとればとるほど、本当の事を言うのに勇気がいるようになるのだろうか。
そんなどうでも良い事をムロウはこんな時に考えているが、それでも迷いなく刃はリンの首を刈りにいく。
硬化した身体を盾にしていたリンだったがこの一撃は『当たってはいけない』と直感からか、躱す事を選択した。
その行動は正解だった。
目視できない風の一撃を躱すことは難しい。最初と同じように完全に躱すことができず、そのうえガリガリと大きな音を立てながらリンの身体は削られたのだ。
「なっ!?」
「斬ることが難しいなら 削るだけさ」
炎を巻き上げ、無理矢理ムロウから距離をとらせた。
左の次は今度は右首だ、硬化していたとはいえ
、今のはリンにとって非常に危なかった。
(今のは……そういう事か)
先程まで刀に纏わせていた風を何重にも纏わせ、高速で風の刃を回転させる事でまるで鎖鋸のように首を削ったのだ。
「随分えぐい真似してくれるな おっさん」
「ん~? 上手くいかないもんだねなかなか」
仕留めたと思ったが、硬化された身体はそう簡単に削りきる事は出来なかった。
「だが通用するのがわかれば上々だ あとはその首落とすだけよ」
「やれるもんならやってみな もっとも魔力が保てばの話だがな」
「そうそう 頑張ってくれよ~? 魔力切れで自滅だなんてお間抜けな勝ち方はしたくないからさ」
「人の魔力の心配よりも自分の魔力は大丈夫かよ」
「ちと厳しいかもな 器用さはあるが量はそんな無いし」
ムロウは再び構え、風を更に強く纏わせる。
どちらの考えも『長期戦に持ち込ませるわけにはいかない』だった。その為には魔力は惜しまずに出し尽くす。
「本当はおじさん もっと楽しみたいんだけどねぇ?」
「残念だな 俺は逆だよ」
リンの瞳は右は炎の色を、左は大地の色へと変わっている。
魔力は確実にリンの身体に馴染み始めていた。
(ヤバイ……凄まじく……眠い)
予想よりも身体への痛みはなかった。
だがそれは痛みが無いからではなく、余りにも痛すぎて限界を超えていたからだった。
その証拠に身体からミシミシと嫌な音が確かに聞こえ、動かすたびに違和感を覚える。
そんな状態で戦わなくてはならないのだから、最早身の安全など考える必要はないだろう。
(勝つ方法……考える限りは一つだけか)
一つだけ思いついた事があるが、それが上手くいくかは賭けになる。
(それにその状況を上手く作れるかだ 今はとりあえず打ち合うしかない)
二本の聖剣に力を込め、ムロウへと斬り込む。
炎を纏った一撃は風に阻まれ、風は一瞬だけ強風となり身体が後方へ飛ばされそうになった。
(近づくこともできないのか……)
飛ばされそうになるともう一つの聖剣ガイアペインを地面に突き立て、踏みとどまる。
「隙だらけだぜ!?」
耐えるのがやっとなこの状況で、追い討ちをかける一撃。
再び刀に纏わせた風の一撃を受ける。
再びガリガリと表面が削られる音がする。硬化していなければこの時点でミンチであろう。
「くっ!?」
「やっぱ硬いな~ でもまあ痛いだろう? そろそろ諦めるかい?」
「断る……!」
斬り払い、ムロウに距離をとらせる。
攻めなければこちらが不利になる、だから攻めるのだがこちらの攻撃は一向に当たらない。むしろ近づき過ぎると風の刃がこちらを引き裂く。
「まったく 借り物の袴が台無しだな」
「随分と余裕だな ならもっとやれるだろう?」
「そう見えるか? だったら相当な節穴だなアンタは」
もう限界であった。これ以上は身体がもたない。
(さて……上手くいくかどうかやるしかない)
ありったけの魔力を二本の聖剣に集中させ、同時に地面へ突き立てる。
二本の聖剣のうち、ガイアは更に深く地面へ押し込むように刺す。すると突き立てたフレアからムロウとリンを囲む火の線が円になって広がっていく。
(アイツ……一体何を?)
「こいつで最後だ だから逃げられないようにな」
火の線が大きな円になって二人を囲むと、その線から勢いよく炎が噴出する。
「炎の壁!?」
「そうだ……そしてこれが」
深く突き刺したガイアペインを引き抜くと、元々大きかったその刀身は地面の土や石を纏い更に大きく巨大化していた。
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