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水の庭『アクアガーデン』
早く退院したい
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「ふえぇぇぇんアニキ~! 死んじゃヤダァ~!」
「どう見ても生きてんだろ」
起きてから次の日、見舞いに来た客はレイとチビルだった。シオンから連絡を受けて急いで駆けつけたらしい。
「リン何とかしてくれよ~お前が倒れてから二日間ずっとこの調子なんだぞ?」
「二日も……」
レイがこの状態なのもそうだが、自分がそんなに寝ていたのにも驚いた。
もっとも、こっちに来てから寝るか戦ってるかの方が多い気もするのだが。
「ジンバイデェ~ジンバイデェ~エェ~!」
「いいから泣くのやめろ 汚ねぇな」
「ハイ……ズビィ~」
「ギャー! オレ様の服で鼻かんでんじゃねえよ!」
「近くにいたお前が悪い……ズビィ~」
「ヤメロォ!」
小さな体で浮いていたのが災いしてティッシュの代わりに鼻をかまれていた。
不憫な鼻かみティッシュと化したチビルは、もう途中から諦め顔になっていた。
「こうもうるさいと呑気に入院できないな」
「そう思うなら頼むから退院してくれ オレ様の身が持たん……」
「様子見であと三日は入院らしい 耐えろ」
「オレ様も入院しそう……」
「オレ! 毎日見舞い来ますから! 朝から夜まで居ますから!」
「そこまでするなら泊れよ」
「えぇ!? そんなことしたらアニキに何するかわかりませんよ!?」
「じゃあ面会拒否だよ」
馬鹿馬鹿しい話をしていると、なんだか考えていた魔王軍のこともどうで良くなってる。
「さっきからうるせぇな 怪我人がいるんだから静かにしとけや」
「うるせえ包帯マン 電気でも食ってろよ」
「そうだよ 自業自得野郎」
「なあリンちゃん お前んとこの仲間口悪くね?」
「驚いたな……お前まだ生きてたのか」
「お前もかよ!」
横から話に加わった雷迅に対して皆が辛辣な対応をする。まあ当たり前と言えば当たり前の話ではあった。
何故ならここに入院している元凶はその包帯マンの自業自得野郎なのだから。
「ケッ! まあこっちだって別に仲良しこよししたいわけじゃあねえけどよ」
「こっちだって願い下げだっての! ねえアニキ?」
「……俺としてはお前みたいなのが仲間に加わるなら歓迎なんだがな」
「アニキ!?」
「正気かよ!?」
二人は驚くが実際のところ本当の話だ。これだけの戦力を味方につけられるのならこれから先楽になる。
だが、雷迅の顔を見る限り良い答えは帰って来なさそうだ。
「冗談じゃねえ 群れるのなんてごめんだよ」
「魔王軍にいるくせにどの口が言ってんだ」
「ツヴァイさんに仕えてるだけだからノーカンノーカン」
「基準がわからん」
「同じく」
「オレわかるかもしれないッス」
「なんでだよ」
一人裏切り者が出たが、とりあえず魔王軍ではなく『ツヴァイ』とか言う奴に入れ込んでるわけか。
「どんなやつなんだ?」
「まあ基本マイペースだな だが戦いに関して言えば魔王軍随一だと断言できる」
「うえぇ……マジかよ」
「コイツが言うと説得力がありますねアニキ」
「『闘士ツヴァイ』……か」
「片手だ……」
「え?」
「片手で半殺しさ オレは完膚無きまでに叩きのめされた」
「……」
冗談と言って欲しかった。だが「冗談だろ?」と言わせない雷迅のその言い方と、その表情からヒシヒシと伝わって来てしまった。
「……アッアーソウダソウダ ソウイエバ リンニツタエナクチャイケナイコトアッタンダッター」
「ソッソウデスアニキ! ジュウヨウナコトデス」
なんて下手な誤魔化し方なのだろう。顔も引きつっていて言い方が棒読みすぎる。内容も即興すぎてなんとも嘘くさい、これで誤魔化そうとしているのだからある意味すごい。
だがこの二人からは、なんとかしようという『優しさ』がヒシヒシと伝わって来た。
「……下手くそ」
「ひっ酷い!?」
「こっちはお前が明らかに動揺したから気を使ってだな……」
「……ありがとな」
「えぇ!?」
「アニキがデレた!?」
「前言撤回 さっさと話して帰れ」
素直に感謝の気持ちを伝えると驚かれた。普段どう思われているのかこれでわかった。
良くはないのだろうと思っていたがそうか、こんな感じなのか。
「わ~ん! 怒んないでください!」
「そうだぜ 心狭いぞ」
「要件もいい 帰れ」
「話しますから~ 王妃からですよ」
「今回のことで褒美をとらせるとかなんとか」
「あの王妃からか」
「おう これで三つめの賢者の石ゲットだな」
「たしか『アクアシュバリエ』ですよね 水の聖剣の名前」
「三本目が手に入ればこの先楽になるな」
「そう美味い話じゃねえんじゃねえの?」
「なに?」
こちらの話が盛り上がり始めると、さっきまで黙っていた雷迅が口を開ける。
「どういう意味だよ?」
「忘れてんじゃねえのかお前ら まだそいつは土の聖剣『ガイアペイン』を使いこなしてねえってことをよ」
「あっ……」
「そう言えば忘れてたぜ」
「オレに勝てたのは相性が良かったからだ 接近戦にはめっぽう強いが遠距離だと途端に打つ手がなくなる」
「遠距離ならアニキにも『フレアディスペア』が……」
「まだあるぜ 純粋に力で上回れたらガイアの硬さは役に立たねえし 遠距離ならって言うがそれでオレに通じたか?」
「うっ……」
「考えが甘えんだよお前ら 新しい聖剣もいいがちゃんと今ある力がどんなもんか把握しとけ」
「ふえぇぇぇんアニキ~! 慰めてぇ~!」
「もう帰れよ」
「ほら リンもこう言ってんだしそろそろ行くぞ」
「明日! 明日も来ますから!」
そう言い残してレイたちは病室を出て行く。やっとうるさくなくなった。
これで静かに休める。
「前の姉ちゃんにさっきの赤髪の姉ちゃん なかなかおモテで」
茶々入れてくるやつは残っている。
「ああもう……」
早く退院したい。
「どう見ても生きてんだろ」
起きてから次の日、見舞いに来た客はレイとチビルだった。シオンから連絡を受けて急いで駆けつけたらしい。
「リン何とかしてくれよ~お前が倒れてから二日間ずっとこの調子なんだぞ?」
「二日も……」
レイがこの状態なのもそうだが、自分がそんなに寝ていたのにも驚いた。
もっとも、こっちに来てから寝るか戦ってるかの方が多い気もするのだが。
「ジンバイデェ~ジンバイデェ~エェ~!」
「いいから泣くのやめろ 汚ねぇな」
「ハイ……ズビィ~」
「ギャー! オレ様の服で鼻かんでんじゃねえよ!」
「近くにいたお前が悪い……ズビィ~」
「ヤメロォ!」
小さな体で浮いていたのが災いしてティッシュの代わりに鼻をかまれていた。
不憫な鼻かみティッシュと化したチビルは、もう途中から諦め顔になっていた。
「こうもうるさいと呑気に入院できないな」
「そう思うなら頼むから退院してくれ オレ様の身が持たん……」
「様子見であと三日は入院らしい 耐えろ」
「オレ様も入院しそう……」
「オレ! 毎日見舞い来ますから! 朝から夜まで居ますから!」
「そこまでするなら泊れよ」
「えぇ!? そんなことしたらアニキに何するかわかりませんよ!?」
「じゃあ面会拒否だよ」
馬鹿馬鹿しい話をしていると、なんだか考えていた魔王軍のこともどうで良くなってる。
「さっきからうるせぇな 怪我人がいるんだから静かにしとけや」
「うるせえ包帯マン 電気でも食ってろよ」
「そうだよ 自業自得野郎」
「なあリンちゃん お前んとこの仲間口悪くね?」
「驚いたな……お前まだ生きてたのか」
「お前もかよ!」
横から話に加わった雷迅に対して皆が辛辣な対応をする。まあ当たり前と言えば当たり前の話ではあった。
何故ならここに入院している元凶はその包帯マンの自業自得野郎なのだから。
「ケッ! まあこっちだって別に仲良しこよししたいわけじゃあねえけどよ」
「こっちだって願い下げだっての! ねえアニキ?」
「……俺としてはお前みたいなのが仲間に加わるなら歓迎なんだがな」
「アニキ!?」
「正気かよ!?」
二人は驚くが実際のところ本当の話だ。これだけの戦力を味方につけられるのならこれから先楽になる。
だが、雷迅の顔を見る限り良い答えは帰って来なさそうだ。
「冗談じゃねえ 群れるのなんてごめんだよ」
「魔王軍にいるくせにどの口が言ってんだ」
「ツヴァイさんに仕えてるだけだからノーカンノーカン」
「基準がわからん」
「同じく」
「オレわかるかもしれないッス」
「なんでだよ」
一人裏切り者が出たが、とりあえず魔王軍ではなく『ツヴァイ』とか言う奴に入れ込んでるわけか。
「どんなやつなんだ?」
「まあ基本マイペースだな だが戦いに関して言えば魔王軍随一だと断言できる」
「うえぇ……マジかよ」
「コイツが言うと説得力がありますねアニキ」
「『闘士ツヴァイ』……か」
「片手だ……」
「え?」
「片手で半殺しさ オレは完膚無きまでに叩きのめされた」
「……」
冗談と言って欲しかった。だが「冗談だろ?」と言わせない雷迅のその言い方と、その表情からヒシヒシと伝わって来てしまった。
「……アッアーソウダソウダ ソウイエバ リンニツタエナクチャイケナイコトアッタンダッター」
「ソッソウデスアニキ! ジュウヨウナコトデス」
なんて下手な誤魔化し方なのだろう。顔も引きつっていて言い方が棒読みすぎる。内容も即興すぎてなんとも嘘くさい、これで誤魔化そうとしているのだからある意味すごい。
だがこの二人からは、なんとかしようという『優しさ』がヒシヒシと伝わって来た。
「……下手くそ」
「ひっ酷い!?」
「こっちはお前が明らかに動揺したから気を使ってだな……」
「……ありがとな」
「えぇ!?」
「アニキがデレた!?」
「前言撤回 さっさと話して帰れ」
素直に感謝の気持ちを伝えると驚かれた。普段どう思われているのかこれでわかった。
良くはないのだろうと思っていたがそうか、こんな感じなのか。
「わ~ん! 怒んないでください!」
「そうだぜ 心狭いぞ」
「要件もいい 帰れ」
「話しますから~ 王妃からですよ」
「今回のことで褒美をとらせるとかなんとか」
「あの王妃からか」
「おう これで三つめの賢者の石ゲットだな」
「たしか『アクアシュバリエ』ですよね 水の聖剣の名前」
「三本目が手に入ればこの先楽になるな」
「そう美味い話じゃねえんじゃねえの?」
「なに?」
こちらの話が盛り上がり始めると、さっきまで黙っていた雷迅が口を開ける。
「どういう意味だよ?」
「忘れてんじゃねえのかお前ら まだそいつは土の聖剣『ガイアペイン』を使いこなしてねえってことをよ」
「あっ……」
「そう言えば忘れてたぜ」
「オレに勝てたのは相性が良かったからだ 接近戦にはめっぽう強いが遠距離だと途端に打つ手がなくなる」
「遠距離ならアニキにも『フレアディスペア』が……」
「まだあるぜ 純粋に力で上回れたらガイアの硬さは役に立たねえし 遠距離ならって言うがそれでオレに通じたか?」
「うっ……」
「考えが甘えんだよお前ら 新しい聖剣もいいがちゃんと今ある力がどんなもんか把握しとけ」
「ふえぇぇぇんアニキ~! 慰めてぇ~!」
「もう帰れよ」
「ほら リンもこう言ってんだしそろそろ行くぞ」
「明日! 明日も来ますから!」
そう言い残してレイたちは病室を出て行く。やっとうるさくなくなった。
これで静かに休める。
「前の姉ちゃんにさっきの赤髪の姉ちゃん なかなかおモテで」
茶々入れてくるやつは残っている。
「ああもう……」
早く退院したい。
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