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水の庭『アクアガーデン』

ガイアの力

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「アニキ!」

 すかさずレイが雷迅に向けて銃を放つ。躱されるが、とどめの一撃を防ぐ事が出来た。

 それと同時にレイが駆け寄って来る。

「大丈夫ですかアニキ!?」

「なんとかな……助かったぞレイ」

「キャー! 普通に褒められたキャー!」

 両手を頰に当て、ブンブンと顔を振る。その光景はまるで、憧れのアイドルに出会えて興奮しているファンの様だった。

(これが無ければ普段から褒められるんだが)

「大丈夫かよリン!」

《なかなか派手にやられとるのう》

「それよりさっき言ってたのは……」

《そのままの意味じゃ ガイアペインを出せ優月輪ゆうづきりんよ》

「策があるってことか」

《剣にする必要は無いぞ 石のまま握っておけばそれで良い》

 ますます分からない。それでは武器としての用途すら果たせない、もしかして投げろとでも言うのだろうか?

「聖剣を投げろと言うのはどうかと思うぞ」

《たわけ! そうではない! お主は握ってるだけで・・・・・・・良いのだ》

「握るだけで……」

 石のままでいいと言うのだ確かにこれなら重くはない、重くはないがどうしすればいいのだろうか。

《後は殴られてこい! これでわかる!》

「……は?」

《だからお主が殴られれば……》

「何ぬかしてやがるロリッ娘」

《ロリッ娘!?》

「そうだそうだ! アニキに死ねってのか!」

「いくらリンに鬱憤が溜まってるからってそれは……」

 あの雷撃や拳を受けてしまったら、体が保たないなんすぐにわかる。

 だのに今の発言である。死ねと言われたようなものだった。

《いやだからこれは作戦で……》

《聖剣使い達 王妃も考えのあってのことだろ ここは……ひとつ信じてはもらえないか?》

「シオンか?」

「おお! 起きたのか!」

《お陰様で助かったレイ 皆も先ほどは見っともないところを見せてすまなかった》

「怪我の具合も良さそうで何よりだ」

《ガイアの力は未知数だ だが王妃は決して適当なことを言う人ではない 信じてほしい》

「まあシオンが言うなら……」

《何この信頼の差……?》

「話は済んだか聖剣使い! 律儀に待ってんだから早くしてくれや」

 暇そうに雷迅佇む。相手が戦いに対して、フェアプレイを好んでくれて非常にありがたい。

「悪いな休ませてもらって」

「楽しければそれでいいんだよオレは だが次は無い お前をぶっ倒したら次はそこの赤髪の姉ちゃんだ」

「俺もいい加減最後にしたい」

 今度こそラストチャンスだ。これで何も変わらなかったらもう終わりだ、レイへとバトンタッチするしかなくなる。

「当たって砕けろだ……行くぞ」

 足元はフラつきながらも目の前に集中する。アドレナリンでも出ているのだろうか、不思議と痛みは少なくなってきた。

「拳でくるか! ならオレもそうさせて貰う!」

 雷迅は拳に力を込めこちらに急接近してきた。やはりあの早さに適応するのは時間がかかる。もはや受けるだけで精一杯だった。

「吹き飛べ聖剣使い!」

 その拳は腹部に直撃した。どうやら守る体力も尽きていたようだ。

 そしてあっさり破られ力つきるはずだった。

「なんだ……こいつ!?」

 そのはずだったのだ。

「痛え……痛えけど」

 殴ったまま時間が止まっているかのように固まった雷迅の腕をリンは掴んだ。

 倒れなかった。直撃していた攻撃は、致命傷になるはずだった攻撃で、倒せなかったのだ。

「倒れるほどじゃない!」

「ゴフッ!?」

「やった!」

「決めやがった!」

 初めてまともに攻撃を雷迅に当てた。お返しと言わんばかりに腹部を思いっきり殴りつけた。

「何だ……その身体……まるで岩を殴った・・・・・みてえに固え……」

「これが……ガイアの力?」

《読みは大当たりのようじゃな》

《どういうことですか王姫?》 

「アレがガイアの力なのか?」

《まあ力の副次効果といったところかのう 聖剣はとてつもない魔力を宿した賢者の石によってできておる》

「それは知ってんな」

「それぐらいならオレだって」

《そしてあまりにも強いその魔力は賢者の石の状態でも常に溢れ出ておる》

《そうなのですか?》

「へえ~そうなのか そっちは初耳だぜ」

《賢者の石はそれぞれ属性がある アクアシュバリエは水 フレアディスペアは火 そしてガイアペインは土じゃ》

「でもそれとこれとは話が違うじゃねえの?」

《話を最後まで聞け赤髪の 副次効果と言ったであろう》

《副次効果……ですか?》

《そうじゃ お前らも聞いたことはあるのではないか? 聖剣使いの伝説くらいは》

《はい 戦場では無類の強さで敵を薙ぎ払い 攻撃は読まれ 当たったとしてもビクともしない 》

「確かそれがまるで竜と戦ってる・・・・・・ように感じた周りから『竜王』って呼ばれてる所以だったか?」

《実際奴の戦いぶりはその通りじゃった この世の全属性を束ねることなんぞ『竜』でもなければあり得んと言われとったのに成し遂げたのが『初代聖剣使い』じゃ》

「あ~昔姉ちゃんそんなこと言ってたような……」

(それよりこの王妃何歳なんだ?)

 疑問に思うチビルだったが話を続けたいのと、触れてはいけない予感がしたため、あえてチビルは口に出さなかった。

「奴が竜王と呼ばれておったのは全ての属性が使えたからだけではない まるで本当の竜のような強靭さこそが真の理由じゃ》

「竜のような……」

「強靭さ……」

《力も素早さも堅牢さも全てを兼ね備えておったのじゃ それはたとえ聖剣を出していないときでも》

《それが副次効果ですか?》

《そうじゃ 今の聖剣使いをみて確信した 今の聖剣使いの硬さは賢者の石から溢れた魔力によるもの まだ使いこなせてはおらぬがこれから先には石が無くともあの力が出せるようになるじゃろう》

「そういえばアニキ 戦いの時に雰囲気が変わってたような……」

《賢者の石の力じゃろうな 恐らくそれは闘争心に火をつける効果を持った火の聖剣フレアディスペアの副次効果であったのであろう》

 それはつまり賢者の石を集めれば集めるほど、優月輪ゆうづきりんその身体は伝説の聖剣使い・・・・・・・に近づくということだった。

 その事をどう受け止めるのか? 何を思うのか? そんな事を思いながら、王妃は二代目聖剣使いを見守った。
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