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第五章: 新人仕事人 恋模様
お久しぶりです
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旅行から冥界に戻った翌日の夕方。
あおいは、冥界事務センターに、久しぶりにやって来たのだ。
仕事の帰りなので、黒のパンツスーツにグレーのネクタイという姿だ。
「失礼します、あっ、ノリタケさん、お久しぶりです」
自動ドアから入ると直ぐに、馴染みの顔に会った。
「あら、久しぶりね!ふーん、そのネクタイ、聞いてはいたけど、本当に調査員をしているのね!
「え、まあ、補佐をしています。
今日の仕事が早く終わったので、ちょっと寄ってみました。
ユウコさんは、いますか?」
「ユウコさんなら、まだいるはず。
今、外に出たから警備部に行ったんじゃないかしら」
あおいも、警備部に向かっていたら、前方からユウコが歩いて来た。
「あおいさん、久しぶりだわね!
どうしたの?」
ユウコは、あおいを見つけて、目を丸くする。
「ユウコさん、ご無沙汰しています。
特別に用事と言うわけでは無いのですが、会いたくて来ちゃいました」
ユウコは感激したようで、満面の笑みになった。
「まあ、可愛いこと言ってくれるのね。
ここを出てから成長したようね」
「はい、成長できるように頑張っています。
あのぉ、昨日、旅行から帰って来たのですが、お土産です。お煎餅1枚で、すみません」
「へー!美味しそうね。ありがとう。
墓地からお土産を貰ってくるって、驚いたでしょ?」
ユウコさんも知っていたんだ……。
冥界では、当たり前の事なのかな。
「はい、驚いたし、他人のお墓から物を取ってくるって抵抗がありました。
結局、貰ってきちゃいましたけど……」
「そうね、抵抗があるのは当然よ。
でもね、生きている人が、死者のことを思って供えてくれた物だから、放置してしまうのは、勿体ないじゃない?
お墓の本人が来ていないなら、せめて冥界の者がお土産として持ち帰りましょうってことになっているのよ。
それに、貰ってきても実物は、残っているから、見た目は変化なし。
生きている人の見えない思いを頂いて、帰ってくるという感じかしら」
「わかりました。
ちょっと、気が楽になりました。
そうだ、ユウカさんとユウミさんはいますか?」
「残念、帰ってしまったわ。
私は、あと少し仕事があるのよね……」
「あっ、仕事中、お邪魔して すみませんでした。
お会いできて、良かったです。
また、来ます」
ユウコは、事務所に戻って行った。
あおいの手元には、ユウカとユウミに渡そうと思っていた、クッキーがある。
これ、どうしよう……。
そうだ、赤鬼さんにあげよう!
赤鬼さん、仕事が終わったかしら?
それとも、これから仕事かな?
仕事中だと無言を貫かれてしまうからな……。
警備部に行ってみようか、どうしようかな?
様子を探ってみようと、警備部の事務所前まで行ってみた。
すると、ドアが開いて人が出て来た。
あ、なんだ違う人だ……。
がっかりしていると、また、ドアが開いて、中から人が出て来た。
「あっ!」
黒Tシャツにジーパンで、スポーツマン系のイケメンお兄さんが出てきたのだ!
「斗真さん!
私、あおいです!覚えていますか?」
勿論、覚えているに決まっているじゃないか!
もしかして、俺に会いに来てくれたのか?
「あおいちゃん、凄く久しぶりだな!
ここで会った以来だね!元気そうで良かった」
俺は、嘘をついた。
本当は、第3の門、ウォーターバーで会っていた。
君が気が付かなかっただけだ。
「昨日、旅行から帰って来たんですけど、お土産を渡そうと思って待っていました。
会えて良かったです。
どうぞ、クッキー2個だけで、すみません」
えっ!俺を待っていてくれたって!
感激だー!なんて、可愛いんだろう!
「ありがとう、美味しそうな クッキーだね」
キィ
パタン
警備部 事務所のドアが開いて、人が出て来る度に、あおいはジロジロ見られてしまう。
「俺、仕事帰りだから、少し一緒に歩かない?」
「あっ、はい」
2人は、砂山の下にある、舗装された道を歩いている。
あおいが、初めて通る道だった。
「斗真さん、昨日、到着ロビーに緑札で、とても凶暴な“行方不明の死者”が来たはずですが、知っていますか?」
「うん、いた!若めの男だった。
久々に格闘したな」
「あの人、私が冥界へと送ったんですよ。
エレベーターに乗せた後、到着ロビーで大変だったろうなー!って思って。
気になっていたんです。
やっぱり、斗真さんが闘ったんですね。
お疲れ様でした。
ありがとうございました」
「えー!あんな凶暴な男を乗せたのっ?
あおいちゃんは、凄いんだねー!」
うん?乗せたのは私じゃないんだけど!
まっ、いいか。
「あおいちゃんは、調査員の仕事をしているんだね。大出世だな。
調査員といえば、冥界では花形の仕事なんだぞ」
「へー!そうなんですか。
あっ、私、調査員 補佐なので、違いますけど。
花形の仕事なんですね。
やる気が出てきました。頑張ります」
それじゃあ、蓮さんや優さんは、冥界の中で仕事の出来る優秀な人ってことだ!
蓮さん、益々 尊敬します。
斗真の前で、違う男の事を考えていたら、斗真が歩みを止めた。
「ほら、向こうに見えるのが従業員宿泊施設だ。
俺の家だけど、寄って行かない?
家なら、ゆっくり話せるけど」
団地のような白い3階建の建物が、いくつか見えた。
「これが、従業員宿泊施設なんですね」
あおいは、言いながら考えた。
えー、それってどうなんだろう?
やっぱ、男の部屋に行くって、マズイでしょ?
「あおいちゃんは、どこに住んでいるの?」
「この従業員宿泊施設が満室だったから、オストリッチ君の家に、居候させてもらっています。
ログハウスに2人で住んでいるんです」
ちょっと見栄を張りました。
本当は、掘っ建て小屋です。
「 ! 」
今、何て?オストなんちゃら君と、住んでいるって言った?
くん?君?男?とログハウス?
はーーーあ?
同棲しているってぇーーーー!
「へー、ろ、ろぐはうす、かぁ、す、すてきだね。
あおいちゃん、若いのに なかなか凄いんだね……」
あおいへの想いは、木っ端微塵となったのだった。
「いや、私が押しかけて住んでいるだけですから!
私が建てたわけじゃないので、凄くないですよ?
では、帰ります。さようなら」
斗真は、言葉なく手を振る。
衝撃の告白を聞き、当分、立ち直れないだろう。
とっくに諦めた想いのはずが、さっき、再燃しかけていた。
だが、今、再び 恋を失ってしまったのだ。
ズボンのポケット中にしまっておいた、大切なお土産も割れてしまっていた……。
早く忘れよう。
クッキーの袋を開けて、カケラを食べる。
「あー、美味い」
そう言いながら、無表情で食べる斗真なのであった。
「斗真、何、食っているんだよぉ?美味そう」
鬼の仲間に声を掛けられた。
「土産のクッキーだ。
食うか?もう1枚あるから、やる。
部屋へ帰るから、じゃあな!」
斗真は、食べ残しのクッキーを渡し、帰って行った。
天国から地獄へ 突き落とされた気分だ。
まあ、ひと眠りしたら元気が出るだろう。
よし、さっさと寝るぞーーー!
きっと、明日は元気だ!
そんな斗真の心なんて、あおいは知らず 、オストリッチの待つログハウスに、元気よく、帰って行ったのである。
あおいは、冥界事務センターに、久しぶりにやって来たのだ。
仕事の帰りなので、黒のパンツスーツにグレーのネクタイという姿だ。
「失礼します、あっ、ノリタケさん、お久しぶりです」
自動ドアから入ると直ぐに、馴染みの顔に会った。
「あら、久しぶりね!ふーん、そのネクタイ、聞いてはいたけど、本当に調査員をしているのね!
「え、まあ、補佐をしています。
今日の仕事が早く終わったので、ちょっと寄ってみました。
ユウコさんは、いますか?」
「ユウコさんなら、まだいるはず。
今、外に出たから警備部に行ったんじゃないかしら」
あおいも、警備部に向かっていたら、前方からユウコが歩いて来た。
「あおいさん、久しぶりだわね!
どうしたの?」
ユウコは、あおいを見つけて、目を丸くする。
「ユウコさん、ご無沙汰しています。
特別に用事と言うわけでは無いのですが、会いたくて来ちゃいました」
ユウコは感激したようで、満面の笑みになった。
「まあ、可愛いこと言ってくれるのね。
ここを出てから成長したようね」
「はい、成長できるように頑張っています。
あのぉ、昨日、旅行から帰って来たのですが、お土産です。お煎餅1枚で、すみません」
「へー!美味しそうね。ありがとう。
墓地からお土産を貰ってくるって、驚いたでしょ?」
ユウコさんも知っていたんだ……。
冥界では、当たり前の事なのかな。
「はい、驚いたし、他人のお墓から物を取ってくるって抵抗がありました。
結局、貰ってきちゃいましたけど……」
「そうね、抵抗があるのは当然よ。
でもね、生きている人が、死者のことを思って供えてくれた物だから、放置してしまうのは、勿体ないじゃない?
お墓の本人が来ていないなら、せめて冥界の者がお土産として持ち帰りましょうってことになっているのよ。
それに、貰ってきても実物は、残っているから、見た目は変化なし。
生きている人の見えない思いを頂いて、帰ってくるという感じかしら」
「わかりました。
ちょっと、気が楽になりました。
そうだ、ユウカさんとユウミさんはいますか?」
「残念、帰ってしまったわ。
私は、あと少し仕事があるのよね……」
「あっ、仕事中、お邪魔して すみませんでした。
お会いできて、良かったです。
また、来ます」
ユウコは、事務所に戻って行った。
あおいの手元には、ユウカとユウミに渡そうと思っていた、クッキーがある。
これ、どうしよう……。
そうだ、赤鬼さんにあげよう!
赤鬼さん、仕事が終わったかしら?
それとも、これから仕事かな?
仕事中だと無言を貫かれてしまうからな……。
警備部に行ってみようか、どうしようかな?
様子を探ってみようと、警備部の事務所前まで行ってみた。
すると、ドアが開いて人が出て来た。
あ、なんだ違う人だ……。
がっかりしていると、また、ドアが開いて、中から人が出て来た。
「あっ!」
黒Tシャツにジーパンで、スポーツマン系のイケメンお兄さんが出てきたのだ!
「斗真さん!
私、あおいです!覚えていますか?」
勿論、覚えているに決まっているじゃないか!
もしかして、俺に会いに来てくれたのか?
「あおいちゃん、凄く久しぶりだな!
ここで会った以来だね!元気そうで良かった」
俺は、嘘をついた。
本当は、第3の門、ウォーターバーで会っていた。
君が気が付かなかっただけだ。
「昨日、旅行から帰って来たんですけど、お土産を渡そうと思って待っていました。
会えて良かったです。
どうぞ、クッキー2個だけで、すみません」
えっ!俺を待っていてくれたって!
感激だー!なんて、可愛いんだろう!
「ありがとう、美味しそうな クッキーだね」
キィ
パタン
警備部 事務所のドアが開いて、人が出て来る度に、あおいはジロジロ見られてしまう。
「俺、仕事帰りだから、少し一緒に歩かない?」
「あっ、はい」
2人は、砂山の下にある、舗装された道を歩いている。
あおいが、初めて通る道だった。
「斗真さん、昨日、到着ロビーに緑札で、とても凶暴な“行方不明の死者”が来たはずですが、知っていますか?」
「うん、いた!若めの男だった。
久々に格闘したな」
「あの人、私が冥界へと送ったんですよ。
エレベーターに乗せた後、到着ロビーで大変だったろうなー!って思って。
気になっていたんです。
やっぱり、斗真さんが闘ったんですね。
お疲れ様でした。
ありがとうございました」
「えー!あんな凶暴な男を乗せたのっ?
あおいちゃんは、凄いんだねー!」
うん?乗せたのは私じゃないんだけど!
まっ、いいか。
「あおいちゃんは、調査員の仕事をしているんだね。大出世だな。
調査員といえば、冥界では花形の仕事なんだぞ」
「へー!そうなんですか。
あっ、私、調査員 補佐なので、違いますけど。
花形の仕事なんですね。
やる気が出てきました。頑張ります」
それじゃあ、蓮さんや優さんは、冥界の中で仕事の出来る優秀な人ってことだ!
蓮さん、益々 尊敬します。
斗真の前で、違う男の事を考えていたら、斗真が歩みを止めた。
「ほら、向こうに見えるのが従業員宿泊施設だ。
俺の家だけど、寄って行かない?
家なら、ゆっくり話せるけど」
団地のような白い3階建の建物が、いくつか見えた。
「これが、従業員宿泊施設なんですね」
あおいは、言いながら考えた。
えー、それってどうなんだろう?
やっぱ、男の部屋に行くって、マズイでしょ?
「あおいちゃんは、どこに住んでいるの?」
「この従業員宿泊施設が満室だったから、オストリッチ君の家に、居候させてもらっています。
ログハウスに2人で住んでいるんです」
ちょっと見栄を張りました。
本当は、掘っ建て小屋です。
「 ! 」
今、何て?オストなんちゃら君と、住んでいるって言った?
くん?君?男?とログハウス?
はーーーあ?
同棲しているってぇーーーー!
「へー、ろ、ろぐはうす、かぁ、す、すてきだね。
あおいちゃん、若いのに なかなか凄いんだね……」
あおいへの想いは、木っ端微塵となったのだった。
「いや、私が押しかけて住んでいるだけですから!
私が建てたわけじゃないので、凄くないですよ?
では、帰ります。さようなら」
斗真は、言葉なく手を振る。
衝撃の告白を聞き、当分、立ち直れないだろう。
とっくに諦めた想いのはずが、さっき、再燃しかけていた。
だが、今、再び 恋を失ってしまったのだ。
ズボンのポケット中にしまっておいた、大切なお土産も割れてしまっていた……。
早く忘れよう。
クッキーの袋を開けて、カケラを食べる。
「あー、美味い」
そう言いながら、無表情で食べる斗真なのであった。
「斗真、何、食っているんだよぉ?美味そう」
鬼の仲間に声を掛けられた。
「土産のクッキーだ。
食うか?もう1枚あるから、やる。
部屋へ帰るから、じゃあな!」
斗真は、食べ残しのクッキーを渡し、帰って行った。
天国から地獄へ 突き落とされた気分だ。
まあ、ひと眠りしたら元気が出るだろう。
よし、さっさと寝るぞーーー!
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