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第四章: 新人仕事人
天界の利通さん
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あおいと同じ時間に、冥界到着ロビーに着いた“品の良さそうなお爺さん”こと、利通さんは、あおいよりも先に天界に来ていて、天界のことを 色々と教えてくれた人なのだ。
あおいは居住区に入り、自分が住んでいた場所を探していた。
目印は、モミジの木だよね!
「あっ、ここだ!」
私が住んでいた所は、撤去されちゃったんだ……。
利通さん家の隣は、空き地になっていた。
利通さん、いるかな?
「とーしーみーちーさーん」
シーンとしている。
残念、留守かぁ、帰ろう!
「あれ?あおいさんですか?」
「あー、利通さーん!居ないと思って、帰ろうかと思っていました!」
「お久しぶりですね。
最近、ボランティアで、公園の花壇の手入れをするようになって、今帰って来ました。
そのうちに、せせらぎ川の向こう側、立ち入り禁止区域の、花の植え替えがあるそうなので、行く予定なんですよ」
「えー、立ち入り禁止区域に入るんですか!どんな所なんでしょう。
花の植え替えに行くんですね。
それなら、綺麗な場所なんでしょうね」
あおいは、立ち入り禁止区域に入ったことがないので、想像を膨らませている。
「利通さんが、見てきたら、私にどんな所だったか教えて下さい」
「はい、教えますよ。
毎日、暇を持て余していたから、やる事が見つかって良かったです。
あおいさんは、どんなお仕事をしていますか」
「今は、幽体離脱をした人の、生前の行為を調査して、データーを冥界に送る仕事をしています。
と言っても、それは調査員の仕事で、私はその補佐なんです。
この仕事で、何かを信頼して任されるとかって、まだ無くて……」
あおいはそう言うと、利通の玄関先の石階段に腰を下ろした。
はぁー!
あおいは、溜息をつきながら自分の額を膝につけた。
「もしかして、落ち込んでいますか?
誰だって、初めてがあって、上手くいかない事の方が、多いものです。
落ち込むのは、まだ早いです」
利通も あおいの隣に腰を下ろす。
「だって、一緒に補佐になったリッチ君、あ、オストリッチ君は、瞬間移動も完璧に出来るし、子どもなのに何でも出来るし……」
「あぁ、そうなんですか……。
子どもと言っても、オストリッチ君は、既に職業に就いていたではありませんか。
仕事をする上での、コツを知っているんでしょう。
自分の弱点を知っていて、自分でカバーをしているかもしれませんよ?」
えっ?弱点?
あおいは、これまでのオストリッチとの日々を思い出してみる。
そういえば、各門を旅していた頃、名前とかメモして、胸羽の中に入れていたな。
あっ、今でもメモをしている……
リッチ君、努力をしているんだね……
「初めてする仕事でも、中にはね、要領良く出来てしまう人が、たまにいる のが困りますよね?
すると、比べたり、比べられたり……ってね。
でも、そんな事は気にしない!
今は、出来なくて、当たり前!
向上心を忘れなければ、大丈夫です」
「利通さーん、ありがとうございます」
あおいは、元気とやる気が出てきたのだった。
「私、向上心を忘れないように仕事をします。励ましてくださって、ありがとうございました。
じゃあ、帰ります。また、来ますね」
あおいは、すくっと立ち上がり、ベルトのバックルに軽く手を触れ消え去った。
はっ、あおいさんが消えた!
あなたは、凄い技を持っているじゃないですか!頑張りなさい。
………………
あおいが帰ったその頃、蓮は第3の門前で、タマミに会っていた。
タマミは、先日の舞妓の姿でいる。
「タマミさん、無理を言ってすみません。先日、あなたが余りにも、美し過ぎて驚きました」
「えっ、そんなことないです。
恥ずかしいわ」
タマミは、満更でも無い笑顔で否定した。
「あのぉ、今日、舞妓さんの姿で会ってほしいと言ったのは、あなたの写真が欲しかったからです。
写真を撮ってもいいですか?」
えっ?蓮さんが私の写真を欲しいの?
どういう意味があるの?もしかして?
「では、撮ります。
いいですねー!綺麗ですね。
あっ、そのポーズいいなぁ。
はい、お疲れ様でしたー!」
ノリノリのタマミは、ポージングを変え、蓮はモバリスで、そんなタマミを撮りまくったのだった。
モバリスには、色々な機能があるのだ。
「いやー、素晴らしい写真が撮れました。
私の友人が、着物美人の写真を集めているもので……。
この写真も、コレクションに入れてもよろしいでしょうか?」
「はぁ?お友達に写真を渡すのですか?
蓮さんが欲しいわけではないのですか?
何だぁ。あ、いえ!
私の写真で良ければ、どうぞ」
何だ、蓮さんが私に気があるって、勘違いしたわ。
残念だわ。
でも、そのお友達が、カッコイイ人ならいいな……。
「タマミさん、本当にありがとうございました。
改めて御礼をしますからね。
また、来ます。じゃあ」
用を済ませた蓮は、さっさと消えたのだった。
えっ?えっ?どんな御礼?
また会いに来るの?
私をお友達に紹介する気なの?
私、弄ばれた気分だわっ!
どうなのよー?
それから、タマミは 悶々とした日々を送るのであった。
あおいは居住区に入り、自分が住んでいた場所を探していた。
目印は、モミジの木だよね!
「あっ、ここだ!」
私が住んでいた所は、撤去されちゃったんだ……。
利通さん家の隣は、空き地になっていた。
利通さん、いるかな?
「とーしーみーちーさーん」
シーンとしている。
残念、留守かぁ、帰ろう!
「あれ?あおいさんですか?」
「あー、利通さーん!居ないと思って、帰ろうかと思っていました!」
「お久しぶりですね。
最近、ボランティアで、公園の花壇の手入れをするようになって、今帰って来ました。
そのうちに、せせらぎ川の向こう側、立ち入り禁止区域の、花の植え替えがあるそうなので、行く予定なんですよ」
「えー、立ち入り禁止区域に入るんですか!どんな所なんでしょう。
花の植え替えに行くんですね。
それなら、綺麗な場所なんでしょうね」
あおいは、立ち入り禁止区域に入ったことがないので、想像を膨らませている。
「利通さんが、見てきたら、私にどんな所だったか教えて下さい」
「はい、教えますよ。
毎日、暇を持て余していたから、やる事が見つかって良かったです。
あおいさんは、どんなお仕事をしていますか」
「今は、幽体離脱をした人の、生前の行為を調査して、データーを冥界に送る仕事をしています。
と言っても、それは調査員の仕事で、私はその補佐なんです。
この仕事で、何かを信頼して任されるとかって、まだ無くて……」
あおいはそう言うと、利通の玄関先の石階段に腰を下ろした。
はぁー!
あおいは、溜息をつきながら自分の額を膝につけた。
「もしかして、落ち込んでいますか?
誰だって、初めてがあって、上手くいかない事の方が、多いものです。
落ち込むのは、まだ早いです」
利通も あおいの隣に腰を下ろす。
「だって、一緒に補佐になったリッチ君、あ、オストリッチ君は、瞬間移動も完璧に出来るし、子どもなのに何でも出来るし……」
「あぁ、そうなんですか……。
子どもと言っても、オストリッチ君は、既に職業に就いていたではありませんか。
仕事をする上での、コツを知っているんでしょう。
自分の弱点を知っていて、自分でカバーをしているかもしれませんよ?」
えっ?弱点?
あおいは、これまでのオストリッチとの日々を思い出してみる。
そういえば、各門を旅していた頃、名前とかメモして、胸羽の中に入れていたな。
あっ、今でもメモをしている……
リッチ君、努力をしているんだね……
「初めてする仕事でも、中にはね、要領良く出来てしまう人が、たまにいる のが困りますよね?
すると、比べたり、比べられたり……ってね。
でも、そんな事は気にしない!
今は、出来なくて、当たり前!
向上心を忘れなければ、大丈夫です」
「利通さーん、ありがとうございます」
あおいは、元気とやる気が出てきたのだった。
「私、向上心を忘れないように仕事をします。励ましてくださって、ありがとうございました。
じゃあ、帰ります。また、来ますね」
あおいは、すくっと立ち上がり、ベルトのバックルに軽く手を触れ消え去った。
はっ、あおいさんが消えた!
あなたは、凄い技を持っているじゃないですか!頑張りなさい。
………………
あおいが帰ったその頃、蓮は第3の門前で、タマミに会っていた。
タマミは、先日の舞妓の姿でいる。
「タマミさん、無理を言ってすみません。先日、あなたが余りにも、美し過ぎて驚きました」
「えっ、そんなことないです。
恥ずかしいわ」
タマミは、満更でも無い笑顔で否定した。
「あのぉ、今日、舞妓さんの姿で会ってほしいと言ったのは、あなたの写真が欲しかったからです。
写真を撮ってもいいですか?」
えっ?蓮さんが私の写真を欲しいの?
どういう意味があるの?もしかして?
「では、撮ります。
いいですねー!綺麗ですね。
あっ、そのポーズいいなぁ。
はい、お疲れ様でしたー!」
ノリノリのタマミは、ポージングを変え、蓮はモバリスで、そんなタマミを撮りまくったのだった。
モバリスには、色々な機能があるのだ。
「いやー、素晴らしい写真が撮れました。
私の友人が、着物美人の写真を集めているもので……。
この写真も、コレクションに入れてもよろしいでしょうか?」
「はぁ?お友達に写真を渡すのですか?
蓮さんが欲しいわけではないのですか?
何だぁ。あ、いえ!
私の写真で良ければ、どうぞ」
何だ、蓮さんが私に気があるって、勘違いしたわ。
残念だわ。
でも、そのお友達が、カッコイイ人ならいいな……。
「タマミさん、本当にありがとうございました。
改めて御礼をしますからね。
また、来ます。じゃあ」
用を済ませた蓮は、さっさと消えたのだった。
えっ?えっ?どんな御礼?
また会いに来るの?
私をお友達に紹介する気なの?
私、弄ばれた気分だわっ!
どうなのよー?
それから、タマミは 悶々とした日々を送るのであった。
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