55 / 109
第四章: 新人仕事人
久しぶりの天界へ
しおりを挟む
トントントントン。
ちゃぶ台を人差し指で叩いている。
トントン……。
「もう、蓮さん!さっきから、その音が気にニャります!
いったい、どうしたんですか?」
「あぁ、考え事をしていました。
あおいちゃんの瞬間移動の着地点に問題があって……。
どうやら、目的地を覚えられないようなんです」
「ニャるほど!
ニャら、モバリスやメモを見ニャがら、集中する訓練をするしかニャいですね」
「そうなんです!オストリッチ君は、自分で工夫して、そうやっています。
あおいちゃんが、同じにできればいいですが……」
「そうだ!合宿訓練をすればいいんじゃニャいですか?」
グレースが、短期集中の合宿を提案した。
「そうですね!やってみます。合宿場所は、天界が適していますよね?」
蓮は、グレースに聞いてみた。
今は猫のグレースだが、実は、蓮の憧れている死神の紅鈴なのである。
以前、天界に魔物が現れた時、
久々に死神の姿に戻った紅鈴の姿を見て、蓮は心の底から、嬉しかったのだった。
ただ、自らの意志で、再び猫に戻ってしまい、蓮としては残念に思っているのだ。
「天界ニャら、泊まる所も練習する場所も、誰にも気がねしニャいで、できますね」
「はい。明日と明後日は、休みだから今から行こうかな。天界に電話してから、あおいちゃんにも電話だ」
「私は、孝蔵さんが帰って来るまで、ちょっと出掛けます。
じゃあ、頑張って下さいね」
そう言って、台所の収納庫があった穴へと降り、床下から穴が開いた通風孔を抜けて外に出て行った。
これが、グレース用の出入り口なのだ。
プルルル プルルル プルルル
「リッチ君、なんかモバリスから、電話みたいな音がする!何だろう?電話かな?どうやって出るんだろうね?」
プルルル プルルル プルルル
ここを押してみるか、プチっ!
「はい、あおいです」
……………
お姉ちゃん、今から天界に行くの?
蓮さんと?
ずるい!ずるい!ずるいです!
僕だって、行きたいのに!
オストリッチは、あおいだけ合宿に誘われたから、不貞腐れている。
「仕方がないでしょう。
リッチ君は優秀だけど、私は落ちこぼれだから、特訓しないといけないんだって!」
えっ、僕が優秀?そういうこと?
ぐふ ぐふ、僕、優秀なのかぁ!
「わかった!お留守番しています。
いってらっしゃい」
リッチ君、単純で可愛いね……。
天界の何処に行ったらいいのかな?
しまった、聞いていなかった!
今は夜だから、天界は暗いんだよね。
天界の事務所に行ってみよう!
……………
夜の天界事務所は、割と静かである。
そもそも金札の方が少ないので、各門に比べると、日中も事務所は落ち着いているのだ。
事務所の窓口から、中を覗いて見る。
「あっ、ユキト先生!
こんばんは!ご無沙汰しています。
今日は、夜勤ですか?」
「あれ?あおいさん!そう、夜勤です。
どうしたんですか?蓮と会えなかったんですか?」
「はい、待ち合わせ場所を聞くのを忘れてしまいました」
ユキト先生に瞬間移動練習場前だと聞いて、あおいは急いで走る 。
事務棟の裏側から出て、隣の体育館の様な建物に急ぐのだった。
「れーんさーん、すみませーん」
あおいは、手を振って駆け寄った。
なんか、デートに遅れて走る彼女みたいかな?へへ。
「はい、やり直し!何故、瞬間移動で来ない?
事務所のユキトの所まで行って、戻って来い!
よーい、スタート!」
ひぃ!何これ!蓮さん、別人になってる!
あおいは、走り出す。
「走るな!瞬間移動じゃないと、意味がない!」
「はい!」
事務所に戻り、ユキト先生に「来ました」と言い、引き返す。
「ここの夜は暗いのだが、明後日までに瞬間移動を完璧にする為、今から練習をする。筆記用具は持ってきたな?」
あおいは、いつものポシェットの中からメモ帳とペンを出す。
「公園の脇に小川があって、紅葉の木が1本だけあるから、葉を1枚取って来い」
ええと、これをメモるのね。
脇の小川、もみじ。
「行きます」
あおいは姿を消した。
ちゃんとに行ったのだろうか?
蓮は、モバリスを出し電話をする。
「ユキト、あおいちゃんは、小川に着いたか?」
ユキトは、講習会で使う見本のモバリスを使って、連絡を取っているのである。
「いや、いない!真っ直ぐ歩いてみるよ」
公園の脇を流れている小川、近くにベンチがある。
紅葉の木があるのは、ここの川の土手だ。
いないな。
もしかして、違う川に行ったとか?
「蓮、いないぞ!もしかしたら、山奥のせせらぎ川に行ったのかもしれない!
もし、あそこに行ってしまったとしたら、夜は危険過ぎる所だぞ!」
「何だと!」
…………………
ホッ、ホ、ホッ、ホ、ホッ、ホ
鳥の声が不気味。
ザーザーザー……川の流れの音?
「えー、真っ暗だぁ!
公園には街灯があるけど、ここには無いじゃん!
もしかして、せせらぎ川に来ちゃった?
やばい、やば過ぎだよ!
なんか出そうだよー!」
ガサガサ
ひぃ、なんかいるの?
急にライトの光りを当てられたのだった!
ちゃぶ台を人差し指で叩いている。
トントン……。
「もう、蓮さん!さっきから、その音が気にニャります!
いったい、どうしたんですか?」
「あぁ、考え事をしていました。
あおいちゃんの瞬間移動の着地点に問題があって……。
どうやら、目的地を覚えられないようなんです」
「ニャるほど!
ニャら、モバリスやメモを見ニャがら、集中する訓練をするしかニャいですね」
「そうなんです!オストリッチ君は、自分で工夫して、そうやっています。
あおいちゃんが、同じにできればいいですが……」
「そうだ!合宿訓練をすればいいんじゃニャいですか?」
グレースが、短期集中の合宿を提案した。
「そうですね!やってみます。合宿場所は、天界が適していますよね?」
蓮は、グレースに聞いてみた。
今は猫のグレースだが、実は、蓮の憧れている死神の紅鈴なのである。
以前、天界に魔物が現れた時、
久々に死神の姿に戻った紅鈴の姿を見て、蓮は心の底から、嬉しかったのだった。
ただ、自らの意志で、再び猫に戻ってしまい、蓮としては残念に思っているのだ。
「天界ニャら、泊まる所も練習する場所も、誰にも気がねしニャいで、できますね」
「はい。明日と明後日は、休みだから今から行こうかな。天界に電話してから、あおいちゃんにも電話だ」
「私は、孝蔵さんが帰って来るまで、ちょっと出掛けます。
じゃあ、頑張って下さいね」
そう言って、台所の収納庫があった穴へと降り、床下から穴が開いた通風孔を抜けて外に出て行った。
これが、グレース用の出入り口なのだ。
プルルル プルルル プルルル
「リッチ君、なんかモバリスから、電話みたいな音がする!何だろう?電話かな?どうやって出るんだろうね?」
プルルル プルルル プルルル
ここを押してみるか、プチっ!
「はい、あおいです」
……………
お姉ちゃん、今から天界に行くの?
蓮さんと?
ずるい!ずるい!ずるいです!
僕だって、行きたいのに!
オストリッチは、あおいだけ合宿に誘われたから、不貞腐れている。
「仕方がないでしょう。
リッチ君は優秀だけど、私は落ちこぼれだから、特訓しないといけないんだって!」
えっ、僕が優秀?そういうこと?
ぐふ ぐふ、僕、優秀なのかぁ!
「わかった!お留守番しています。
いってらっしゃい」
リッチ君、単純で可愛いね……。
天界の何処に行ったらいいのかな?
しまった、聞いていなかった!
今は夜だから、天界は暗いんだよね。
天界の事務所に行ってみよう!
……………
夜の天界事務所は、割と静かである。
そもそも金札の方が少ないので、各門に比べると、日中も事務所は落ち着いているのだ。
事務所の窓口から、中を覗いて見る。
「あっ、ユキト先生!
こんばんは!ご無沙汰しています。
今日は、夜勤ですか?」
「あれ?あおいさん!そう、夜勤です。
どうしたんですか?蓮と会えなかったんですか?」
「はい、待ち合わせ場所を聞くのを忘れてしまいました」
ユキト先生に瞬間移動練習場前だと聞いて、あおいは急いで走る 。
事務棟の裏側から出て、隣の体育館の様な建物に急ぐのだった。
「れーんさーん、すみませーん」
あおいは、手を振って駆け寄った。
なんか、デートに遅れて走る彼女みたいかな?へへ。
「はい、やり直し!何故、瞬間移動で来ない?
事務所のユキトの所まで行って、戻って来い!
よーい、スタート!」
ひぃ!何これ!蓮さん、別人になってる!
あおいは、走り出す。
「走るな!瞬間移動じゃないと、意味がない!」
「はい!」
事務所に戻り、ユキト先生に「来ました」と言い、引き返す。
「ここの夜は暗いのだが、明後日までに瞬間移動を完璧にする為、今から練習をする。筆記用具は持ってきたな?」
あおいは、いつものポシェットの中からメモ帳とペンを出す。
「公園の脇に小川があって、紅葉の木が1本だけあるから、葉を1枚取って来い」
ええと、これをメモるのね。
脇の小川、もみじ。
「行きます」
あおいは姿を消した。
ちゃんとに行ったのだろうか?
蓮は、モバリスを出し電話をする。
「ユキト、あおいちゃんは、小川に着いたか?」
ユキトは、講習会で使う見本のモバリスを使って、連絡を取っているのである。
「いや、いない!真っ直ぐ歩いてみるよ」
公園の脇を流れている小川、近くにベンチがある。
紅葉の木があるのは、ここの川の土手だ。
いないな。
もしかして、違う川に行ったとか?
「蓮、いないぞ!もしかしたら、山奥のせせらぎ川に行ったのかもしれない!
もし、あそこに行ってしまったとしたら、夜は危険過ぎる所だぞ!」
「何だと!」
…………………
ホッ、ホ、ホッ、ホ、ホッ、ホ
鳥の声が不気味。
ザーザーザー……川の流れの音?
「えー、真っ暗だぁ!
公園には街灯があるけど、ここには無いじゃん!
もしかして、せせらぎ川に来ちゃった?
やばい、やば過ぎだよ!
なんか出そうだよー!」
ガサガサ
ひぃ、なんかいるの?
急にライトの光りを当てられたのだった!
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
全裸追放から始まる成り上がり生活!〜育ててくれた貴族パーティーから追放されたので、前世の記憶を使ってイージーモードの生活を送ります〜
仁徳
ファンタジー
テオ・ローゼは、捨て子だった。しかし、イルムガルト率いる貴族パーティーが彼を拾い、大事に育ててくれた。
テオが十七歳になったその日、彼は鑑定士からユニークスキルが【前世の記憶】と言われ、それがどんな効果を齎すのかが分からなかったイルムガルトは、テオをパーティーから追放すると宣言する。
イルムガルトが捨て子のテオをここまで育てた理由、それは占い師の予言でテオは優秀な人間となるからと言われたからだ。
イルムガルトはテオのユニークスキルを無能だと烙印を押した。しかし、これまでの彼のユニークスキルは、助言と言う形で常に発動していたのだ。
それに気付かないイルムガルトは、テオの身包みを剥いで素っ裸で外に放り出す。
何も身に付けていないテオは町にいられないと思い、町を出て暗闇の中を彷徨う。そんな時、モンスターに襲われてテオは見知らぬ女性に助けられた。
捨てる神あれば拾う神あり。テオは助けてくれた女性、ルナとパーティーを組み、新たな人生を歩む。
一方、貴族パーティーはこれまであったテオの助言を失ったことで、効率良く動くことができずに失敗を繰り返し、没落の道を辿って行く。
これは、ユニークスキルが無能だと判断されたテオが新たな人生を歩み、前世の記憶を生かして幸せになって行く物語。
【完結】冥界のイケメンたちとお仕事することにすることになりました。
キツナ月。
キャラ文芸
☆キャラ文芸大賞 エントリー☆
現世で就活に失敗した女子大生が冥界に就職!?
上司は平安時代に実在した歴史上の人物、小野篁(おののたかむら)。
冥界にて七日ごとに亡者を裁く「十王」の他、冥界の皆さんを全員クセのあるイケメンにしてみました。
今回は少しずつの登場ですが、いずれシリーズ化して個性豊かな冥界のイケメンたちを描いていけたらいいなと思っています!
十王の中には閻魔さまもいますよ〜♫
♡十王の皆さま♡
罰当たりでごめんなさい。
地獄に落とさないでください。
※読者の皆さま※
ご覧いただいてありがとうございます。
このお話はフィクションです。
死んだらどうなるかは誰にも分かりません。
死後の世界は、本作みたいに楽しくはないはず。
絶対に足を踏み入れないでください……!
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる