冥界の仕事人

ひろろ

文字の大きさ
上 下
40 / 109
第三章: 見習い仕事人

この世は知らぬ事だらけ

しおりを挟む
「第1の門目指して出発!」


……って、賽の河原のイノリさんに無事に送り届けた事を報告しないと!


 よし、賽の河原に出発!


 ふっ……ん


  ふわん


 オストリッチは、賽の河原に到着してイノリの姿を探し、キョロキョロと見渡した。


 そして、船着場にいるイノリを見つけ、大きな声で声をかける。


「あっ、イノリさーん!イノリさーん」


 イノリがいる船着場に、オストリッチも行くと、丁度、ボートが着岸し、子ども2人と女性スタッフが、降りてきたところだった。

 
 オストリッチは、何気なくボートに目をやると、中に小さな人がいることに気がついた。

  
 わっ、あれは何?何者?


鳥にしては、妙ちくりんだし。


人にしても、妙ちくりんな姿の2人だし。


しかも宙に浮いてる……。


これは、何という生き物なのかな?


帰ったら、先生に聞いてみよう!


 オストリッチは、イノリに任務完了の挨拶をし、来訪者に会釈をして、その場を後にしたのであった。

……………

「今日も無事に仕事が終わったー!
 ふーー」


 あおいは、仕事が終わってホッとしていた。


「あおいさん、すっかり仕事にも慣れたみたいだね!」


「あっ、ユウカさん。はい、お陰様で慣れてきました」


 ロッカールームにポシェットを取りに来て、着替え中のユウカと談笑する。


「ここって、仕事終わりに寄るお店もないですよね!まあ、何も食べませんけど!

 洋服屋さんとかって、あるんですか?」


「そんなの無いわね!お店なんてものは無いのよ」

 
あーやっぱ、そうか!そうだよね!


「あのぉ、ちょっと気になっているんですけど、お給料とかってあるんですか?
 一応、働いているので……」


「あるけど。お金ではなくて、スタンプを押してもらうのよ!

 カードに必要なだけのスタンプが溜まったら、旅行に行かれるシステムなの」


 えっ!給料の代わりが、旅行って!


なんか、行き先によっては、テンションが下がりますけどぉ。


「旅行?例えば、どこへ行けるんですか?」


「団体旅行は、寺社仏閣が多いかな」


  あ……やっぱりね。そうだと思った。


「そうですよね。死者の団体旅行なら
そういう所でしょうね!
テーマパークなんて、行かないですよね」


「うん、行ったことないわ。テーマパークかぁ。
行ってみたいけど、冥界には年配者が多いから無理かもね」

 
 「あと、個人旅行もあるけど。
でも、だいたい里帰りが多いかな」


「里帰りって、何処へ帰るか覚えていないんじゃないですか?

働く為に記憶は消されるって聞いたし、私は覚えていません。

ユウカさんは、覚えているんですか?」

「覚えていないわよ!
  私の額に札はないでしょう?
 
 働いている人には、札は貼っていないのよ。普通の死者と区別がつかなくなるから、札を就業許可証に貼ってあるの」


「えー!もしかして私の額には、金札が貼られていないんですか?」


「ないわよ!就業許可証に貼られているはず!
エレベーターで降りてくる時に自動的に額から剥がれて就業許可証に付くのよ。

その就業許可を事務所に提出してあるから、記憶を失っているの」


 「マジですか?じゃあ、札を額に貼れば思い出しますか?」


「その通り!
だから、里帰りが可能ってことなの。
もちろん、里帰りから帰って来たら、札は就業許可証に戻るから、記憶をまた失うのよ」


「そうなんですか!教えてくれて、ありがとうございました」


 里帰りができるのか!


 じゃあ、張り切って仕事をしまーす。

 ……………

 事務長が私を呼んでいるって、いったい、何の用かしらね?


あおいさんは、仕事をだいたい覚えたから、問題はないはずだし……。


考え事をしながらユウコは、事務長室に入った。


「ユウコさん、帰る前に悪いね。
 あおいさんの事なんだが、次の所へ異動が決まったんだ。

今まで指導、お疲れ様でした。
明日、本人に話しますから」


 えーー!そんなー!


 仕事も何とか覚えたから、私が退職しようと考えていたのに!


ショックだわ!


 ユウコは、分かりやすくガッカリしている。

 
「ユウコさん……代わりの男の子が来ますから!また、お願いします」


 ユウコは、ニヤリとするのだった。

 …………

  「ただいま……」
 

 ……あっ、そっか。


 リッチ君は、当分 帰って来ないとか言ってたよね。


 キィィ


 「お姉ちゃん、ただいまー」


 「随分、早く帰って来れたんだね!
 おかえりなさい」


 オストリッチは、初めて見た生物の事を、身振り手振りを交えて話しだした。


「うん、うん、それって、妖精さんかもよ?天界に住んでいるんだよ。

へぇ、こっちまで来るんだね」


「それでね、それでね、滑り台ってのがあって、最高に面白かったんだよ。
僕、あれが欲しいなー」


 オストリッチは、秦広王にも同じ話しをしてきたのだった。
しおりを挟む
1 / 3

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

転生お姫様の困ったお家事情

恋愛 / 完結 24h.ポイント:63pt お気に入り:607

氷属性の男装王子は、隣国の王太子の執着から逃げたい

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:128

真相には虚は無く、唯一つの結果のみが残る。

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

見捨てたはずの双子の妹が聖女だった!?

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

処理中です...