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第一章: はじまり
ダツエ婆
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三途の川のほとりに現れた 若い女性と1羽の鶴。
その若い女性は、“また、手伝い手を増やしてくれたのか”と言う ダツエ婆の言葉を聞き逃さなかった。
「また?いいえ、第1の門から お手伝いを命じられましたのは、私だけでございます。
申し訳ございません。
秦広王様がお約束を忘れておられて……。
ダツエ様から お電話を頂戴したのち、ご依頼を受け承りました。
お待たせ致しまして、大変、申し訳ございませんでした」
そう言うと、若い女性と鶴は深々と頭を下げた。
その姿に気づいたオストリッチが飛んできた。
「レイラさん、スワンさん、どうしたんですか?」
「オ、オストリッチ!!何をしているのですか?第1の門を出てから、かなり経ちます。もう、他の門に行けるくらい…」
「スワンさん、叱るのは後にして下さいね。
ダツエ様、失礼致しました。
この者……オストリッチは、水島あおい様を 第7の門までお連れする任務中でございます。
まだ、旅の途中ですので、先に進めさせて頂いても、よろしいでしょうか?」
「何だって?旅の途中だとぉ?
ちょっと、おでこ見せろ」
あおいの前髪を上げて見る。
「あぁ、おでこに金札があるじゃないかっ!
わしとしたことが、気づかなかった……。
手伝いの娘だと思って、こき使っておった。
娘、鳥、すまないことをした。
許してくれ」
「貴方様が、水島あおい様ですね?
この度は、私の到着が遅くれたばかりに、ご迷惑をお掛け致しました。
申し訳ございませんでした」
2人は、人違いをされていたのだとわかり、ホッとしたのだった。
「わぁ、すみません、すみません。自分が連れてきちゃいました!
若い娘、着ていた服を消しちゃって、ごめんな。鳥も悪かったな!」
そう言うと、トミエは仕事に戻って行った。
「娘、詫びとして、今 着ている服をお前に くれてやる。
その作務衣は、動きやすいだろう?」
着る物がなかった あおいは、ダツエ婆の申し出が有り難かった。
「お姉さん、そろそろ第2の門へと行きましょうか。
ところで、通行許可証に判を押してもらっていますよね?」
オストリッチが確認する。
「あっ、忘れた!どうしよう!」
ウエディングドレスに舞い上がり、判を押してもらう事など、頭の片隅にもなかったのだった。
「判子かぇ?なら、わしが押してやる。
わしは、脱衣場の責任者だからな!
ほら、貸せ」
ポン!
通行証の裏面に、大きな“脱”の一文字が押された。
「ダツエ婆さまー!早く来て下さーい!
人が集まってきましたー」
「こりゃ、大変だ!新しい女、鶴、さっさと働いとくれ!」
「私たちには、名前がございます!
私は、レイラと申します。
鶴は、スワンでございます。
ダツエ様、お待ちくださーい」
ダツエ婆を追い掛けるようにして、レイラとスワンも行ってしまった。
あおいとオストリッチは、誰にも別れの挨拶をできずに、第2の門へ向かうのだった。
脱衣場の囲いがある所は、飛行禁止区域のため、2人はスタッフ専用通路を歩いていた。
「第2の門は、どんな所なの?」
ゴソゴソ。
いつものように胸羽から、紙を出して話す。
「えーと、第2の門の裁判官は、所長の初江王様です。
調べられる事は、殺生の有無などです」
「せっしょうのうむ?って、何?」
「えーとぉ、うーん、あっ、行けばわかります」
リッチ君も意味がわからないのね……。
あのメモ紙には、書いていないんだ……。
「さあ、急ぎましょう」
脱衣場を抜け、緩やかな坂道にさしかかった。
第2の門が、向こうに見えている。
「お姉さん、飛んで行きましょう」
「もう、すぐそこだから、大丈夫だよ。リッチ君は、飛んで行って!
あたし、追いかけるから」
「では、お言葉に甘えます」
オストリッチは、あおいの歩くスピードに合わせて、飛んでいる。
「ここが、第2の門です」
オストリッチが言った時だった。
「おーい!娘、鳥ぃ!」
なんと、スピーカー放送らしい声が聴こえてきた。
ダツエ婆の声だと すぐにわかった。
あおいは、振り返ってみたが、どこにいるのかわからない。
「浅瀬側の見張り台のマイクを使っているみたいです」
「鳥ぃ、なかなか筋が良かったぞー!
娘っ!しごいてやるから、また、来いよー!ガチャガチャ」
そんな声が第2の門まで届いてきたのである。
「やだよー」
2人は、同時に呟いたが、互いの顔を見合ったら、自然に笑顔になっていた。
心がポカポカしてくるような……そんな気持ちだった。
もしかしたら、これも魂の浄化のひとつ なのかもしれない。
あおいとオストリッチは、元気に第2の門へ入って行った。
その若い女性は、“また、手伝い手を増やしてくれたのか”と言う ダツエ婆の言葉を聞き逃さなかった。
「また?いいえ、第1の門から お手伝いを命じられましたのは、私だけでございます。
申し訳ございません。
秦広王様がお約束を忘れておられて……。
ダツエ様から お電話を頂戴したのち、ご依頼を受け承りました。
お待たせ致しまして、大変、申し訳ございませんでした」
そう言うと、若い女性と鶴は深々と頭を下げた。
その姿に気づいたオストリッチが飛んできた。
「レイラさん、スワンさん、どうしたんですか?」
「オ、オストリッチ!!何をしているのですか?第1の門を出てから、かなり経ちます。もう、他の門に行けるくらい…」
「スワンさん、叱るのは後にして下さいね。
ダツエ様、失礼致しました。
この者……オストリッチは、水島あおい様を 第7の門までお連れする任務中でございます。
まだ、旅の途中ですので、先に進めさせて頂いても、よろしいでしょうか?」
「何だって?旅の途中だとぉ?
ちょっと、おでこ見せろ」
あおいの前髪を上げて見る。
「あぁ、おでこに金札があるじゃないかっ!
わしとしたことが、気づかなかった……。
手伝いの娘だと思って、こき使っておった。
娘、鳥、すまないことをした。
許してくれ」
「貴方様が、水島あおい様ですね?
この度は、私の到着が遅くれたばかりに、ご迷惑をお掛け致しました。
申し訳ございませんでした」
2人は、人違いをされていたのだとわかり、ホッとしたのだった。
「わぁ、すみません、すみません。自分が連れてきちゃいました!
若い娘、着ていた服を消しちゃって、ごめんな。鳥も悪かったな!」
そう言うと、トミエは仕事に戻って行った。
「娘、詫びとして、今 着ている服をお前に くれてやる。
その作務衣は、動きやすいだろう?」
着る物がなかった あおいは、ダツエ婆の申し出が有り難かった。
「お姉さん、そろそろ第2の門へと行きましょうか。
ところで、通行許可証に判を押してもらっていますよね?」
オストリッチが確認する。
「あっ、忘れた!どうしよう!」
ウエディングドレスに舞い上がり、判を押してもらう事など、頭の片隅にもなかったのだった。
「判子かぇ?なら、わしが押してやる。
わしは、脱衣場の責任者だからな!
ほら、貸せ」
ポン!
通行証の裏面に、大きな“脱”の一文字が押された。
「ダツエ婆さまー!早く来て下さーい!
人が集まってきましたー」
「こりゃ、大変だ!新しい女、鶴、さっさと働いとくれ!」
「私たちには、名前がございます!
私は、レイラと申します。
鶴は、スワンでございます。
ダツエ様、お待ちくださーい」
ダツエ婆を追い掛けるようにして、レイラとスワンも行ってしまった。
あおいとオストリッチは、誰にも別れの挨拶をできずに、第2の門へ向かうのだった。
脱衣場の囲いがある所は、飛行禁止区域のため、2人はスタッフ専用通路を歩いていた。
「第2の門は、どんな所なの?」
ゴソゴソ。
いつものように胸羽から、紙を出して話す。
「えーと、第2の門の裁判官は、所長の初江王様です。
調べられる事は、殺生の有無などです」
「せっしょうのうむ?って、何?」
「えーとぉ、うーん、あっ、行けばわかります」
リッチ君も意味がわからないのね……。
あのメモ紙には、書いていないんだ……。
「さあ、急ぎましょう」
脱衣場を抜け、緩やかな坂道にさしかかった。
第2の門が、向こうに見えている。
「お姉さん、飛んで行きましょう」
「もう、すぐそこだから、大丈夫だよ。リッチ君は、飛んで行って!
あたし、追いかけるから」
「では、お言葉に甘えます」
オストリッチは、あおいの歩くスピードに合わせて、飛んでいる。
「ここが、第2の門です」
オストリッチが言った時だった。
「おーい!娘、鳥ぃ!」
なんと、スピーカー放送らしい声が聴こえてきた。
ダツエ婆の声だと すぐにわかった。
あおいは、振り返ってみたが、どこにいるのかわからない。
「浅瀬側の見張り台のマイクを使っているみたいです」
「鳥ぃ、なかなか筋が良かったぞー!
娘っ!しごいてやるから、また、来いよー!ガチャガチャ」
そんな声が第2の門まで届いてきたのである。
「やだよー」
2人は、同時に呟いたが、互いの顔を見合ったら、自然に笑顔になっていた。
心がポカポカしてくるような……そんな気持ちだった。
もしかしたら、これも魂の浄化のひとつ なのかもしれない。
あおいとオストリッチは、元気に第2の門へ入って行った。
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