アンティーク影山の住人

ひろろ

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何処にいるの?

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 カーソルの名を叫び、焦った様子のカボスは、上へ上へと飛んで行き、その後をノナカが追って行く。

「あっ、えっ、ノナカさん、待って!ああ、もう、行ってしまったわ!これ本当にカーソルさんの物?トキエさん、バックの中を確認してみましょう」

(バックの中身がメイク道具とか女性の物なら、カーソルさんのではないわ!)

 そして、中を見たルシェとトキエは、顔を見合わせ首を傾げ、二人の後を追ったのだった。

 カボスとノナカが崖の上の、そのまた上にある山頂付近に降りているのを見て、ルシェとトキエも近くへ降りた。

 そこは、木々が生い茂り、ゴツゴツとした岩が地面から顔を出し、それらを縫うように小川が流れている。

 また、この周辺には、水があちこちから湧き出て、新たな流れを作ってもいた。

その川が次々に合流し、下へ向かうほど川幅を広げ、勢いを増しながら滝壺を目指し流れて行くのだ。

 ルシェはカボスに説明を求めようとするが、避ける様に移動してしまうのだった。

「カーソルさまー!どこですかー?」

カボスの悲壮感漂う声が、こだまする。

 耳を澄ませ、呼び掛けに応答する声を探すが、聞こえてこなかった。

顔面蒼白のカボスは、再び、斜面を急いで上がって行く。

「カボスどのー!この森の中にカーソル様は、いないようですなぁー」

 カボスを追いかけるノナカは、そう叫びながら、滝壺の中を捜索した方が良いのでは?と考えた。

だが、とても口には出せないのだった。 

 頂上に着いたカボスは、泉の前に立つ。この泉が、小川の源となっているようだ。

奥には、一本の木があり、柵で囲ってあることから、何か特別な木なのだとわかる。

 その木には、柑橘系らしい黄色の果実が幾つか実っていた。

 カボスは、奥にある木の方に向かい、果実の周辺の枝をじっくりと見て回る。

「ややっ!この枝から山蜜柑やまみかんをもぎ取ったな!もいだ痕跡がある!ああ、なんてことだ……」

 そう呟いた後、泉の周囲を無言で、旋回し始めたのだ。

丁度、二周目あたりで、ノナカはたまらず聞く。

「え?ちょっとちょっと、何をしているのですか?カボス殿?大丈夫ですか?」

 そんな言葉に耳を貸さない様子で、今度は立ち止まり、じっと泉の中を睨んでいる。

「あのぉ、カボス殿?何をなさっておられますか?カボス……はっ、まさか!
まさか、カーソル様がこの中に?」

ノナカがそう尋ねている時に、ルシェが辿り着いた。
   
「カ、カーソルさん、カーソル様の身に何かあったのですか?カボスさん?どういう事ですの?説明を願いますわ!」

 泉のほとりに立つカボスとノナカを見つけ、ルシェは少々キレ気味に言ったのだった。

「はぁ、はぁ、カ、カボス殿、どうしたのですか?カーソル様に何かあったのですか?もしかして、い、いなくなったのですか?」

 飛び疲れたトキエは、倒れ込むように膝を着き、顔を上げると、泉の中心部分からスウッと出現した者を見た。

「何か御用ですか?」

「 ! 」

 ルシェとトキエとノナカは、目を見開いた。

…………………… 

 ここは人間界。

 まだ夜明け前、ぼんやりとした外灯に照らされた鳥居をくぐり、階段の上空を四人の妖精が飛んで行く。

「庄さん、結局、カーソルさんの事が気になって、ここまで来てしまいましたね。キートさんは、あの賽銭箱の中にきっといますよ」

拝殿に到着すると、黄緑色のツナギ作業服を着た太めの妖精が声を上げる。

「キートさん、ワシだ!庄三郎だぞ!賽銭箱にいるだろう?寝てるのかぁ?」

一拍、二拍、三拍置いて返事を待つが返事がない。

「おーい!キートさーん、キート!いるんだろう?起きてくれー!聞きたい事があるんだ!」

庄三郎が再び声を掛けたら、賽銭箱からぬうっと顔が出てきた。

「うーん?まだ、暗い……。どなた……?」

寝ぼけ気味のキートが不機嫌なのを察したモロブが、庄三郎に代わり挨拶をする。

「キートさん、就寝中にすみません!我々は、オールド国の妖精です。
以前、カーソルさんと一緒にここへお邪魔した者です。覚えていますか?」

「……あっ、ああ、せんだってカーソルと一緒にここへといらした方々ですね。一体、どうしたのですか?」

「あのね、カーソルさんを探しに来たんだよ!」

 キートは何を言われているのか、理解をするまでに数秒かかって反応する。

「えっ?カーソルを?」

「こら、タム!いきなり心配をさせてしまうだろう?キートさん、すみません。
実は、先程、プランツ国の方がある方を探しにいらして。我々の店に来たので、カーソルさんを探しているのかと思い、勝手に捜索を始めたのです」

「モロブさんに付け加えて言いますが、プランツ国の騎士団が捜索をしているみたいなんです。もしかしたら、カーソルさんに危険が迫っているのかも!と思ったら、寝ていられなくて……」

「えっと、セロルさんでしたっけ?
カーソルに危険が迫る?いや、心配をしなくても大丈夫ですよ。
あいつ、カーソルは、護身術を身につけているし、かなり強いですから!」

 アンティーク影山の住人達は、意外な事を聞いて、人は見かけによらないものだと感じたのだった。

「そっか、あの王子様は、ほれ、完璧そうに見えて、どっか抜けている所があるだろう?だから、ちと心配になって、寝ていられなくてな!
だが、腕っ節が強いってなら、ワシらが心配する事もあるまい。ワシらは帰るとするか」

 帰って眠ろうとする庄三郎をタムとセロルが引き止める。

「せっかく来たのだから、この周辺だけでも、見て回りましょうよ」

「うん、そうしようよ」

「そうだな、せっかくだから、さらりと探してみようか。あ、キートさんは、お休みになって下さい。
庄さんは、一緒に行きましょう」

 カーソルを探す気満々の二人に触発され、モロブが庄三郎を誘ったのだった。

「いえ、私も探します。裏山へと行ってみましょうか?」

 モロブに続けて、キートも捜索をする気になり、パジャマからツナギ作業服に変身した。

「今から何処に行くんだ?」
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