28 / 78
さあ行こう!
王様に謁見
しおりを挟む
ルシェは白髪の女性に連れられ一階の、ある部屋に通された。
その部屋の中は広く、煌びやかな彫刻が施された一人掛けのソファーが奥にあって、左右にはそれと同じデザインの三人掛けのソファーがテーブルを挟んで置いてある。
高い天井には、これまた豪華なシャンデリアが吊り下がり、床にはえんじ色の絨毯が敷かれている。
「ここは人型専用の応接室だわ。私を特別扱いしなくてもいいのよ。他の人と同じ控室で大丈夫ですわ。でも、気遣ってくれたのね。
トキエさん、どうもありがとう」
「いえ、姫君のルシェ様を他の者と同じにはできません。それにしても、人間界へと修行にいらしてから、随分とお変わりになったのですね。立派な女性になられたようで、教育係の私は、嬉しゅうございます。間もなく、王様とお妃様がお見えになります。こちらで、お待ち下さいませ」
そう言ってトキエが退室したので、ルシェは半円形のアーチ窓に行き外を眺め、腕を上にピンと伸ばし大きく背伸びをした。
「うーん、窓から見えるこの景色、すっごく久しぶりだわ!あっ、この木、見ない間に大きくなったわ……。そっか、それだけ人間界に長く居たってことね……」
コンコン。
扉をノックして執事のノナカが入って来た。
「ルシェ様、お帰りなさいませ。只今、王様、お妃様が入室されます」
ノナカはルシェに一礼をし、扉を開けて王と妃を迎えた後、退室したのだった。
「おかえり、ルシェ!やっと虹の玉が集まったのだな。人間界での生活は、さぞ大変であったろう?良く頑張ったな」
ルシェの父である王が言った。
「お父様、お母様、ご無沙汰いたしておりました。虹の玉集めに手こずりまして、大変、お待たせして、申し訳ございませんでした」
ルシェは、両手でドレスを軽く持ち上げ、腰を落とし両親に挨拶をした。
「ルシェさん、やっと戻っていらしたのね。
あまりにも虹の玉集めが終わらないので、人間界にずっといる気なのかと、心配をしていたところでしたのよ」
母である妃から言われ、ルシェは苦笑いを浮かべた。
(虹の玉が滅多に見つからなかったのは確かだけど、人間界にいることが楽しくなってきて、積極的に探しに行かなかったのですわ。
お母様、ごめんなさい)
「今日からここで暮らすのだろう?
ルシェの部屋を綺麗に整えさせておいた。
ゆっくりと休んで、人間界での疲れを癒しなさい」
王の言葉に慌ててルシェが答える。
「えっ?あっ、まだ直ぐには帰って来れませんわ。舞踏会が終わったら、一旦、人間界に戻り、改めて帰って参ります」
………………………
タムと庄三郎とモロブは、暫し休憩をしてから、他の男女ゲストと共に舞踏会が行われる大広間へと連れられてきていた。
「あれ?ルシェちゃんがいないよ。どこへ行ったんだろう?」
「そうだな、見当たらないな。迷子になってしまったのだろうか?しかし、タムとは違ういい大人なんだから、それはないはずだ」
「モロブさん、酷いよ。僕は迷子になんてならないよ!」
タムが抗議をするとモロブは、右手を顔のところに上げ、すまん!という仕草をした。
「お城なんて、やたらに入れる所じゃねえから、あちこち覗きまくりしているんだろうよ。心配はいらんだろう!じきに来るさ」
「そうだね、大丈夫だよね……」
タムは、そう言いながらもキョロキョロしている。
すると、突然、照明が暗くなり二階へと続く大階段の踊り場にスポットライトが当たったのだ。
スポットライトに照らされ、浮かび上がる三人の姿にゲスト達は大歓声を上げる。
「わっ!あの人が王様なんだね?
僕、初めて王様を見ちゃった!感激!」
「ワシも初めてだ!タム、モロブ、王様の姿をしっかりと目に焼き付けておけよ!」
「はい!それとお妃様の姿と……。うん?あと一人、どなただろう?なんだか……。
庄さん、誰かに似ていませんか?」
「なんかさ、ルシェちゃんみたいな人だね」
「えっ?何だよ?もう一人?ああ、娘だな。王女様だろう?って、おい、はあ?まさか、ル、ル……」
「庄さん、ルシェですよ!あれは、ルシェです!多分……。どうして?」
三人の頭の中は、パニックになっていたのだった。
だが、そんな事にはお構い無く、王の合図で音楽が流れ始め、ゲスト達は謁見の列を作り始める。
手を振りながら階段を降りる王と妃は、ゲスト達が立つ場所よりも 一段高い位置にある長テーブル中央の席についたが、その両側はまだ空席で、隣国からの来賓者や公爵の貴賓席となっている。
そして、王と妃の側にルシェの姿はなかった。
…………………
「庄三郎さん、モロブさん、タム、遅くなって失礼しましたわ。さあ、王様に謁見しましょう。早く並ばないと!
さあ、皆さん行きましょう……?私、行きますわよ?」
「……うわっ!ルシェ!お前……いや、君は、あなたは、王様の娘?お姫様?だったのか?だったのですか?」
庄三郎は、どう接したらいいか分からない様子で何とか聞いた。
「あ……やはり、バレたのね。だから、お父様たちと並びたくはなかったわ。無理矢理、あそこに立たされたのよ。はぁ。
皆さん、今まで黙っていて、ごめんなさい。
私は、確かに国王の娘ですわ。でもね、私は あくまでもアンティーク影山の一員なのですから、いつもの様に接して下さい」
ルシェはそう言ったが、少しの間だけはギクシャクとした空気が流れてしまっていた。
だが、社交ダンスをしないルシェ達の踊りというのは、四人のダンスパフォーマンスで息を合わせた動きが必要だった。
ルシェ達は、列に並びながらも動きの確認をしている。
「うんっ?次はこんな感じの動作なのか?」
「そうそう、そうですわ!庄三郎さん、良くなりましたわ」
「さあ、王様の所まであと少し。我々、アンティーク影山の息の合ったチーム力を見せる時が近づいてきました!頑張りましょう」
「はいっ!モロブさん!」
ルシェとタムが元気に返事をする頃には、普段の仲間同士に戻っていたのだった。
ダンスパフォーマンスは、クラシックの曲に合わせて、優雅に踊っているつもりだったが、何処か変なのか、笑いが起きていたようだ。
踊り終わり、王の前に出た庄三郎の姿は、いつもとまるで違い、質問をされても、あまりに小さい声だった為、何度も聞き返されたりしたが、無事に終わってホッとしたのだった。
「あー!終わった!ま、こんなもんだろう!
皆んな、ご苦労さん!さあ、色んな花の蜜があるぞ!食べようぜ」
庄三郎が大きな声で行ったから、皆は吹き出してしまった。
王との謁見が済んだグループは、それぞれ流れている曲に合わせて、自由に踊っている者や立食をしている者もいる。
ルシェは、壁際の椅子に腰掛けて休んでいた。
「あれ?もしかして、君は……」
ルシェは、声を掛けられ横を向いた。
「えっ?」
その部屋の中は広く、煌びやかな彫刻が施された一人掛けのソファーが奥にあって、左右にはそれと同じデザインの三人掛けのソファーがテーブルを挟んで置いてある。
高い天井には、これまた豪華なシャンデリアが吊り下がり、床にはえんじ色の絨毯が敷かれている。
「ここは人型専用の応接室だわ。私を特別扱いしなくてもいいのよ。他の人と同じ控室で大丈夫ですわ。でも、気遣ってくれたのね。
トキエさん、どうもありがとう」
「いえ、姫君のルシェ様を他の者と同じにはできません。それにしても、人間界へと修行にいらしてから、随分とお変わりになったのですね。立派な女性になられたようで、教育係の私は、嬉しゅうございます。間もなく、王様とお妃様がお見えになります。こちらで、お待ち下さいませ」
そう言ってトキエが退室したので、ルシェは半円形のアーチ窓に行き外を眺め、腕を上にピンと伸ばし大きく背伸びをした。
「うーん、窓から見えるこの景色、すっごく久しぶりだわ!あっ、この木、見ない間に大きくなったわ……。そっか、それだけ人間界に長く居たってことね……」
コンコン。
扉をノックして執事のノナカが入って来た。
「ルシェ様、お帰りなさいませ。只今、王様、お妃様が入室されます」
ノナカはルシェに一礼をし、扉を開けて王と妃を迎えた後、退室したのだった。
「おかえり、ルシェ!やっと虹の玉が集まったのだな。人間界での生活は、さぞ大変であったろう?良く頑張ったな」
ルシェの父である王が言った。
「お父様、お母様、ご無沙汰いたしておりました。虹の玉集めに手こずりまして、大変、お待たせして、申し訳ございませんでした」
ルシェは、両手でドレスを軽く持ち上げ、腰を落とし両親に挨拶をした。
「ルシェさん、やっと戻っていらしたのね。
あまりにも虹の玉集めが終わらないので、人間界にずっといる気なのかと、心配をしていたところでしたのよ」
母である妃から言われ、ルシェは苦笑いを浮かべた。
(虹の玉が滅多に見つからなかったのは確かだけど、人間界にいることが楽しくなってきて、積極的に探しに行かなかったのですわ。
お母様、ごめんなさい)
「今日からここで暮らすのだろう?
ルシェの部屋を綺麗に整えさせておいた。
ゆっくりと休んで、人間界での疲れを癒しなさい」
王の言葉に慌ててルシェが答える。
「えっ?あっ、まだ直ぐには帰って来れませんわ。舞踏会が終わったら、一旦、人間界に戻り、改めて帰って参ります」
………………………
タムと庄三郎とモロブは、暫し休憩をしてから、他の男女ゲストと共に舞踏会が行われる大広間へと連れられてきていた。
「あれ?ルシェちゃんがいないよ。どこへ行ったんだろう?」
「そうだな、見当たらないな。迷子になってしまったのだろうか?しかし、タムとは違ういい大人なんだから、それはないはずだ」
「モロブさん、酷いよ。僕は迷子になんてならないよ!」
タムが抗議をするとモロブは、右手を顔のところに上げ、すまん!という仕草をした。
「お城なんて、やたらに入れる所じゃねえから、あちこち覗きまくりしているんだろうよ。心配はいらんだろう!じきに来るさ」
「そうだね、大丈夫だよね……」
タムは、そう言いながらもキョロキョロしている。
すると、突然、照明が暗くなり二階へと続く大階段の踊り場にスポットライトが当たったのだ。
スポットライトに照らされ、浮かび上がる三人の姿にゲスト達は大歓声を上げる。
「わっ!あの人が王様なんだね?
僕、初めて王様を見ちゃった!感激!」
「ワシも初めてだ!タム、モロブ、王様の姿をしっかりと目に焼き付けておけよ!」
「はい!それとお妃様の姿と……。うん?あと一人、どなただろう?なんだか……。
庄さん、誰かに似ていませんか?」
「なんかさ、ルシェちゃんみたいな人だね」
「えっ?何だよ?もう一人?ああ、娘だな。王女様だろう?って、おい、はあ?まさか、ル、ル……」
「庄さん、ルシェですよ!あれは、ルシェです!多分……。どうして?」
三人の頭の中は、パニックになっていたのだった。
だが、そんな事にはお構い無く、王の合図で音楽が流れ始め、ゲスト達は謁見の列を作り始める。
手を振りながら階段を降りる王と妃は、ゲスト達が立つ場所よりも 一段高い位置にある長テーブル中央の席についたが、その両側はまだ空席で、隣国からの来賓者や公爵の貴賓席となっている。
そして、王と妃の側にルシェの姿はなかった。
…………………
「庄三郎さん、モロブさん、タム、遅くなって失礼しましたわ。さあ、王様に謁見しましょう。早く並ばないと!
さあ、皆さん行きましょう……?私、行きますわよ?」
「……うわっ!ルシェ!お前……いや、君は、あなたは、王様の娘?お姫様?だったのか?だったのですか?」
庄三郎は、どう接したらいいか分からない様子で何とか聞いた。
「あ……やはり、バレたのね。だから、お父様たちと並びたくはなかったわ。無理矢理、あそこに立たされたのよ。はぁ。
皆さん、今まで黙っていて、ごめんなさい。
私は、確かに国王の娘ですわ。でもね、私は あくまでもアンティーク影山の一員なのですから、いつもの様に接して下さい」
ルシェはそう言ったが、少しの間だけはギクシャクとした空気が流れてしまっていた。
だが、社交ダンスをしないルシェ達の踊りというのは、四人のダンスパフォーマンスで息を合わせた動きが必要だった。
ルシェ達は、列に並びながらも動きの確認をしている。
「うんっ?次はこんな感じの動作なのか?」
「そうそう、そうですわ!庄三郎さん、良くなりましたわ」
「さあ、王様の所まであと少し。我々、アンティーク影山の息の合ったチーム力を見せる時が近づいてきました!頑張りましょう」
「はいっ!モロブさん!」
ルシェとタムが元気に返事をする頃には、普段の仲間同士に戻っていたのだった。
ダンスパフォーマンスは、クラシックの曲に合わせて、優雅に踊っているつもりだったが、何処か変なのか、笑いが起きていたようだ。
踊り終わり、王の前に出た庄三郎の姿は、いつもとまるで違い、質問をされても、あまりに小さい声だった為、何度も聞き返されたりしたが、無事に終わってホッとしたのだった。
「あー!終わった!ま、こんなもんだろう!
皆んな、ご苦労さん!さあ、色んな花の蜜があるぞ!食べようぜ」
庄三郎が大きな声で行ったから、皆は吹き出してしまった。
王との謁見が済んだグループは、それぞれ流れている曲に合わせて、自由に踊っている者や立食をしている者もいる。
ルシェは、壁際の椅子に腰掛けて休んでいた。
「あれ?もしかして、君は……」
ルシェは、声を掛けられ横を向いた。
「えっ?」
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる