アンティーク影山の住人

ひろろ

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オールド国

浄化じゃ  ☆

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 今日、老女がアンティーク影山に銀の茶器セットを持ってやって来た。


 彼女は、高価な物にも関わらず金銭は要らないと言い、新米店主に託して帰ってしまったのだ。


 ところが、この茶器が曲者くせもので、中に邪気を放つ邪悪精がいたのだ。


 邪悪精は、もともと妖精だ。


 そこで、周囲を不幸にする邪悪精となった妖精を救うべく、庄三郎とタムは母国であるオールド国に向かったのだった。

………………………


「何用って……ワシらがここへ来るって事は、浄化を頼みに来たってことだろうが!

これは、茶器なんだが急須に邪悪精がいるんだ。
いつものように、邪悪精を妖精に戻してやってくれよ」


 庄三郎は、木箱の蓋を開けてオバーへと見せた。


「おや、随分と長い間、この中に閉じ込められてしまったようじゃな。おい、ヘナチョコ、家の中から祭壇を持ってきておくれ!」


 ヘナチョコと呼ばれたタムは、怒ることもせず素直に祭壇を運んできた。


「よし、ここへ置いておくれ、はい、ありがと。

 庄三郎、それをあっしに渡せ」


 木箱はガタガタと音をたて、黒いモヤが煙りのように出てきている。


「出せー、うぅぅぅ……」


「はいよ、今、儀式をして出してやるから、ちょっとお待ち」


 オバーは、木箱から急須を取り出し、祭壇に置き呪文を唱え始める。


「フーリルラ フルード フリフリ ノ フラール フレ……」


 ただ繰り返し唱えるだけではなく、動きを付けているのだ。


「庄三郎さん、オバーって凄いねっ!カッコいいなぁ」


タムは、小声で庄三郎に話した。


 タムは、この踊りを見るのが今回で3回目だが、とても興味深く面白いと感じているのだった。


(カッコいい?これが?いい歳した婆様が腕を上げたり下げたり、腰まで動かしている……けっこう、激しいよな。よくやるぜ)


「うぎゃあー!苦しいぃ!苦しい」


「早よ、中から出るのじゃ!フーリルラ フルード フリフリ ノ フラール フレ!……はぁ、はぁ、フーリルラ フルード フリフリ ノ フラール フレ……」


 オバーは、一心不乱に呪文を唱えながら踊り続ける。


 すると、天から美しい光が降り注ぎ、黒いモヤが消え去り、急須から妖精が現れたのだ。


「フーリルラ……」

 オバーは、気づかず儀式を続けていた。


「オバー!出たぞ!もう大丈夫だ!」


 庄三郎の声に気づき、オバーは力尽き地面に倒れこむ。


「お、お前さん、やっと、出てきた、な、はぁ、しんど……ちょっと……タイムじゃ」


 そのまま地面に仰向けになってしまった。


「はじめまして、私はセロルと申します。
皆さん、私を助けて下さってありがとうございました。

やっと妖精に戻れました。本当にありがとうございます」


 急須から出てきたのは、顔立ちの良い若そうな男性だった。


 背丈は妖精姿のタムや庄三郎より高くて、淡い黄緑色のノースリーブ膝丈ワンピースの様な服を着ている。

 
庄三郎やタムも同じ服装だ。


「おお、お前さん、かなり手こずらせてくれたねぇ。おかげで、バテバテじゃ。
イタタタ……腰が痛いよ。あっしも歳かね」

 
 そう言ってオバーが身体を起こした。
 

「オバー、大丈夫?」

 
「ああ、大丈夫じゃ。ヘナチョコは、優しいんだね。ありがと。

さてと、セロリだったかな?」


「セロルです!」


 セロルは、オバーの側に行き、片膝を地面に着きかがんで言ったのだ。


「あ、そ、ところでセロル、ツボの種は持っているかい?」


「あっ、オバーさん、すみません、持っていません」


「違う!あっしは、お婆さんじゃないんだから、オバーって呼ぶのじゃ!

やはり持ってはいないのじゃな。
なら、庄三郎、払え!」


「わかってるって!んで、何粒渡せばいいんだ?」


「そうじゃなぁ、大変じゃったから15粒貰おうか」


「げっ、15粒!それ高過ぎだろうが!
うちの店、休業していたから稼ぎが無いんだぞ。
タム、いくつ持ってきた?」


「えっ!どうしよう足りない!10粒しかないよ」


「は?それだけしかないのかい!しょうがないねぇ、ヘナチョコは優しい子だから、それに免じてまけてやろう。庄三郎、ヘナチョコに感謝するんじゃよ」


「タム、ありがとうよ。
オバーも、まけてくれてありがとうな!
また、よろしく頼むぞ。じゃあ、帰るか。
タム、急須を木箱にしまえ持って帰るぞ」


 タムは、箱の中へとしまい庄三郎に渡した。


「セロリだっけ?また、人間界に修行に行くんだろう?もう、邪悪精になるなよ!
それじゃあ、ワシらは帰るからな。元気でな」


 庄三郎が言うと、タムも頷いて手を振って帰ろうとすると、突然、セロルが話し出す。


「待って下さい!私は、その茶器セットの行く末が気になります。どうか一緒にいさせて下さい。お願いします」


「は?ワシらの店で修行をするってことか?」


 セロルと庄三郎の会話を聞いて、タムはワクワクするのだった。


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