ある日、突然 花嫁に!!

ひろろ

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番外編2

思い出を掘り起こせ

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 私、丸山柚花、じゃなくて、西崎 柚花は、只今、やる気の塊だ。


 軽米たちから、婚礼プロデュースを頼まれた柚花は、2人を見送りながら右腕に力瘤ちからこぶを作っていた。


「智くん、私、これから少し仕事に没頭しちゃうかもしれない」


「ああ、和希たちの結婚プロデュースの為だね?
少しくらい、帰りが遅くなってもいいよ。

俺が出来る事なら手伝うし、いつでも言って!」


「うん、うん、さすが!私の旦那様は優しいなぁ。ありがとう」


 夫の親友と私の後輩、いや仲の良い友人との婚礼式だもの、それはそれは、張り切っちゃうよ。


 軽米さんと前沢さんはもちろん、カレンダホテルの同僚達にも語り継がれるような、感動的な婚礼式にしたいと思う。


 と言っても、いつだって そのカップルに合った形を、全力でプロデュースしているけど。

………………

「柚花さん、あ、西崎さん、おはようございます。
あとで、皆んなに婚礼式予定日を伝えようと思います」


 そう言っていた軽米は、職場の皆に話したのだった。


「まあ軽米さん、おめでとう!
私は、待っていたのよ。
どんな披露宴がいいのかしら?

西崎さんの婚礼式同様、今回も私に任せてちょうだい!
とびきりのを考えるわよ。フフフ……」


「 ! 」


はぁ?倉田チーフ、今、何と仰いましたか?


もしかして、軽米さんのプロデュースをする気でいる?


困惑顔の柚花を横目で見ながら、軽米は首を傾げた。


(あれ?倉田チーフ、この日の前日は……)


「フフフ……。うんっ?あっ、あら?その辺りって、うちのお得意様のお嬢さんのお式が……。
待って、確かめてみるわ……」


倉田チーフは、棚からファイルを取り出して確認する。


「まっ、あらヤダ!私の担当する婚礼式と、日取りが前後しているじゃないのっ!

軽米さん、予定日を変更できる?
いえ、できないわよね?

もう、これでは無理ね……。
残念だわ、ごめんなさい。

野村さんと今日休みの2人の婚礼式は、私がプロデュースをするから、早めに言って下さい」


「えっ?私は、結婚しないかもしれませんよ?
独りの方が気が楽ですから。
他人と暮らすなんて面倒くさいです!」


「こらっ、野村さん!あなたは、結婚を勧める仕事をしているのに、なんて事を言うの……」


「はーい、すみませーん。仕事は頑張ります」


 離婚を経験している倉田チーフから言われても、何も感じない様子の野村を見て、柚花は野村に想いを寄せる外崎とのさきを思う。


 あーあ、外崎さん……手強い相手を好きになったみたいだよ。付き合うのも難しいでしょうね。


ふぅ、それにしても焦ったわ!
倉田チーフが、前日の婚礼式担当で良かった。

 
 それから午後の休憩時間を利用して、柚花と軽米は軽く打ち合わせをしていた。


「軽米さんは、どんな挙式がしたいの?」


「そうですねぇ、前沢家の意向で神前式になるかと。私はチャペルでしたいですけど……。

まあ、着物を着れるし、披露宴でドレスを着れればいいかな、って思います」


「そっか、そっか。で、予算的には、節約家の貴女だから、もちろん抑えめでいくんでしょ?」


「あ……その点は、親関係のゲストが多いと思いますので……。程よく援助があるかと。

あ、あの、西崎、いえ、柚花さんの時みたいな、面白い感じの婚礼式が良いって、私は思うのですが、ゴージャスな感じがいいって親達が……」


「えっ?面白い?私の婚礼式が面白かった?
えー!そうだったかしら?

あー、確かに倉田チーフのプランは、遊び心があったとは思うけど。
感動では無く、面白かったんだ……」


 柚花は、白目になって呟いた。


「あ、いえ。私たちスタッフは、仕事をしながら見ていたわけで。
私の見たところが挙式の、丁度、爆笑の場面だったので……。

ゆ、柚花さん?
上を向いてどうしたんですか?」


(あれ?もしかして気分を害してしまったかしら?)


「うふふ、私たちの思い出の婚礼式……ね」


 軽米は、柚花の表情を注意深くチェックする。



(ああニヤけた!なんだ、幸せな時間を思い出しているのか……)

 
 うーん、あの日。
私たちの婚礼式の日は、とびきり寒い日だったわ……。


「あ、柚花さん。もしかして、思い出に浸っています?

あー、私も思い出しちゃいますよ……。

あの日の西崎さんの顔……。

私は、忘れることができません」


「えっ?智也さんの顔?

まあね、イケメンだし!
あの日は、いつにも増して、最高に凛々しかったしね。
えっ、もしかして羨ましいの?」


「いえいえ、和希さんも負けないくらい男前なので、ちっとも……って、違いますってば。

あの日、柚花さんがカレンダホテルに到着する前の事です!

西崎さんが、大変だったんですから」


 軽米が唐突に言うから、柚花は固まった。


えっ?智くんが大変だった?


って、今頃 言うの?
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