ある日、突然 花嫁に!!

ひろろ

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ある日、突然。

賭けに出る!

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  俺は、今、とてもドキドキしている。

 歩みを止めてバックしたいと思っている。

 ウェディングドレスの柚花の手を取り、このまま トンズラしたいとさえ思っている。

 このまま、君を連れ去り、俺と暮らしてくれたら……俺は幸せだろう……。

 いや、それは違うな……

  互いに愛情がなければ、幸福感は得られないかもな……。


 おとこ、西崎 智也 28歳、大勝負の賭けに出た!


 それは、数日前、俺がカレンダホテルに花を生けに来た日のこと。

 俺は、軽米さんと挨拶を交わし仕事をしていた、すると再び彼女が現れ、この撮影に協力をして欲しいと言ってきた。


 撮影日が俺の公休日だったし、柚花が花嫁だと知って、参加すると言った。

 内心、嬉しくて浮かれる気持ちを必死に抑えて仕事をしていた。

 そんな時に、ふと匠海の顔が浮かんできてしまったのだ。

 
 匠海が柚花のことをどう思っているかは知らないが、柚花の方は もしかしたら、匠海に好意をもっているのかもしれない。

 考えたくはないが、両想いの可能性もある。


 俺は、匠海の気持ちを確かめる作戦を思いついた。

……………………

 智也は、匠海に電話をしている。

「匠海、実は俺、結婚するんだ……。

カレンダホテルで、突然、挙式キャンセルが出たから、その日に挙式だけしようって事になったんだ。

 突然の事だから、ホテルの同僚が列席してくれるだけなんだよ……」


「えーーー!結婚?ホテルの同僚?って、まさか、結婚の相手って……丸山さんじゃないよね?」


 匠海の驚きは、半端ない様子だ。

 匠海、嘘ついてごめん……。

「そうだよ、相手は柚花だ。 

 披露宴は、改めて違う日にするつもり。その時は招待するから、待っていてほしいな」

  智也は、そう言って挙式の日時と場所を告げて、電話を切ったのだった。

 
 これで、匠海が柚花のことを本気で好きならば、列席者がホテルの同僚だけなら、必ず俺から奪いに来るだろう。

 
 奪いに来るというより、告白をしに来るかもしれない。

 
 俺は、お前から隠れて柚花にアプローチをしている。


 もしも、お前が告白をして柚花が受け入れたのなら、俺はきっぱりと諦めよう。

 良い友人に戻ってあげよう……。

 そういう努力をしてみよう。


 俺は、そんな賭けに出たのだ!

 匠海、勝負だぞ。

 簡単に負けるつもりはないからなっ!

 ギリギリまでアプローチは、させてもらうからなっ!

 あー、でも、怖いなぁ。

 匠海に教えたのは間違いだったのかな?

 どうか、当日に匠海は来ませんように!


 智也は祈る気持ちで、今日という日を迎えたのだった。

……………………

 私、丸山 柚花は超イケメンの西崎 智也さんと挙式のCM撮影のため、チャペルに向かっている。


私のイメージで作ってくれたブーケって、どんなものなのかしら?


『柚花のイメージで作ったブーケだからね……受けとってほしい』


 この受けとってほしいという言葉に、ドキッときた。


 別に指輪を受けとってほしいと言われたわけでもないのに、花の事を言っているだけなのに、妙な気分になっている。


「智也さん、どんなブーケなの?
気になるから教えてほしいな」

 柚花は、新郎 新婦専用通路を歩き始めた時に智也に聞いてみた。


「えー、チャペルに着けばわかるのに知りたいの?

そんなに期待しないで……。
形としては、クラッチブーケだよ。

 花を束ねて茎の部分を持つタイプのやつで、オーソドックスな感じ。

 俺に技術を求めちゃいけないよ。

 おっ、この両サイドの薔薇は、今が見頃だね」


 そっか、クラッチブーケなのか……。

 私としては、ショート丈のキャスケードブーケが良かったな……上から下へ自然に流れる滝をイメージしたデザインのブーケ。

 それだったら、ハートにズキューン間違いなしだったな。


 はっ!いったい、私は何を考えいるんだ!

 そうだ、これも仕事のうちだった!

 ちょっとプライベートと混同してしまっていた!

 私の職場であっても、智也さんって私と2人だけの時はフレンドリーモードだ、私もつられてフレンドリーになっちゃうよ。


 あっ、後ろに軽米さんがいるけど……。

 まあ、軽米さんを友達と思っているみたいだから、気にしていないのかな?


  緑川神父を先頭に、父支配人、母倉田チーフ、隣に新郎 智也さん、私、後ろに軽米さんとでレッドカーペットの上を歩いている。


「皆さん、打ち合わせ通りに、チャペルの外側からチャペル正面入口に行って下さい。お願いします」

 軽米が大きな声で誘導する。


 一行は、チャペルの脇に差し掛かった。


(あ、とうとう、正面入口に着いてしまう……どうか、匠海がいませんように。

ここを曲がって、いるか、いないか?)


 智也は、心の中で祈っていた。


 先に正面入口に到着した倉田チーフの声が聞こえてきた。


「まあ、折原さん!どうして、ここにいるんですか?」


「 ! 」  「 ! 」


 柚花と智也は、耳を疑った。

 ついでに軽米も「は?」と言った。

 
 今、倉田チーフが折原さんと言った。

 もしかして、ここに来ているの?


 えっ?なぜ?誰かがサクラとして頼んだのかしら?


 私達も正面入口に着いたら、そこには準備をしている撮影クルーたちと手の空いているホテルスタッフがサクラとして数名、待機していた。


 その後ろに、なんと折原 匠海さんの姿があったのだった。


(匠海……やっぱり、来たのか……。

 俺は、簡単に負けるつもりはないからな!受けて立つ!)


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