ある日、突然 花嫁に!!

ひろろ

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想いはどこへ

藪から棒

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「友達?俺が柚花を友達ってくくりに考えていると思う?」

 そんな事を言われて驚いた。

 そして、更に追い討ちをかけるように智也は言う。

「俺が柚花を友達だと思っていると思うの?本当にそう感じているの?」

 智也は、少し強めの口調で言ったのだった。


 もしかして、私は責められているのかな?

「えっ?あの……え?」

 柚花は、言葉を失ってしまう。

 私は、これまで智也さんを友達だと思って接してきた。

 結構、仲良くなれたと思っていた。

 それなのに、私と友達ではないと言っている……。

 友達だと思っていたのは、私だけなのか……。

 私と食事をする気満々のくせに、友達だと認めていないなんて、信じられない!


 智也さんは、私のことを友達以下の存在だと思っていたのね……。

 すっごいショックだわ。

 天国から地獄へ突き落とされた気分。

 
「あっ、友達だと勘違いしちゃってた。

 バカだね私……。

 じゃあ、このマグカップは誰かと使ってね。この前の御礼だから、どうか受け取って。

 私は、もう帰るから。1人で帰りたいから!じゃあ、さようなら」


 柚花が席を立ったから、智也は慌てた。

「待って、会計をしてくるから、待っていて!」

 智也は、お釣りを拒否して急いで柚花を探すがどこにも見当たらない。


(どうして、突然、帰ってしまったんだろう?

 俺が告白まがいな事を言ったから、拒絶されたのか……。

友達だと思っていたと言っていた。

 正直、キツイ言葉だな。

 このマグカップを誰かと使ってなんて言われた……。

 やっぱ、ふられたのか。

 いや、待てよ、まだキチンと伝えていない……。

 あきらめるのは、まだ早いんだ)
 
 それから、智也はタクシー乗り場やバス乗り場を探す。

 しかし、柚花を見つけることが出来なかった。


 智也は、仕方なくカレンダホテルのお客様駐車場に行ってみた。


 だが、柚花の車は、無人のまま置いてある。


 今夜、ここに戻ってくるのかも分からないが、智也は隣に止めてエンジンを切って、助手席で待ってみた。


(俺に気づいて、何処かへ行ってしまうと嫌だから、エンジンは切っておく。

それにしても、5月といっても夜は冷えるな……寒い)

……………………

それから、暫くして駐車場にヘッドライトの明かりが差し込んできた。


 車を駐車させ1人が降り、車は去って行った。

(柚花だ!戻って来てくれて良かった!)


 柚花は、智也の車に気づかずに自分の車に近づいた。


 その時、智也は車から出て、柚花の前に立った。

「柚花!なんか怒らせたみたいで、ごめんね。許してほしい」

(俺、カッコ悪いなぁ)

「うわっ、きゃあ!……び、びっくりしたぁ。心臓に悪いから、脅かさないで!

 はぁ、驚いた!

 別に怒っていないから、気にしないで。

 私だけが友達になれたと勘違いしていたみたいで……。

まだ、友達にもなっていなかったんだね。

ちょっと、寂しいやら悲しいやら、少し落ち込んじゃって……あっ、ごめんね。

智也さんには、関係のない話だった。

ということで、私のことは、今後、仕事のお付き合いのみで、よろしくお願いします。さようなら」


 精一杯の笑顔を作って、さよならを言った。

 胸がズキズキと痛んだ。

 どどんと巨大な悲しみが、押し寄せる。

 柚花が車のドアに手を伸ばそうとした、その手を智也が掴んだ。

「ダメだ!まだ、帰らせない!自分だけ勝手な事を言って帰るのは、認めない!

 俺は、柚花と友達にはなれない!

そんなんじゃあ気持ちが収まらない」

 その言葉を聞いた柚花は、改めて智也に拒絶をされた気がして、腹が立ち反論する。


「そんな事を言うために、わざわざ来たの?信じられないっ!

友達になれないとか、拒絶された方の気持ちなんて、わからないでしょう?

 私は大人ですから、仕事の付き合いはします。

 でも、それ以外は関わりません。

 では、さようなら……。

 手を離して下さい……痛いです」

 柚花が言っても、手を掴んだままだ。


「嫌だ。この手を離したら、俺の手の届かない所へ行ってしまうから、

だから、離せない。

 風船みたいに何処かへ飛んで行っちゃうだろう?

 どこにも行かせたくない!

 もう、いい加減、分かってくれ!

 この、どんかん おんなー!」

(はっ!)

 智也は、想定外の告白の仕方をしてしまい、失敗したと思った。
 
(こんなはずではなかった……)


「はあ、何?どんかん女?

随分、酷いことを言いますね。

もう!離してっ!ふんっ!」

 握られた手を振りほどき、柚花は自分の車に乗り込んだ。


「ふんっ!何で鈍感女なんて言うのよ!

酷すぎる!腹が立つ!」


「待って、ごめん、冷静になって!」  

 智也は、急いで助手席のドアを開けて、乗り込んだ。


「ちょっと、勝手に乗らないで下さい!
もう、話すことはありません」

 柚花は、刺々とげとげしく言った。


「落ち着いて、ねっ?ごめんね。

変な暴言を吐いて、ごめんなさい。

ふーー。落ち着いて。ふーう」   

 智也は、謝りながら自分自身も落ち着かせようとしていた。

 気持ちを整えてから、智也が話す。

「私は、あなたが好きになってしまいました。

とんでもなく好きになったみたいです。

だから、友達ではなく、恋人になってもらいたいと思っています。

 柚花さん、どうか私と お付き合いをして下さい。

私を受け入れてくれますか?」


 冷静に大人の男性にチェンジした智也が告白をした。

「…………」

 柚花は、ポカンとした顔をしていた。

 驚き過ぎて、言葉が出てこない柚花だったのだ。

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