ある日、突然 花嫁に!!

ひろろ

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想いはどこへ

心が宙ぶらりん

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 今、婚礼式の主役たちが帰ったというのに、ゲストの折原 匠海さん、たっ君がまだ、ホテルに、ロビーにいた。


 でも、さっきとは服が違う……。


 家に帰って着替えて、速攻で来たってこと?


 なぜ?


 まさか、私を待つ為に来たの?

 仕事が終わるまで、私を待つつもりじゃないでしょうね?


……って、えっ?


 私と菊乃さんの話しを聞いて誤解をしている?


「たっく、あ、折原さん、ちが……」


「あっ、折原さん」


「 ! 」


 柚花が否定しようとした時に、ブーケを引き当てた あの子がやって来た!


 あ、そういう事なのか……。


「……では、私は仕事に戻ります。

 本日は、ありがとうございました」


 私はお辞儀をして、その場から立ち去ったのだった。


 私を待っているなんて勘違いして馬鹿みたいだ。


 早速、待ち合わせなの?


 そうなんだぁ……へぇー……。

…………………

「折原さん、まだいたんですか?」

 若菜が話しかけてきた。


「いや、ここに泊まる会社の同期と待ち合わせをしています。

 君こそ、まだ帰っていなかったんですね。

 さっき、新郎達は帰りましたよ」

 
 匠海が答えた。


「はい、さっきまで親族控室で親戚同士、話しが盛り上がっちゃって、母がそこに忘れ物をしてしまい、私が取りに戻っていました。

ほら、この紙袋。母は、おっちょこちょいで困ります。

 では、これで失礼します。さようなら」


 若菜は、そう言い 帰って行ったのだった。
 

 匠海は、若菜の後ろ姿を見送った。


 はぁー。


 溜息をつき、ソファにドスンと座る。


(何だか衝撃を受けた気がする……何なんだ?
このモヤモヤ感……ゴールインとかって何?

あの2人、いつの間にか 付き合っていたのか?)


「折原、お待たせ!

 早めにチェックインさせてくれたから、荷物を部屋に入れてきたんだ。

 旅行会社に勤めているって言うと、ちょっとだけ優遇してくれるんだよね」


 匠海の同期で、一緒に結婚式に出席していた大野がロビーにやって来た。

 彼は、他地方に配属されているため今日はカレンダホテルに宿泊する。


「お前、また、名刺を見せたの?

 その特権、お前は使い過ぎだろう!

 僕は、恥ずかしくて出来ないね!」


 匠海は、呆れて言ったのだった。


「あれ?折原、もしかして機嫌が悪いの?

 人の幸せを見せつけられて、ムカついたとか?

 もう、離婚の事は忘れろよ。

 さっ、独身の俺たちは自由なんだ!
 遊びに行こうぜ」


「あっ、お前、酷いなぁ!

 今日はお前のおごりだからな!
 よろしく。

 で、どこに行く?水族館?」

 と匠海が聞いたから、大野が答える。


「えっ?何で男2人で行かなきゃならないの?

 行くわけないだろう!却下だよ。

 取り敢えず、折原の車で出掛けよう」


「じゃあ、水族館だな」

(気持ちが沈んだ時は、ペンギンが僕を慰めてくれる。

 今、無性にペンギンに会いたいんだ!)


 大野は、当たり前の様に水族館に連れて行かれたのだった。

…………………

 
 なんだか、なんだか、モヤモヤしている。


 どうしてなんだろう?


 あの子と一緒にいる たっ君を見ているのが嫌で、否定もしないでサロンに来てしまった。


 サロンでは、軽米さんが仕事をしていて、他スタッフは休憩中なのだった。


「はぁ、疲れた」


 柚花は、ドスッと椅子に腰掛けて、ぶっきらぼうに呟いた。


「どうしたんですか?

 さっきまでは、婚礼式成功って言って機嫌が良かったのに……」 


 柚花の少しの変化に気がついた軽米が聞いた。


「別に何も無いわよ。

 あー、お腹が空いちゃった!

 それよりも、なんか飲みたい気分だな……。

 今晩、ここに車を置いて、飲みに行かない?」


 珍しく柚花から誘った。

 しかも、飲みに行こうと言った事に驚いた軽米が再度 聞く。


「なんか、ありましたね?

 でも、丸山さん、酒癖が悪いから外で飲むと危険ですよ?

 大丈夫ですか?キス魔にならないで下さいね」


「何も無いってば!さっき、あなたが泣きそうな顔をして、落ち込んでいたから誘ってみたの!

 うーん、じゃあ、お酒はやめて、しゃぶしゃぶにしようか?」


「あっ、はい。そうしましょう」


 柚花の提案を軽米は、快く受け入れたのだった。


……………………


“鍋でっしゃろ”に来た2人。


「丸山さん、どうしたんですか?

 私には、話して下さい」


 心配をしてくれている軽米さんが聞いてきたけど、私自身も モヤモヤの正体は不明なのだ。


「いや、別にこれって事は無いの。

ただ、モヤモヤしている感じ……。折原さんが……」


(丸山さん、やっと言い出してくれた、うん、折原さん?えっ?折原さんがどうしたの?)


「ブーケプルズの時にブーケを引き当てた子、覚えている?

 あの子と待ち合わせをして、多分、何処かへ行ったみたいなのよ。

 なんだか、それからモヤモヤしていて、自分でも分からないんだけどね」


「はっ?まさか、好きになってしまったとか?」


「ちょっと、軽米さん、ズバリ言わないでよ」


 柚花は、認めたくない気持ちが大きくて、軽米を叱ったのだ。


(えー!嘘でしょう?偽妻をしていたから、情が湧いたとか、好きと思い込んでいる気がするけど……)


「丸山さんは、折原さんの妻になりきっていたから、ヤキモチを妬いているんじゃないですか?

 そんな気がしますけど?

ちょっと考えてみて下さい。

 あの人には、結婚しようと、いや、実際に結婚した人がいたんですから、そんなに直ぐに相手の事を忘れる事なんて、できないと思いますけど?」


 軽米さんは、真剣に考えて、私に話してくれている。ありがとう。


「折原さんと春菜さんって、上手くいっていなかったみたいなの。婚礼準備の時もギクシャクしていた感じだったんだ。


 それに、春菜さんに好きな人がいて、どうやらその男性を追いかけて行ったらしいの。

 折原さんが気の毒なのよね」


「待って下さい!丸山さん、同情と愛情を間違えないで下さいね!

ここは、冷静になって下さいってば。

それに思い出してみて下さい。

折原さんのお母様のことを!

たっ君って呼んで溺愛している感じを……。

丸山さん、はい、息を吸って、吐いて……」


「えっ?はい、すぅーーー、はーーー」


 何故か深呼吸をさせられた柚花だったのだ。
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