ある日、突然 花嫁に!!

ひろろ

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揺れる想い

あなたがつかめない

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 先日、智也さんの偽恋人として元カノに婚礼式の手配をした私。


 今晩、その御礼として、誘われたのかもしれない!


 レストランの駐車場に着き、智也さんの車があるか、確認をする。


「まだ、来ていないみたい……」


  どうしよう、席を取っておくために中に入っていた方がいいのかしら?


 でも、駐車場で待ち合わせだったしな……。


 ピロロリラ、ピロロォーリラー!


 智也からメッセージが届いた。


“すみません、渋滞で遅くなります”

そっか、それは仕方がないか。
 
“了解、駐車場で待っています”

 
 柚花が返信した。


 あれから、30分が経過したが、まだ来ない。

 
 ここのレストランに駐車場の空きが、あと1台分となった時に、車が入ってきた。


 どうか、智也さんでありますように!


 当然、残りのスペースに駐車し、中から2人が降りた。


 智也さんじゃなかった……。


 レストランの中も満席だろうと思う。


 その時、柚花の車を塞ぐように車が止まった。


 そして、智也から電話がかかってきた。


「待たせてごめんね。やっと着いたけど、満車だね。先に他に行こうか」


「はい、どこにしますか?」


 柚花が聞くと、後ろを着いてきてと言われ、智也は車を発進させた。


 行き先が分からないし、信号機で離れたらアウトなのに!


 急いで、その後を追う。


 車は、ここから、すぐの海風公園の駐車場へと入って行った。


 ここは駐車場に車を止めて、浜辺の散歩ができるから、恋人達に人気のスポットなのだった。


 智也が止めた隣に車を止めて、柚花が車から降りる。


 先に降りていた智也が言う。

「俺から誘ったのに随分と待たせてごめんね。

 お腹が空いているでしょう?

 こっちの車においでよ。コンビニお握りがあるんだ!」


 はっ?何故?レストランに行くつもりだったのに?何故にお握りになったの?

 他にも店は、あるのに。

 わからない、私には、この人が分からない!


 意味が分からないという思いだったが、イケメンの誘いにのる私。


「お邪魔します……」恐る恐る助手席に座る。


「ツナと明太子と鮭、どれがいい?」


 智也が差し出した3つのお握り。


 そのうち、私の分は1つと考えるのが妥当だろう。


「これ、いつも一緒に仕事をしている若い子がくれたんだ。せっかくだから、食べようよ。

 どれにする?」


「あ、じゃあ、ツナをもらうね。

 いただきます……」


 これにかぶりつくと、口紅も取れるし、歯に海苔がつくかも。


 食べながら、柚花のテンションが下がっていく。


「そうだ、お茶がある。これ飲んで」

 智也が差し出してくれたが、1本しかないようだった。


「えっ、智也さんの分がないでしょう?」


「いいよ、俺の事は気にしないで!どうぞ」


 それじゃあ、いただきますと言って貰い、ひと口飲んだ。

 
 それにしても、この人が口数が少ないと言われるのが、よく分からない。

 これだけ話せれば、いいと思うけど……。


……と思ったら、無言で鮭のお握りを食べている。


 それから、手のひらに乗せた明太子お握りを無言で、柚花に差し出した。


 それは、“"食べる?”のアイコンタクトですね?


 いいえ、どうぞ食べて下さい。と私もジェスチャーで返す。
 
 首を振ってから、あなたがどうぞ!という様に、手を出したら、手の上にお握りを乗せられた。


「へっ?違います。智也さんが食べて!」


「あっ、いいの?じゃあ、食べるね」


 そう言って、明太子お握りも食べ始めた。

 ……無言の中に突然、異音が聞こえた。


 ひっく!


 ひっく!うっ!ひっく……。


「智也さん、しゃっくり!大丈夫?

 何か飲むもの無いかしら……」


 柚花が心配して言うと、しゃっくりをしながら手を振って智也が言う。

「そのうち、ひっく!なおるから、ひっく、大丈夫ぅ、ひっく!」

 
「このお茶……飲んじゃったけど飲む?」

 柚花がお茶を出して、一応 聞いてみる。


「うん、ひっく!ありがとうんぐ!」


 ゴクゴク、ゴクゴク、ゴクゴク!

 かなりお茶を飲んでいる。


 ひぃ、間接キスだわ!平気な顔をしている!

  友達だと思っているから、気にしないのかな?


「あー、苦しかった!お茶をありがとう。

やっと、落ち着いた。さて、出ようか?」


 何?この真冬に何処へ行くの?まさか、海?


「えっと、出るとは?何処かへ行くのかしら?」


「そうだよ。せっかく来たから海に行こう」


 当たり前のように智也が言った。


「あ、うん、せっかくなんだけど、私、厚着していなくて、ちょっと寒いかも……」


「大丈夫!俺のコートを貸してあげる。

 はい、これを着てみて」


  智也から渡されたコートを着てみたら、ぶかぶかだったが、丈が長いからスカートも隠れて、あったかだった。


 智也もコートを着ているから、最初から私の為に用意したコートだったらしい。


 智也は、トランクから、物が入った買い物袋を出して持っている。


 散策路を通り、月明かりに照らされた砂浜に出て、歩く。


 智也さんは、黙って歩いている……。


 波の音がロマンチックな雰囲気を演出するのでしょうが、今、そんな余裕は無い。


 私の靴が砂に潜って、歩きにくいのよ。


 夜の砂浜に来て、何をする気なの?


 もう!何か話してくれませんか?

 
 ねぇ、黙っていないで何とか言って下さい!


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