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応援したい!
それは、無理かも?
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折原 匠海が運転する車を見送る柚花。
たっ君は、偽妻役解消を申し出た私と、また会うつもりでいる。
気まずくないのかしら?
私は、気まずいし、飲酒ありの合コンへの参加は、ちょっと無理。
「もしもし、軽米さん!
来週、飲酒ありの合コンなの?
私は、行きません。もう、失態を犯したくないからね」
柚花は、アパートへ向かいながら、軽米に電話をした。
「丸山さんは、お酒を飲まなければいいんですよ!
主役が居ないと、困ります。
一緒に行きましょうよ。野村さんも楽しみにしているし!ねっ、お願いします」
「あ……さっき折原さんの偽妻役を辞めてきたの!
何か、会いづらいのよね……。
ごめんね、私はキャンセルしてちょうだい」
「そうなんですね。じゃあ、気が変わったら出席して下さいね」
軽米は、残念そうな声で渋々言ったのだった。
部屋に戻った柚花は、再び、ペンギン缶のクッキーをパクパク食べた。
あっ、これが最後の1個だ……。
パクッ。
ふぅ、これで平穏な日常に戻る……。
刺激のない毎日に戻るのか……。
……………………
「丸山さん、おはようございます」
軽米が元気に挨拶してきた。
「おはようございます。来週のこと、ごめんね」
「あ、気にしないで下さい。
丸山さんの分も楽しんできちゃいますよぉ」
戯けて、軽米が言うから、柚花はホッとしたのだった。
今日は、婚礼式がないので、ブライダル部は通常出勤の9時半から退勤18時半までの勤務だ。
ただ、仕事帰りにブライダルの相談に来る人が割といるため、残業も多い。
……………………
午後、5時過ぎ。
フロントから、ブライダル部へ相談したいというお客様がいらしているという連絡が入った。
本日 出勤している軽米さん、緑川さんはサロンでお客様と打ち合わせ中、外崎さんは、スタッフルームで式プランを考え中。
「外崎さん、相談のご依頼だから、サロンに行ってきます」
フロントには、ブライダルスタッフに相談をしたいと言う男性が待っていた。
柚花は、早速、2階にあるブライズルーム隣の サロンと呼んでいる部屋、ブライダルサロンに案内したのだった。
ブライダルサロンの中は、窓側に丸いテーブルと椅子のセットが5つ置いてあり、壁側には、ずらりとドレスが吊るし並んでいる。
衣装を決めたり、式の相談や打ち合わせを行う部屋なのだ。
男性は、サロンの中を見て言う。
「あっ、このドレスとかがある部屋は、まだ、早いです。まだ、そこまで話しが進んでいません。
他で、話しができませんか?」
「……と言いますと、まだ、ご予定では、ないということでしょうか?」
柚花が確認の為に聞いたのだ。
「はい、サプライズでプロポーズをしたくて、相談にきたのです。
何とか協力をしてもらえないかと思いまして……」
「なるほど、そういうことですか。
大丈夫です。こちらのサロンで、お話しを伺います。中へどうぞ」
柚花は、30代前半くらいに見える男性をサロンに通し、話し合う。
名前は、新井 進次郎さん、32歳、化学工場会社員。
相手の年齢は23歳、同じ会社で、事務員をしている。交際3ヶ月で、プロポーズを考えているとのこと。
成功すれば、ここで婚礼式をすると言う。
「それで、どんなサプライズをお考えになっていらっしゃいますか?」
「うーん、フラッシュモブとか……ダメですかね?」
新井さんが照れながら言った。
「あぁ、知らない人が突然、次々と踊り出すサプライズで、皆んなに祝福されるというアレですね。
それは大勢の人が必要になりますね。
新井様か、相手の方がダンスのご趣味があるのですか?
協力者が沢山いてくださるなら、当ホテルのお部屋をお貸しできると思います」
柚花がさらりと言った。
「いえ、お互いダンスには縁はありませんし、協力者もいません。
ですから、相談に来たのです」
そうか……。
ダンスに縁が無く、協力者がいないのは厳しいなあ。
それに、相手がダンスとかに興味がなかったら、こちらがお膳立てをしたって、シラけて終わってしまう可能性が大なのだ。
お客様を逃す事になるだろうが、お客様のために言うしかない。
「そうですか、もしもフラッシュモブをご希望なのでしたら、それを専門にしている会社があるので、そちらにご相談をされては、いかがでしょうか。
ですが、相手の方が落ち着いた雰囲気でのプロポーズをお望みの方も、多くいらっしゃいます。
特に恥ずかしがり屋の方ですと、フラッシュモブは逆効果になる場合もございます。
その場では、空気を読んで承諾し、後でご破算になる場合もございます。
あ、大変、不躾な事を申しまして、すみません。
お相手の方は、賑やかな事がお好きな方でしょうか?」
新井さんは、黙って考えてから答える。
「いえ、どちらかと言うと、おとなしい人です。
賑やかなのは、苦手かもしれません。
テレビで、フラッシュモブのプロポーズをしていて、成功していたから、誰でも喜ぶものだと思っていました。
そうか、恥ずかしいと思う人もいるのか……。
他の事を考えようかな。
一緒に考えてもらえませんか」
「はい、喜んで、考えさせて頂きます」
柚花は、失礼な事を言ってしまった後なので、ホッとして返事をしたのだった。
しかし、柚花には 不安な事があった。
相手が23歳と若いうえに交際が3カ月と短い。
果たして、OKしてもらえるのだろうか?
サプライズが失敗した場合は、本人ばかりか協力する側にもダメージがある。
これは、残業覚悟で根掘り葉掘り聞くしかない!
「……はい、そうなんですか、なるほど、えっ、彼女から告白されたんですか!へぇー、あっ、失礼しました!」
おっ、これはいい流れになるかも?
成功する可能性があるかな。
「本日は、お話しを聞かせていただき、有難うございました。
それでは、またのお越しをお待ちしております」
さあ、考えなくっちゃ!
プロポーズ大作戦!
たっ君は、偽妻役解消を申し出た私と、また会うつもりでいる。
気まずくないのかしら?
私は、気まずいし、飲酒ありの合コンへの参加は、ちょっと無理。
「もしもし、軽米さん!
来週、飲酒ありの合コンなの?
私は、行きません。もう、失態を犯したくないからね」
柚花は、アパートへ向かいながら、軽米に電話をした。
「丸山さんは、お酒を飲まなければいいんですよ!
主役が居ないと、困ります。
一緒に行きましょうよ。野村さんも楽しみにしているし!ねっ、お願いします」
「あ……さっき折原さんの偽妻役を辞めてきたの!
何か、会いづらいのよね……。
ごめんね、私はキャンセルしてちょうだい」
「そうなんですね。じゃあ、気が変わったら出席して下さいね」
軽米は、残念そうな声で渋々言ったのだった。
部屋に戻った柚花は、再び、ペンギン缶のクッキーをパクパク食べた。
あっ、これが最後の1個だ……。
パクッ。
ふぅ、これで平穏な日常に戻る……。
刺激のない毎日に戻るのか……。
……………………
「丸山さん、おはようございます」
軽米が元気に挨拶してきた。
「おはようございます。来週のこと、ごめんね」
「あ、気にしないで下さい。
丸山さんの分も楽しんできちゃいますよぉ」
戯けて、軽米が言うから、柚花はホッとしたのだった。
今日は、婚礼式がないので、ブライダル部は通常出勤の9時半から退勤18時半までの勤務だ。
ただ、仕事帰りにブライダルの相談に来る人が割といるため、残業も多い。
……………………
午後、5時過ぎ。
フロントから、ブライダル部へ相談したいというお客様がいらしているという連絡が入った。
本日 出勤している軽米さん、緑川さんはサロンでお客様と打ち合わせ中、外崎さんは、スタッフルームで式プランを考え中。
「外崎さん、相談のご依頼だから、サロンに行ってきます」
フロントには、ブライダルスタッフに相談をしたいと言う男性が待っていた。
柚花は、早速、2階にあるブライズルーム隣の サロンと呼んでいる部屋、ブライダルサロンに案内したのだった。
ブライダルサロンの中は、窓側に丸いテーブルと椅子のセットが5つ置いてあり、壁側には、ずらりとドレスが吊るし並んでいる。
衣装を決めたり、式の相談や打ち合わせを行う部屋なのだ。
男性は、サロンの中を見て言う。
「あっ、このドレスとかがある部屋は、まだ、早いです。まだ、そこまで話しが進んでいません。
他で、話しができませんか?」
「……と言いますと、まだ、ご予定では、ないということでしょうか?」
柚花が確認の為に聞いたのだ。
「はい、サプライズでプロポーズをしたくて、相談にきたのです。
何とか協力をしてもらえないかと思いまして……」
「なるほど、そういうことですか。
大丈夫です。こちらのサロンで、お話しを伺います。中へどうぞ」
柚花は、30代前半くらいに見える男性をサロンに通し、話し合う。
名前は、新井 進次郎さん、32歳、化学工場会社員。
相手の年齢は23歳、同じ会社で、事務員をしている。交際3ヶ月で、プロポーズを考えているとのこと。
成功すれば、ここで婚礼式をすると言う。
「それで、どんなサプライズをお考えになっていらっしゃいますか?」
「うーん、フラッシュモブとか……ダメですかね?」
新井さんが照れながら言った。
「あぁ、知らない人が突然、次々と踊り出すサプライズで、皆んなに祝福されるというアレですね。
それは大勢の人が必要になりますね。
新井様か、相手の方がダンスのご趣味があるのですか?
協力者が沢山いてくださるなら、当ホテルのお部屋をお貸しできると思います」
柚花がさらりと言った。
「いえ、お互いダンスには縁はありませんし、協力者もいません。
ですから、相談に来たのです」
そうか……。
ダンスに縁が無く、協力者がいないのは厳しいなあ。
それに、相手がダンスとかに興味がなかったら、こちらがお膳立てをしたって、シラけて終わってしまう可能性が大なのだ。
お客様を逃す事になるだろうが、お客様のために言うしかない。
「そうですか、もしもフラッシュモブをご希望なのでしたら、それを専門にしている会社があるので、そちらにご相談をされては、いかがでしょうか。
ですが、相手の方が落ち着いた雰囲気でのプロポーズをお望みの方も、多くいらっしゃいます。
特に恥ずかしがり屋の方ですと、フラッシュモブは逆効果になる場合もございます。
その場では、空気を読んで承諾し、後でご破算になる場合もございます。
あ、大変、不躾な事を申しまして、すみません。
お相手の方は、賑やかな事がお好きな方でしょうか?」
新井さんは、黙って考えてから答える。
「いえ、どちらかと言うと、おとなしい人です。
賑やかなのは、苦手かもしれません。
テレビで、フラッシュモブのプロポーズをしていて、成功していたから、誰でも喜ぶものだと思っていました。
そうか、恥ずかしいと思う人もいるのか……。
他の事を考えようかな。
一緒に考えてもらえませんか」
「はい、喜んで、考えさせて頂きます」
柚花は、失礼な事を言ってしまった後なので、ホッとして返事をしたのだった。
しかし、柚花には 不安な事があった。
相手が23歳と若いうえに交際が3カ月と短い。
果たして、OKしてもらえるのだろうか?
サプライズが失敗した場合は、本人ばかりか協力する側にもダメージがある。
これは、残業覚悟で根掘り葉掘り聞くしかない!
「……はい、そうなんですか、なるほど、えっ、彼女から告白されたんですか!へぇー、あっ、失礼しました!」
おっ、これはいい流れになるかも?
成功する可能性があるかな。
「本日は、お話しを聞かせていただき、有難うございました。
それでは、またのお越しをお待ちしております」
さあ、考えなくっちゃ!
プロポーズ大作戦!
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