ある日、突然 花嫁に!!

ひろろ

文字の大きさ
上 下
6 / 129
身代わり花嫁

一難去って、また一難。

しおりを挟む
 気分屋の秋の天候が、鳴りを潜めた本日は、快晴!

 風も無く、まさに船上結婚式 日和なのだった。


 豪華客船側の原口さんとの共同企画は只今、進行中。


 この企画は、途中まで成功していたはずだったのに、花嫁が逃げてしまったから、大変だ!


 仕方なく、私が身代わり花嫁をしているけれど……。

  今!

 目の前に新婦、春菜さんの大学時代の友人が来てしまったのだ!


 わっ!どうしよう!

 これは、直ぐにバレてしまうだろう。

 春菜さんとは、多分、声は似ていない。

 
「春菜、さっきのケーキカットは、みんなで爆笑しちゃった!

 あら?なんか挙式の時とは、顔が違うっぽいね!メイクの力で、別人みたいになれるなんて、凄い!

 いつも綺麗な春菜だけど、なんだか今は、可愛い感じだよ」


 手を振って否定しながら、いやん!恥ずかしい……という素振りを見せ、顔を軽く手で覆う様に下を向く。

 今、話したのは、この人かな?

 柚花は、花で隠してある写真と匠海に書いてもらった名前を照らし合わせている。

 少し暗くて、見づらいけど……。 

 この服は、これ!

 アヤコさんね。この人、鋭いわ。

 ずっと下ばかり見ていても不自然だし、前も見ないとね。開き直ってやるわ。


「あー、春菜、前髪の分け目を変えたんだ!
 それで、別人みたいになったのかな?

 それにしても、さっきは傑作だったよ。
 面白かった!あれ、演出だったの?」
 

 えーと、この人は、ユキナさん。

 私、手汗、半端ないです。


「そうそう!普通、あんな風に割って入る人なんて、いないものね。

 すっごい、うけた!」

 この人は、マナホさんだから、隣にいるのが、スミカさんだ。


 うわっ、やばいっ!

 話さないと怪しまれるよね?

 これは、大ピンチですっ!

 
「そうです!あれは、演出だったんです。
バレたちゃいましたか!でも、面白かったでしょう?
なら、良かったです。なあ、智也!」

 いきなり、新郎 たっ君が言った。

「そうだよ!ちょっと、他とは違う演出で、楽しかったでしょう?

 喜んで頂けたようで、光栄です」と智也が応えた。


 私は、その声に驚いた。

新婦友人達の両隣を挟むように、いつの間にか 智也さんと、もう1人 男性が立っていたからだ。


「あっ、あなたは!さっきのほっぺにチュッの人ですね!うふふ」


 新婦友人、独身スミカが興奮したように言った。

 イケメンが2人もいることに、興奮しているのだと柚花は悟った。

「そうだよ!コイツが2人の間に入った犯人だ!独身だから、許してやってー」

 お調子者、和希が隣にいたスミカに言い、続けて4人の独身 新婦友人たちを彼女等の席にエスコートして行ったのだった。

「じゃあね、匠海!花嫁さん!」

 智也は、片手を上げ、和希の後を追って、彼女たちの席に行った。


「私、一言も話さないで済みました。

匠海さんの お友達のお陰です。

お礼をお伝え下さい」


 匠海は、柚花に笑って頷いてから、彼女たちの方を見た。


(智也と和希は、本当にいい奴らだから、ずっと大切にしないとな。2人とも、ありがとう。

 春菜の友人は、お前達に任せたぞ!)


 匠海は、良い友人に恵まれた満足感に、今の自分が置かれている状況を忘れ、目の前に置かれている料理を見た。


(ホッとしたら、お腹が空いてきたな……。
美味しそうだけど、丸山さんは食べる気分ではないだろうな……。ローストビーフサラダだけでも食べようか……)


 カシャ!


 えっ?ドキッ!


 匠海は、少し驚き顔を上げた。


(あっ、君だったのか、ゲストが来たかと思った……良かった)


 柚花も写真を撮られた事に気付き、自分から声を掛けた。

外崎とのさきさん、フォトムービーの為の撮影ですね。

 よろしくお願いします」

 
 婚礼チームスタッフの外崎は、お辞儀をし、足早に去って行った。

 
 ふー、疲れた……。

 ぼんやりと前を眺めている柚花だった。

 
「 ! 」


 えっ、こっちに、このメインテーブルに向かって知らない男性2人と女性1人が歩いて来る!

 年配のおじさん1人、中年のダンディおじ様1人と若い女性と言っても社会人と思える感じの3人!


 柚花が気付いたのと同時に、新郎 匠海も近づいて来るピンチに気づいた!

(うわっ!人が来る!誰だろう?

 父の会社関係者がここまで話しに来るとは、考え難い。

 かと言って、僕には新婦の会社の人か、新婦親族なのか見分けが出来ないから、対応に迷うな……)


「匠海さん、こっちに来る人は、誰?」

 柚花が手短に聞いたが、匠海は首を横に振った。


 2人の後方で、動くスタッフの気配を感じたが、前を見続ける2人だった。


 私を見てニコニコ、ニヤニヤしながら、近づいて来ると言うことは、新婦関係者だろう。


 来た!やばいっ!


「樋口さん、おめでとう」と3人が言って、新郎にも挨拶をした。 

 新婦関係者の誰だろう?会社の方かしら?


 手にビールを持った おじさんが新郎にお酌をしながら、言う。

「私は、花嫁さんの勤め先の支店長で、御園生みそのおという者です。

 どうぞ、今後とも よろしくお願い致します」


「本日は、ありがとうございます。こちらこそ、どうぞ宜しくお願い致します」

 逃げた花嫁の今後の事は知らないが、この場を取り繕う新郎だったのだ。

 新郎を横目に見ながら、新婦の方は、もう1人の男性、ダンディおじ様に捕まっている。


 こちらも手にビールを持っているのだった。


「さあ、花嫁さんも飲みなさい。

 あれ?樋口さん、どうしたの?静かだね?

 なんか、いつもと違うね?」


 これは、今度こそ、偽物花嫁がバレてしまうわ!


 誰か、誤魔化すすべを教えて下さい!!


 もう、無理ですっ!

しおりを挟む
1 / 3

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

大切を押し付けられた聖女

恋愛 / 完結 24h.ポイント:113pt お気に入り:3,552

復讐のために悪女を演じた令嬢の幸せ

恋愛 / 完結 24h.ポイント:49pt お気に入り:376

継母の心得

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:70,262pt お気に入り:24,143

令嬢はまったりをご所望。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:4,110pt お気に入り:21,511

処理中です...