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身代わり花嫁
時間がない! ★
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「時間が無いわ!丸山さん、新婦のお母様とメイク室に入って!
メイクの吉田さん、なるべく春菜さんに似せて下さい。
お母様は、アドバイスをお願いします。
ヘアの松本さん、顔を隠す飾りをつけて下さい。
時間が無いです。20分間 同時進行でお願いします」
「はい!」
ヘアメイク担当の2人は、つべこべ言う暇がないので、とにかく返事だけして、柚花と新婦母と支度部屋に入って行った。
「新婦の春菜さんは、ウエストがとても細かったです。
衣装さん、ウエストが目立たなくて、露出が少ないデザインのドレスを探して下さい。
野村さん、軽米さんも手伝って下さい」
「はいっ」
「外崎さんは、男性ですから手伝いは無しです!
原口さんの所へ行って、披露宴の内容を再検討して、私に報告すること。
すぐ、行って!」
「はいっ!」外崎は、走って行った。
身代わり花嫁となった担当者の代わりに、倉田チーフが次々に指示を出し、新郎の両親と新婦の父親には、それぞれの控室に戻ってもらったのだった。
「僕は何をしたらいいですか?」
手持ち無沙汰の新郎が倉田チーフに聞いた。
「はい、新婦 春菜さんについて、教えて下さい。質問にお答えして頂きます。
身代わり花嫁の丸山に伝えますが、よろしいですね?」
倉田チーフは質問をしては、猛スピードでメモしてゆくのだった。
コン!コン!
「はい、どうぞ!」
新郎が返事をすると、新郎の友人2人が入ってきたのだった。
2人とも長身で、スタイルも良く、端正な顔立ちだ。
新郎も、この2人と並ばなかったら、なかなかのイケメンなのだろうが、残念な事に霞んでしまう。
「よお、匠海おめでとう。冷やかしに来ちゃったよん」
お調子者の和希が言った。
「和希、智也!
今日は人生最悪の日だ!助けてくれよー!
花嫁に逃げられたんだ!」
「は?何言ってんの?お前」
何も知らない智也は、冷たく言ってしまった。
新郎の友人が来た事に、此れ幸いと思った倉田チーフが言う。
「はい、それは事実です。理由は、わかりません。
それでも、身代わり花嫁を用意しておりますので、披露宴を行います。
他の方々に知られないように、ご友人様も是非、ご協力をお願い致します。
この事は、ご内密にお願いします。
よろしいですね?」
「は、はい!」
2人の友人が揃って返事をし、ブライズルームを後にした。
婚礼チームは、一丸となって頑張り、ようやく花嫁を作り上げたのだ。
一心不乱に仕事をしたスタッフ達は、今日の仕事はやり切った!という感じに、やつれていた。
「まあ、丸山さん!別人になったわ!
倉田チーフが驚いて言った。
「顔を隠す飾りは、余計に顔を見ようとされます。
なので、敢えて、顔を出して、まとめ髪にしました。
先程の新婦とは違う分け目にして、丸山さんのウェーブの髪をゆるく編み込み、ウェーブウィッグを付けポニーテールにしました。
豪華な花飾りを付けたので、目線は花にいくはずです。
倉田チーフ、いかがでしょうか?」
ヘア担当の松本が言った。
「そうですね、この方がいいかも。上出来です!」
倉田チーフが言った。
「メイクでは、目尻を上げて、春菜さんと同じ付けまつげにして、似せてみましたが、いかがでしょうか?」
メイク担当の吉田が言った。
「春菜に似ています。これなら、大丈夫です。丸山さん、よろしくお願いします」
新婦母からの太鼓判をもらい、一同はひとまず安心した。
「メイクして春菜さんに似た仕上がりになって、ホッとしました。
白いドレスも胸下から、緩やかに広がってゆくエンパイアラインの型で、素敵です。
皆さん、ありがとうございました。
お色直しの方のドレスやヘアメイクの準備もお願いします」
倉田チーフは、そう言うと柚花に向き直って言う。
「これ、新婦の情報を書いておいたから、目を通しておいて。
あなたは、頭がいいから暗記が得意なはず。
大丈夫、覚えられるから頑張って!」
頭がいいとか、倉田チーフ、適当な事を言っちゃって……。凄い達筆な字だな、解読難しいです。
私は、この婚礼の担当だから、春菜さんについては、ある程度は把握しているけど……。
船長式の時、新婦友人が来て会話をしていたし、私が偽物だと すぐバレるでしょう。
こんな事して、大丈夫かしら……。
「あ……丸山さん、とても綺麗です。
ご迷惑を掛けて申し訳ありません。
どうかよろしくお願いします」
新郎 匠海が言った。
「はい、こちらこそよろしくお願いします。
バレないように精一杯、務めさせて頂きます」
他のスタッフ達からも、綺麗だと煽てられて、ちょっぴり気分が良い柚花なのだった。
「そうだ、さっき新婦友人達と一緒に写真を撮りました。
今は、あまり見ない、懐かしいポラロイドカメラで撮ってもらって、頂いた写真があります。
この写真です」
新郎 たっ君が……いや、匠海さんがポケットから取り出して、私に見せた。
「何か書くものとメモ紙ありますか?」
匠海が柚花から筆記用具を受け取り、写真の人物のシルエットだけをざっくりと描いて、4人の友人の名前を書いた。
「この4人が春菜の大学時代の友人です。
丸山さんがご存知の通り、披露宴の招待客数は、僕の方側が圧倒的に多くさせてもらっています。
だから、春菜を知っている人は、親族以外では、この友人と会社関係の人くらいです。
春菜の友人達は、二次会に呼んでいます……
あっ!」
匠海が大事な事を思い出したのだ!
すぐさま、柚花に視線を向けた。
「えっ、私は二次会に、身代わりの花嫁で出席は、できません。
すぐにバレてしまいますから!無理です」
「はい、ですよね。はぁー!」
そう言って、匠海は溜息をつく。
コンコン!
「お時間となりました」
会場スタッフが呼びに来た。
いよいよだ!
どうしよう、ドキドキしてきた!
「丸山さん、あなたは女優なのよ!」
いきなり、倉田チーフが言った。
えっ?私が?女優だって?えっ!
「いい?あなたは女優、大女優なの。
この舞台は、成功するわ。
しっかり、おやりなさい」
ボーーー!
船の汽笛の音が聞こえてきた!
豪華客船キャプテンソフィア号が優雅に出航する合図だ。
よし!私は女優、花嫁を演じる女優なのよ。この舞台を成功させてみせます。
丸山 柚花 28歳、独身。
運命の扉が、開かれようとしている!
私は、新郎と呼ばれる人と腕を組んで、会場の大きな扉へと向かって行くのだった。
メイクの吉田さん、なるべく春菜さんに似せて下さい。
お母様は、アドバイスをお願いします。
ヘアの松本さん、顔を隠す飾りをつけて下さい。
時間が無いです。20分間 同時進行でお願いします」
「はい!」
ヘアメイク担当の2人は、つべこべ言う暇がないので、とにかく返事だけして、柚花と新婦母と支度部屋に入って行った。
「新婦の春菜さんは、ウエストがとても細かったです。
衣装さん、ウエストが目立たなくて、露出が少ないデザインのドレスを探して下さい。
野村さん、軽米さんも手伝って下さい」
「はいっ」
「外崎さんは、男性ですから手伝いは無しです!
原口さんの所へ行って、披露宴の内容を再検討して、私に報告すること。
すぐ、行って!」
「はいっ!」外崎は、走って行った。
身代わり花嫁となった担当者の代わりに、倉田チーフが次々に指示を出し、新郎の両親と新婦の父親には、それぞれの控室に戻ってもらったのだった。
「僕は何をしたらいいですか?」
手持ち無沙汰の新郎が倉田チーフに聞いた。
「はい、新婦 春菜さんについて、教えて下さい。質問にお答えして頂きます。
身代わり花嫁の丸山に伝えますが、よろしいですね?」
倉田チーフは質問をしては、猛スピードでメモしてゆくのだった。
コン!コン!
「はい、どうぞ!」
新郎が返事をすると、新郎の友人2人が入ってきたのだった。
2人とも長身で、スタイルも良く、端正な顔立ちだ。
新郎も、この2人と並ばなかったら、なかなかのイケメンなのだろうが、残念な事に霞んでしまう。
「よお、匠海おめでとう。冷やかしに来ちゃったよん」
お調子者の和希が言った。
「和希、智也!
今日は人生最悪の日だ!助けてくれよー!
花嫁に逃げられたんだ!」
「は?何言ってんの?お前」
何も知らない智也は、冷たく言ってしまった。
新郎の友人が来た事に、此れ幸いと思った倉田チーフが言う。
「はい、それは事実です。理由は、わかりません。
それでも、身代わり花嫁を用意しておりますので、披露宴を行います。
他の方々に知られないように、ご友人様も是非、ご協力をお願い致します。
この事は、ご内密にお願いします。
よろしいですね?」
「は、はい!」
2人の友人が揃って返事をし、ブライズルームを後にした。
婚礼チームは、一丸となって頑張り、ようやく花嫁を作り上げたのだ。
一心不乱に仕事をしたスタッフ達は、今日の仕事はやり切った!という感じに、やつれていた。
「まあ、丸山さん!別人になったわ!
倉田チーフが驚いて言った。
「顔を隠す飾りは、余計に顔を見ようとされます。
なので、敢えて、顔を出して、まとめ髪にしました。
先程の新婦とは違う分け目にして、丸山さんのウェーブの髪をゆるく編み込み、ウェーブウィッグを付けポニーテールにしました。
豪華な花飾りを付けたので、目線は花にいくはずです。
倉田チーフ、いかがでしょうか?」
ヘア担当の松本が言った。
「そうですね、この方がいいかも。上出来です!」
倉田チーフが言った。
「メイクでは、目尻を上げて、春菜さんと同じ付けまつげにして、似せてみましたが、いかがでしょうか?」
メイク担当の吉田が言った。
「春菜に似ています。これなら、大丈夫です。丸山さん、よろしくお願いします」
新婦母からの太鼓判をもらい、一同はひとまず安心した。
「メイクして春菜さんに似た仕上がりになって、ホッとしました。
白いドレスも胸下から、緩やかに広がってゆくエンパイアラインの型で、素敵です。
皆さん、ありがとうございました。
お色直しの方のドレスやヘアメイクの準備もお願いします」
倉田チーフは、そう言うと柚花に向き直って言う。
「これ、新婦の情報を書いておいたから、目を通しておいて。
あなたは、頭がいいから暗記が得意なはず。
大丈夫、覚えられるから頑張って!」
頭がいいとか、倉田チーフ、適当な事を言っちゃって……。凄い達筆な字だな、解読難しいです。
私は、この婚礼の担当だから、春菜さんについては、ある程度は把握しているけど……。
船長式の時、新婦友人が来て会話をしていたし、私が偽物だと すぐバレるでしょう。
こんな事して、大丈夫かしら……。
「あ……丸山さん、とても綺麗です。
ご迷惑を掛けて申し訳ありません。
どうかよろしくお願いします」
新郎 匠海が言った。
「はい、こちらこそよろしくお願いします。
バレないように精一杯、務めさせて頂きます」
他のスタッフ達からも、綺麗だと煽てられて、ちょっぴり気分が良い柚花なのだった。
「そうだ、さっき新婦友人達と一緒に写真を撮りました。
今は、あまり見ない、懐かしいポラロイドカメラで撮ってもらって、頂いた写真があります。
この写真です」
新郎 たっ君が……いや、匠海さんがポケットから取り出して、私に見せた。
「何か書くものとメモ紙ありますか?」
匠海が柚花から筆記用具を受け取り、写真の人物のシルエットだけをざっくりと描いて、4人の友人の名前を書いた。
「この4人が春菜の大学時代の友人です。
丸山さんがご存知の通り、披露宴の招待客数は、僕の方側が圧倒的に多くさせてもらっています。
だから、春菜を知っている人は、親族以外では、この友人と会社関係の人くらいです。
春菜の友人達は、二次会に呼んでいます……
あっ!」
匠海が大事な事を思い出したのだ!
すぐさま、柚花に視線を向けた。
「えっ、私は二次会に、身代わりの花嫁で出席は、できません。
すぐにバレてしまいますから!無理です」
「はい、ですよね。はぁー!」
そう言って、匠海は溜息をつく。
コンコン!
「お時間となりました」
会場スタッフが呼びに来た。
いよいよだ!
どうしよう、ドキドキしてきた!
「丸山さん、あなたは女優なのよ!」
いきなり、倉田チーフが言った。
えっ?私が?女優だって?えっ!
「いい?あなたは女優、大女優なの。
この舞台は、成功するわ。
しっかり、おやりなさい」
ボーーー!
船の汽笛の音が聞こえてきた!
豪華客船キャプテンソフィア号が優雅に出航する合図だ。
よし!私は女優、花嫁を演じる女優なのよ。この舞台を成功させてみせます。
丸山 柚花 28歳、独身。
運命の扉が、開かれようとしている!
私は、新郎と呼ばれる人と腕を組んで、会場の大きな扉へと向かって行くのだった。
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